誘拐
引き続きクロード視点です
下の食堂へ行くとそこは混乱状態だった。
割れた食器、倒れたテーブル。そして負傷した人。
でもそこに里香の姿はない。急いで里香の感情を感じ取ろうとするが何も伝わってこない。
(くそっ!意識がないのか!)
気絶させられた可能性が高いな。これじゃ無事かもわからない。
俺はもう1人の探し人を見つけると襟首を掴んで引き寄せる。
「何が起きた?」
「ぐっ‥。里香さんと‥一緒に食堂にいたんですが‥‥急に客に紛れた奴らに襲われて‥」
「ちょっと!怪我人に何してんのよ!」
後からきたユーリが俺からアレンを引き離す。アレンは確かに血塗れだけど死ぬほどの怪我じゃないし今はそれどころじゃない。
奥に隠れていたであろうソフィが出てきたので声をかける。
「ソフィ!どう言う事?」
「私だってわからないわよ、一瞬の出来事だったんだから!襲いかかっていたのは身内よ!今そこでノビてるわ。」
指差した先には確かに見た事ある顔の奴らが数人ノビていた。
里香にはわざわざ言ってないがここは鴉の拠点の一つだ。客と鴉を結ぶ為の窓口になっている。だから新規客には警戒がつくし他の所よりも安全なはずだったのに。
「攫った奴は?」
「見た事ない客よ。この時間にいた一般の客は彼1人だったわ。だから周りを固めて警戒していたのにこのザマよ。」
色んな考えが頭を駆け巡る。焦りそうな心を自制するのがこんなに苦しいとは。
「…ユーリ」
「なに?」
「一緒に里香を探してくれ。さっきはあぁ言ったけど、状況が分からないほど馬鹿じゃないだろ?」
「‥あの女は気に食わないけどこんなお膝元で誘拐だなんてね。ここまでコケにされて黙ってるわけにはいかないわよ。」
「アレン。こっちの不始末もあるけど俺怒ってるからね。」
「えぇ、面目ありません。…私にはこれが精一杯でした。」
そう言って渡されたのは何の変哲もないコンパス。しかし指している方角がおかしい。
「物をよく無くすので作った物なんですが、役に立ちそうですか。」
「…撤回するよ。いい仕事だ。」
俺の言葉にアレンは眉尻を下げて困った様に微笑む。やる事はやってくれた、あとは俺の仕事だな。
「ユーリ、一緒来てくれ。」
「勿論。」
「ソフィ?」
「分かってる。あとは任せて。」
俺はユーリを連れて外に飛び出した。
しかし、不意打ちとはいえアレンがあそこまで怪我を負うとは思わなかった。あんななりでも複数人魔族を相手にできるくらいには強いはずなのに。
攫ったのなら危害を加える気はないと思いたいがそれでも猶予は無い。MAXスピードで空をかけていく。
そのスピードについてこられるのはやはり流石と思わざるおえない。
「相手に心当たりあるの?」
「人間ならね。魔族ならわからない。」
襲いかかった鴉の奴らが裏切ったのか、洗脳なのか。それによって話が変わってくる。その辺りはソフィに任せればいいだろう。人間の割にその辺りしっかりしてるからな。
「でも方角的にあってそうだ。」
「こっちの方角は…ロールロイゾン?」
「あぁ。でもあの国にそこまでの力なんてない筈なのに。」
まずあの国に協力する魔族なんて居るはずがない。それなのにこの誘拐騒動。人間だけでこなせるとも思えない。
「聖女か…?」
聖女の力を使ったのか?だがそこまでする必要も無いはずだ。
(情報が足りない。)
とりあえず急ぐしかないか。その時殺気を感じ咄嗟に横に飛ぶ。元居たところを風の刃が通り抜けていった。
「お久しぶりですね。お元気そうでよかったです。」
「!!」
目の前にいる男を見て思わず目を見開く。まさかここで会うとは思ってもみなかった。状況は思ったよりも最悪だったみたいだ。




