診察
「失礼致します。里香様をお連れしました。」
「どうぞ。」
メイドさんが扉をノックし声をかけると中から女性の声がした。了承の旨を聞いて扉を開けてくれたので中に入ると中にはなんとも色っぽいお姉さんが出迎えてくれた。
長くうねったコーラル色の髪を肩に流し白衣を着ているその人は格好的に医者なんだろうが全くもって医者っぽくはない。
「あら、可愛いお客さんね。初めまして、リリーよ。」
「初めまして、里香と申します。こちらで見てもらうように言われまして。よろしくお願いします。」
小さく頭を下げるとふふ可愛いと微笑まれてしまって思わず赤面してしまう。
「里香!!」
「ぐぇっ!」
奥の方に居たのか、急に飛び出してきたクロードが飛びついてきた。
勢いよく首に腕を回して抱きついてくるので思わず変な声が出る。
「里香!駄目だよ、こんな年増ババアに騙されちゃ!」
「ちょっと痛いじゃない‥…って!服!服なんで着てないのよ!!」
クロードは上半身裸の状態で抱きついていた。下は履いているようだがそれでもこの状況はよろしくない。
さっき以上に顔に熱が集中するのがわかる。
「誤解しないでね!診察のために脱いだだけだしこんな年増こっちから願い下げだから!」
「随分とまぁさっきと態度が違うわね。やっぱり実験用に羽毟らせてもらおうかしら」
「とりあえず服を着てー!!」
私の叫びにクロードはしぶしぶ離れて服を着る。
その間。顔の熱がなかなかひかない私を可愛い可愛いとリリーさんが撫で回すものだから全然熱が引いてくれない。
「ちょっと、里香から離れてよ。」
「里香ちゃんは私に会いにきてくれたんだから構わないでしょ。ほら、あんたの診察は終わったんだから外で待ってなさい。」
「やだよ、一緒にいる。」
「全く、女の子なんだから貴方がいたら服脱げないじゃない。」
「別に今更だろ。何回も一緒に寝てるし。」
「誤解を生む発言をするな!」
私は水球を作るとクロードに向けて飛ばしてそのまま扉の向こうへ押し出した。そして手早く扉を閉める。
外からベソをかく声が聞こえるが無視だ、無視。
「うふふ。面白い子がきたわねぇ。さ、こっちにいらっしゃい。」
「お騒がせしてすいません…」
リリーさんに促されてベットへと腰掛ける。
「あら、面白いものが見れて良かったわ。あんなにはしゃいでるクロードは初めて見たもの。」
(は、はしゃいでる…?)
心の声が顔に出たのかリリーさんはふふっと楽しそうに笑っている。
「さっきまでのクロードを見せてあげたいくらいだわ。笑顔のえの字も無いくらい無愛想だったわよ。」
「え‥」
「いつもはそこまで酷くはないんだけど何か考え事でもしてたのかしら?あなたが来てよっぽど嬉しかったのね。」
子供っぽいところがあって安心したわ。とリリーさんは言うと丸い円盤を取り出す。
「これ、アレンさんのお店にあったやつだ。」
「ええ、これはアレンが作ったものだからね。寝転んでくれるかしら。」
言われた通りベッドに横になると上から薄い布をかけられその上に円盤を持ってくると私の上で宙に浮き止まった。
「少し服を緩めてリラックスしていて。全部脱がなくてもいいから。」
言われた通りボタン等を外し、身体の力を抜く。
ウルリは円盤が珍しいのかパタパタと円盤の上を飛んで観察している。
宙に浮かぶ円盤にリリーさんが手をかざすと円盤は私の上をクルクル回りながら頭、首、肩、腕と、順々に全身を巡って勝手に動き始めた。
「うんうん、大丈夫そうね。このまま少し待っててね。その間この小さなお友達もみさせてもらうわね。」
リリーさんはウルリを優しく掌に乗せると何やら問診を始めた。私は暇なのでぼーっと天井を見つめていた。
(ちょっと眠くなってきたかも………)
うとうとしていると急にぴこんぴこんと可愛らしい音が響いてびっくりして目が覚める。
見てみると円盤が私の胸のあたりで止まって音を立てていた。すぐにリリーさんが気がついて円盤を退けるとごめんなさいねと前置きをおきて私の胸元を確認する。聴診器のようなもので音を聞いたり押してみたりもしたが特に痛くもなくリリーさんは首を傾げる。
「特に問題はないんだけど…」
「この音は何なんですか?」
「簡単にいえば異常がないか見てくれる魔法具でアレンが作ってくれたのよ。これがあれば見えないところの異常も発見できるから凄いものなんだけど、まだ試作品なのよね。」
誤作動かしら?
リリーさんは円盤をクルクル回して観察するが見た目では特に異常はないらしい。
「とりあえずアレンに検査してもらうわ、ごめんなさいね。」
リリーさんは直接診察しましょうといってその後脈を取ったりまさかの身長、体重まで測られといろんな検査をしたので少し疲れてしまった。
「お疲れ様。これでおしまいよ。特に異常はないけど定期的に診察に来てね。クロードも連れてきてくれると助かるわ。」
「え、毎回見てくれるんですか?」
一回ポッキリだと思っていたのでビックリする。
「貴女もクロードも元々この世界の住人じゃないでしょ?だから見えないだけでどんな負担があるかわからないじゃない。クロードは全然来てくれないから困ってたんだけど里香ちゃんがいれば大丈夫そうね。」
「わかりました、ありがとうございます。」
リリーさんに別れを告げて部屋から出るとクロードは壁にもたれかかって待っていた。
「里香、終わった?」
「うん、お待たせ。」
「帰る用の石貰ってあるからすぐ帰れるけど…」
アレンさんは用事があるので残るらしい。
そう言ってクロードが手を差し出すのですぐに手を取った。
少し疲れてしまったので早く帰りたい。
「うん、帰ろう。その石嫌いだけど。」
帰りもあれかと思うとげっそりする。
「…うん、帰ろう。出ていくところを見られるわけにはいかないから我慢して。」
クロードはそういうと繋いだ手を引っ張って引き寄せ私を横抱きに抱き上げた。
また倒れたら困るのでしょうがない。大人しく抱っこされることにする。
「いっそ先に気絶させてくれない?」
「なかなか物騒なこと言うね。大丈夫、少しは慣れたかもしれないよ。」
深呼吸してなというとクロードは器用に片手で石を割る。転移する直前、赤色の髪をした男の人がこちらを見ていることに気がついた。
一瞬目があったがそのまますぐに転移が始まってしまい、結局また気を失った。




