これも俺だというならば
クロードsideです
眠る里香を降ろす気になれず、そのまま抱えたまま思う。
最初は里香まで感情を操られているとは思わなかった。
もし操られてるなら逃げたいなんてまず思うはずがないと。
でも、あまりにも前向きに進んでいこうとするからどんどん疑いを持つようになった。迷いがない感じがこの世界に来た最初の頃の俺に少しだけだが似ていると思ったんだ。
結果はやっぱりそうで、迷って悩むのが本当の彼女だった。
でも、嫌いになるわけでもなくて不思議と気持ちは穏やかで迷いを持つ事を肯定された気さえするんだから重症かもしれない。
ずっと、解放された後でも。どこかで疑っていた。まだ自分の気持ちを操られているんじゃないかって。
(俺はいつだって自由で、退屈を嫌う。)
それが本来の俺の筈だと思い込もうとしていた。だって昔の俺はそうだったから。
力が無い者にはなんの権利も与えられない、強者の為の世界。暴力のない日なんてない、次の日顔見知りが死んでいることだって珍しくもなんともない。そんな世界から俺はきた。
その世界で俺は肩がぶつかっただけでも相手を殺したし、暇潰しで城を一つ落とした事もある。
それが許されるくらい俺は強かった。
"強いから自由にしていい"
本気でそう思ってたし、実際そうしていた。
でもこの世界に召喚されて、操られて。なんだかんだあって感情を取り戻した後でも、もう昔のように遊ぶ気にはなれなかった。
だから、まだ本当に解放されたわけではないのかと思った。
(本当の俺はこんな、こんな奴じゃない)
昔の自分はこうだった、そんな自分を自分に押し付けた。
そうじゃないと自分がわからなくなりそうだったから。
でも、里香の話を聞いてわかった。これも俺なんだと。
操られてなんてもういなかったんだ。ただ、この世界の経験は俺の中にちゃんとあってそれが俺を変えただけ。それを受け入れていなかっただけだ。
(だから、これも俺の感情なのか…)
ずっと、少しずつ積もっていくこの感情を否定しようとしていた。
何かに囚われ、固執するなんてこんなの俺じゃないと。
里香の事は最初はただ、珍しいおもちゃを手に入れたと思った。
でも多分同情してたのもあるんだろう。
だから、つい、優しくしてしまった。
あんなに頼りにされたのは初めてで俺が放り出したら死ぬんだろうなって、そう思ったらついつい過保護になっていって。
でも、そんなの俺らしくないから悪戯を仕掛けたりもして。
全部、俺の気持ちだったのか。なんだ。
「こんな簡単な事に気づかなかったなんてな。」
なら、もういいか。
そっと里香をベットに降ろす。
その寝顔を見つめて思う。
この感情も俺のものというなら受け入れよう。
ドロドロに甘やかして、可愛がって、ずっと閉じ込めておきたいなんてそんな事思う日が来るとは思わなかったけど。
今はそばにいるのが楽しいと思うのだからそれでいい。
それも彼女が教えてくれた事だ。
「おやすみ、里香。良い夢を」
そっと額に口づけを落とす。
「君の眠りを妨げるものはちゃんと排除しなきゃね」
掛け布団を掛けてあげるとそっと窓枠に手をかける。
「ウルリ、起きてる?里香をお願い」
「里香…元気になった?」
小さな妖精は机の上の木箱から顔を出す。そういえばそこに寝床を作ったとか言ってたな。
「あぁ、もう大丈夫だからそばにいてあげな。俺はちょっと野暮用があるからさ。守るくらいはできるよね?」
「もちろん!行ってらっしゃい。」
ウルリはパタパタと飛んで里香の枕元に座る。
それを見届けて俺は窓から静かに飛び出した。




