対面2
「こいつは‥」
「?」
「普通聖女や勇者といった特殊な方は称号に表示されるものなのです。しかし里香さんの称号はミレイの客人ですから。」
「え?クロード、どう言う事??」
私の言葉にクロードはわざとらしく目線を逸らしている。私はクロードのもみあげを鷲掴みにして引っ張った。
「痛い!痛いよ、里香!」
「説明して。最初に見たわよね、ステータス。なんで何も言わなかったの。」
今思えばたしかに反応はおかしかった。老け顔って言われてうやむやにされていたが本当はこっちに驚いていたのか。
私がもみあげから手を離すとクロードは痛いなぁとボヤきながら説明する。
「だって里香にとってはどっちでも一緒だからいいかなって。」
「よくはないでしょ。聖女じゃないなら逃げる必要ないじゃない。」
私の言葉にガレオは首を振って否定する。
「いや、こいつは聖女より厄介だぞ。」
「え?どうして?」
「ミレイってのはこの世界の創生の女神の名前だ。聖女ならまだひとつの国に所属しててもどうにかなるが神の関係者だとすると神殿がうるせぇ。」
「神様?!」
神様に知り合いとかいないんだけどなんだってそんな変な称号がついているのか訳がわからない。
「聞いちゃいたが本当だとはな。おい、クロード。だから黙ってたんだな?」
「…そうだよ。言ったらすぐ里香連れてこうとするでしょ?でもロールロイゾンもちょっかいかけ始めてきたしこのままじゃ守りきれない。」
クロードはガレオからも私からも顔を晒してソファの手すりに頬杖をつきながらも話を続ける。
「手段問わないならどうとでもなるけど里香の意志に反することはしたくないし。」
「……おまえ。」
ガレオはガバッと立ち上がるとクロードの横に来て肩をバンバン叩き始めた。
「いったぁーー!!やめろよ、馬鹿力なんだから!」
「成長したなぁ!俺は嬉しい!」
ガレオは本当に嬉しそうでクロードの肩に腕を回して今度は頭を撫でまわし始めた。クロードは本気で嫌そうだけど。
「えっと……」
「気にしないでください。ただのスキンシップですから。クロードはただでさえ人と距離を置くタイプなんでガレオ様くらいの距離感の人の方がいいんです。」
「そうですか?いつもくっついてきますけど。」
離してもくっついてくるし距離感近すぎて困ってるくらいだというとアレンさんは苦笑いでそれはあなたに対してだけですと言われた。
普通に社交的ではあると思ってたんだけど私がいない時は違うのだろうか?
「よしっ。とりあえずクロード。お前久々に来たんだからリリーのとこ顔出してこい。」
「え。やだ。」
「つべこべ言わずにいけ。里香、わりぃがウルリっていう妖精とも話してみたいから残ってくれるか?」
「うん、別にいいけど。」
「アレン、さっさと連れてけ。」
「はいはい、行きますよ。素直についてこないならここに呼びますからね、リリー。」
「わかったよ。里香いい子に待ってるんだよー」
「はいはい、いってらっしゃい。」
「ガレオ。」
クロードはガレオに何か小さな物を投げ渡した。
「これは…」
「必要なら使って。俺は構わないから。」
「そうか…わかった。」
クロードは私に笑顔でバイバイと手を振ると大人しく出て行った。
私は早速ウルリをポケットから出してテーブルに置く。
なんだかんだ本人がポケットを気に入ったのでよく入りたがるのだ。
「これがウルリか。よろしくな、俺はガレオって言うんだ。」
「ガレオ?よろしく!ウルリだよ!」
ウルリは小さくお辞儀をするとテーブルの上に座った。
「こいつの事も聞いてはいたがすげぇなぁ。アレンが生き生きと話してくれたぜ。」
「この子が生まれたことってそんなに凄いことなんですか?」
クロードもアレンさんも隠せというくらいだから凄いことなのだろうがイマイチ実感はない。
「そうだな。魔法ってのはな、便利だが出来ないこともある。命に関わることもそうだ。」
「命…」
「あぁ。魔法で寿命を伸ばすことや人を生き返らせることは出来ない。勿論新しい命を生み出すなんてのもな。」
「それじゃ、どうして出来ない筈なのに出来たの?」
「そこが重要だ。いいか、正直言うが理由は分からん。ただ、関係するとすればそれはあんたの称号だろうな。それだけ神の名ってのは影響力がデカイんだよ。もしかしたら他の事だって出来るかもしれない。いとも簡単に妖精を生み出したんだ、人を生き返らせる事だって出来るかもな。」
「それは…」
「な?そんな奴いたら誰だって喉から手が出るほど欲しいだろうよ。それをあいつらは危惧したんだ。いつも俺を頼らないクロードが比較的素直にここに来たのもあんたの為だろ。」
クロードはそこまで考えていたのか。状況の危険さをやっと実感してきた。
「里香が望むならここで保護しよう。勿論最重要人物扱いにはなっちまうしクロードをそばに置くのは難しいかもしれんが。」
「!な、なんで?」
クロードとずっと一緒だったので離れてしまうと言う言葉に動揺してしまう。
「……クロードの過去は聞いてるか?」
「昔ロールロイゾンを火の海にしたみたいな事は言ってました。」
「そうだな、その通りだ。だからマズイんだ。アイツなら上手くやるんだろうがそれでもリスクが高い。」
「クロードがここにいる事がバレると国際問題に発展する…とか?」
「あぁ、里香は賢いな。でもそれだけじゃねぇ。正直ロールロイゾンなんて潰そうと思えばいつでも出来るからな。」
そういうとガレオは小さな紫色の石のはまったブローチをテーブルの上に置いた。
「これはさっきクロードが投げたやつ?」
「そうだ。これは記憶を記録する石だ。」
「記憶?」
「忘れない為に戒めで持ってたんだろ。」
見るか?
ガレオは私に問いかける。これを見てもいいんだろうか。
クロードの過去を本人がいないのに。
「アイツはお前さんに見せるつもりで置いていったんだ、そこのところを気にする必要はねぇ。知りたいか、知りたくないかの2択だ。」
クロードが…?
それなら私は……
私はブローチを手に取り聞いた。
「どうすればいいの?」
私の決断にガレオは一言ブローチを握りしめろといった。
私はその通りにブローチを両手でそっと握りしめる。
急速に意識が遠のいて行く。そんななかガレオの声が響く。
「お前さんなら大丈夫だと信じてる。」
そしてぷつりと意識が途絶えた。




