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一緒に


「気持ち悪い‥」


気がつけば宿のベッドへと寝かされていた。また気を失ったのか。


「はい、お水。飲める?」


「うぅ‥ありがと。」


どうにか上体を起こすとクロードからお水を受け取って一口飲む。少しスッキリするが動ける気はしないので再び布団に横になった。


「もうヤダ、2度と使わない‥」


「ここまで合わないとはね。少し横になってるといい。」


1日で2回も酔ったので流石にしんどい。眠いわけではないがとりあえず目を閉じて力を抜く。


「里香。そのまま聞いて。」


その言葉に反射的に目を開けたがクロードはいいからといってそっと手で私の瞼を再び落とす。


「‥黙ってて悪かった。ごめん。」


顔が見えないからどんな表情をしているかはわからないがその声は真剣で私は黙って続きを聞く。


「見たでしょ、俺の過去。俺はこの世界の住人じゃなくて里香と同じ様に連れてこられた‥そしてたくさんの人を殺してきた。」


「‥…でもそれは‥」


それは操られていたからでしょと続く言葉をクロードは遮って話を続ける。


「変わらないよ、元の世界でもいっぱい殺してきたんだから。あれは俺の本質だよ。感情を封じられたからってあんな風に里香だったら人を殺せる?」


その言葉に思わず口をつぐむ。魔族を殺しているときのクロードは確かに怖かった。一切の躊躇もなく血を浴びながら殺し続けていた。私なら血を浴びただけで正気に戻っていてもおかしくない。そのくらい非現実的で恐ろしい光景だった。

クロードにとってあれは普通だった?だからすんなりと殺しに準ずることが出来たのだろうか?


「俺は別にそういう世界で生きてきたしそれが普通で、今だって別に躊躇せず殺せるよ。でも、それを里香に知られるのは怖いって思ったんだ。君が離れていくんじゃないかって……」


きっと顔を見て欲しくないんだろう。だから私は目は閉じたまま顔だけクロードの方に少し向けた。

なんでそこまで怯えるのか。どんどんクロードが私に依存し始めているのは何となく感じていたがまるで捨てられるのを恐れる子供の様だ。

でもそれを否定して突き放せるほど私だって情がない訳ではない。


「離れないよ。言ったでしょ、離れる時はクロードが私を捨てた時って。だから聞きたいことがあるの。」


「…なに?」


この提案は正直クロード次第でどうなるか変わる。ここまで言ってるので断られることはない気もするがそれでも面倒ごとなのでクロードが嫌だと言ったらその時は他の方法を考えよう。


「私、冒険者組合に行こうと思ってるの。お城で守ってくれるって言われたけどそれじゃ何も変わらないし。」


ガレオの提案というのがこれだった。冒険者組合は国とは無関係のどこにも所属しない独立組織で各国に拠点を持ち、お店のお手伝いから護衛、魔物狩りまで料金に応じてなんでもやってくれる大規模な便利屋みたいな物らしい。そして土地がある訳でもないのにひとつの国並みに権力を持っているそうだ。

なのでたとえどこかの国から私を寄越せと言われても簡単に応じることはないし、事情含め話も通してくれるらしい。

ただ、問題はあくまで冒険者として登録するだけなので身の危険を守ってくれる訳ではないという事だ。


「そこで戦う力をつけて聖女達の問題とかとちゃんと向き合いたいって思ってる。帰るか帰らないかも方法がわからないから決めようがないし、まずは動ける基盤が欲しいの。」


一気に喋ったからちょっと疲れた。ふぅと一息つくとクロードの返事を待つ。少しの沈黙の後、クロードはゆっくりと口を開いた。


「…それは、危険なことって言うのは分かってるんだよね?俺が断ったらどうするつもり?」


「そうしたらまた他の方法を考えるしかないかなぁ。お城にいたらクロードは側に居られないって言われちゃったし。……うん、だからクロードに決めて欲しいの。一緒に来てくれる?」


それは守って欲しいと言うのと同意義で流石に厚かましいと自分でも思う。それでもやっぱり閉じこもっているのは性に合わないし、何より私から離れるという選択肢はない。


「…いいよ。」


クロードはそういうと黙りこくってしまい沈黙が流れる。


(えっと、いいよって言ってくれたよね?なんでそれ以上何も言ってくれないの?)


やっぱり嫌なのだろうか。そうだね、流石にそこまで付き合ってくれっていうのも厚かましいよね。助けてもらってから迷惑しかかけてないのにこれからも迷惑かけます!って最低だよね、やっぱり。


「あの、クロード…」


私は沈黙に耐えられず、目を開けてクロードを伺い見る。

クロードは床に膝をつき、肘をベットについて組んだ両手に頭をつけ軽く俯いていた。

私の声に反応してクロードが顔を上げる。


「…泣いてるの?」


いや、涙は出ていない。出てはいないが泣いてる様に見えるのは何故だろう。

思わず左手を伸ばしてクロードの目元に触れる。

クロードはされるがままで動かない。ただじっと私を見ていた。

目尻を拭ってはみるがやはり涙に触れる事はなくて私は手を離す。その手をクロードに掴まれた。


「俺は一緒にいていいの?」


「え?」


クロードは掴んだ私の手を両手で包み込むと再び祈る様な姿勢を取る。


「俺と一緒に居たい?」


あまりに真剣な声で言われたので茶化すことも真意を問うこともできない。


「勿論。一緒にいたいって思ってるよ。」


正しい答えはわからないが別に一緒に居たくない訳ではない。そう思ったからそのまま言葉にした。



クロードが私に向けている感情はどういったものなのか正直わからない。

私がクロードに抱いている感情もまた、自分でよくわからない。


だから特に深い意味もなく今の気持ちを素直に言っただけだったのだけど、私の答えは間違っていたのかもしれない。


溢れた涙も無視してにっこりと笑ったクロードを見た時、そう思った。




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