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欲しい言葉

前話「一緒に」でのクロード目線になります

転移が終わってスピカの部屋に戻ってくる。

腕の中を見ると行き同様里香は気を失っていた。


俺はそっと里香をベッドに寝かせるとその寝顔を眺める。


正直、もう手は取ってくれないんじゃないかと思ってた。だから帰ろうって言ってくれた時心底安心した。


里香の言葉を信じて過去を見せることにしたけど普通の人間ならあんなもの見せられて怖いと思わないはずがない。

特に里香は平和な世界から来たから余計怖く思うだろう。それをわかっていてもあのブローチをガレオに託したのは受け入れて欲しいと思ってしまったからだ。


(受け入れてもらえなかったとしても手放せたとは思えないけど。)


どんどん依存していくのが分かる。人の中で生きてきたけど一人の人をそばに置いたことなんか無かったからこんなに心地よいものだと思わなかった。

俺を利用する事もその気もない彼女だからそう思うのだろうか。


ベッドに寝かせた里香が身じろぎする。そろそろ起きそうなので水を準備して待つ。


「気持ち悪い‥」


「はい、お水。飲める?」


ありがとうと言って一口水を飲んだがまだしんどい様でベッドに横になる。

このまま何も言わなければ里香もないも言わずに今まで通り過ごせるのだろうか。

そんな考えがふとよぎる。


(随分甘い考えになったものだなぁ)


受け入れて欲しいくせに怖気付くのか。相反する感情というのはめんどくさい物だ。


「里香、そのまま聞いて。」


こちらを見つめる里香の瞼をそっと手で下ろす。

見つめられたら上手く話せる気がしないから。


俺は膝をついてベッドに肘をつけ祈る様な体制を取る。顔は見れないから俯いて。


「…黙っていて、悪かった。ごめん。」


謝罪の言葉を口にするとその事実がどんとのしかかって来る。お願い、嫌わないで。とただ祈る。神にではなく彼女に。嫌われてしまったら自分でも何をするかわからないから。


「見たでしょ、俺の過去。俺はこの世界の住人じゃなく里香と同じ様に連れてこられた‥そしてたくさんの人を殺してきた。」


「‥…でもそれは‥」


「変わらないよ、元の世界でもいっぱい殺してきたんだから。あれは俺の本質だよ。感情を封じられたからってあんな風に里香だったら人を殺せる?」


「俺は別にそういう世界で生きてきたしそれが普通で今だって別に殺す事に抵抗は無いよ。でも、それを里香に知られるのは怖いって思ったんだ。君が離れていくんじゃないかって……」



一気に想いを言葉にする。人を殺すより君に嫌われる方が怖いなんて本当にどうかしている。

そこまで言っても彼女は捨てるのは私じゃないと言う。俺が君を捨てるはずないのに。俺が欲しいのはそんな言葉じゃない。


そして次に出てきた言葉に驚いた。


(冒険者組合…ガレオの入れ知恵か。安全を考慮すればガレオのところにいる事が1番なのに。)


「…それは、危険なことって言うのは分かってるんだよね?俺が断ったらどうするつもり?」


「そうしたらまた他の方法を考えるしかないかなぁ。お城にいたらクロードは側に居られないって言われちゃったし。……うん、だからクロードに決めて欲しいの。一緒に来てくれる?」



彼女の感情からは誠実さを感じた。俺の意思に反する事はしたくないと思ってくれている様だ。

もし俺が断って離れたなら君はガレオの元に行くのかな?

そうした方が君は安全だよね。


「……いいよ。」


そんな風に考えていたのに気がつけば了承していた。

守り方なんて知らない、壊すことしかできない俺といてもしょうがないのに。わかっていても彼女が俺のいない所に行くことを快諾なんて出来ない。



ふと聞こえてきた里香の声に顔を上げる。


「…泣いてるの?」


(泣いてる?俺が?)


心配そうな里香の顔が瞳に映る。そしてそっと伸ばした里香の指が俺の目尻を擦った。


(あ…)


俺は離れていく手を掴み両手で握る。




「一緒に居ていいの?」


言葉が欲しい、と思った。


「一緒に居たい?」


言葉で欲しい、汲み取る感情からではなく、君の言葉で。

そうすれば何かが変わる、そんな予感がする。



俺の質問に里香は少し悩んで、言葉を選ぶ様にゆっくりと口を開いた。


「勿論。一緒にいたいって思ってるよ。」




その言葉に何か温かいものが一筋頬を伝って行ったのが分かった。

彼女の感情には困惑と心配が見えるがそこに恐怖も悪意も感じない。彼女の言葉に嘘はない。


すとんと何かが胸の中に収まる感覚がした。


(あぁ…好きだな。)


彼女を好きだなとは思っていた。でもそんな軽いものじゃ無かった。

そう、好きなんていう生半可なものじゃない。もっと深く絡みつく様な感情。

底の見えない沼に全身沈んで身動きが取れないような、息苦しくて堪らない、それなのに心地よい。そんな気持ち。


(愛してる)


その言葉に自然と広角が上がる。何故か里香はびくりと体を震わせた。



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