気持ち
泣きじゃくる私を抱き抱えるとクロードはベットの淵にそのまま座る。丁度クロードの心臓に耳が当たる形でドクン、ドクンという音が少しずつ私を落ち着かせていった。
「……私ね、とても仕事が大変で疲れ切ってたの。」
「うん。」
「だから、こっちの世界に来た時ホッとしたの。もう仕事しなくていい、ゆっくりできるって…そう思った私も確かに私だったの。他に…連れてこられた人を心配したのも、確かに私の気持ちで。それが今ならはっきり分かる。」
「でもね、そこで意識が固定されてた。」
そのあと色々あって考える時間もあったのに何故かそれ以上帰ることや助ける以外の選択肢を探す事が無意識に出来なくなっていた。それが当たり前みたいに思い込んでいたんだ。
「今なら分かるの。元の世界に戻りたい自分もちゃんといるし、この世界が好きって気持ちもある。みんなを助けたい気持ちもあるし、正直自分の事だけ考えてたい気持ちもある。」
身勝手かもしれないけどそれが正直な気持ち。
そういって笑ったけど上手く笑えなかったみたい。クロードはただ黙って頭を撫でてくれる。
「この世界は居心地がいいよ。みんな優しくしてくれて守ってくれる人がいる。」
元の世界でこんなに気を使われて優しくされた事って全然なくて心が温かい。その気持ちもちゃんと私の気持ちだってわかって安心した。
「ここにいたい、他のみんなは大丈夫かなって気持ちが嘘じゃなくてよかった。」
全部塗り固められた嘘の感情だったなら気付いた時もっとショックが大きかったと思う。でも全部私の気持ちである事に違いはなくて、ただ、気持ちの方向性が何故か固定されていただけ。
「ありがとう、気付かせてくれて。ちゃんと考える、これからの事。」
「うん。」
なんでこんな事になったのか、多分クロードは知ってるんだろう。でも今は戻ってきた自分を受け止めるので精一杯でかんがえることなんてできないし、クロードも何も言わない。
でも、これだけは聞こうと思った。
「クロードも同じだった?」
ただの勘。だけどあまりにも自分の事のように受け入れてくれるから、そんなことを思った。
「そうだね。…今度ちゃんと話すよ。だから、今日はおやすみ。」
初めて会った時のように頭を撫でてくれる。
クロードは優しい。いくらふざけて見せても根幹が優しくて、結局隠しきれないんだ。だからこんなに優しい手をしてる。
(でも、やっぱりその目なんだね…)
仄暗く、深さのわからない暗い闇。会った時よりも深い闇が覗くその瞳に何故か安心して、私は眠りについた。




