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私は‥‥私は?


「これからどうするかなぁ」


とりあえずウルリの問題はあるけど魔法は使えるようになった。スキルについては練習とかして覚えるものじゃなく感覚で出来るはずと言われたので無限回路を使ってみたら簡単に開けたので拍子抜けしたくらいだ。

とりあえず使うときはバックの中につなげてそこに入れるようにしようと思う。


「もともとは聖女の噂でも聞こえてくるかなって思ってこの国に来たのに全然何にも聞かないし。」


普通聖女が来たら盛大にお披露目会とかするもんじゃないの?

戦争を起こすために召喚したと言っていたしそういうおめでたい感じではないのかな?でも表に出した方が士気も上がっていいだろうに、よくわかんないわ。


同郷の身としては心配だけどどうする事もできない上に自分の世話さえできてない始末。やはり独り立ち出来るようになるのが最優先かなぁ‥

それなら次にやるべきは‥


「だーめ。」


「なんでーー!」


出掛けていたクロードが帰ってきたので早速仕事をしたいと言うとクロードに反論する間も無く反対された。


「本当に身軽すぎるよ、里香は。君この世界に来てからそんなに経ってないのに適応能力が高すぎる!もうちょっとのんびりしたらいいじゃないか」


「のんびりするって言うのは地盤がしっかりしてて初めて出来る事なのよ!住所不定、無職っていうかヒモ、こんな状態でのんびりなんて出来ないわ!」


落ち着かないのよと説明しても全然納得してくれる様子はなく、むしろ私の言葉に深刻そうな顔をして考え込んでしまった。


「落ち着かない…か。落ち着かなきゃいけないのか?この世界に定住させたい…?」


「……なにを言ってるの?」


何を言ってるか分からない。でも、心がざわざわと音を立てていて、なんだか怖い。

なにか、気付いてはいけないような…


身体の前で思わずぎゅっと両手を握りしめる。普通の話をしていた筈なのに、この違和感は何…?



「…ねえ、里香。君の中に元の世界に戻るって選択肢はないの?」


仕事や住むところが欲しいってことはこの世界に居場所が欲しいってことだろ?未練はないの?


そう言うクロードに今までそんなに重要に考えていなかった自分に気がついた。確かに戻れないとお城で言われた時もむかつきはしたがしょうがないと受け入れた。嘘を言ってる可能性もあるのになんで鵜呑みにした?


思わず言葉に詰まってしまう。


「別に聖女のことを気にする必要だってないはずだ。ただの他人だろ?同じ場所に居合わせただけの。帰りたいなら帰る方法を探した方がいい、違う?」


その通りだ。こだわる必要なんてない。帰ることに執着はないのに同郷の人間は心配だなんて矛盾もいいところだ。なのになんでこんなに気になるの?自分でもさっき思ったじゃないか。自分の世話さえできてないのに他人なんか救えるの?


「ねぇ、それは本当に()()()()?」


「っ!!」


私の…意思?

その言葉の衝撃に思わず一歩後ずさる。


違う、私は‥私は本当は……帰りたい‥?お父さん、お母さんにもう会えなくていいの?友達にだってもう会えない。テレビもスマホもないこんな不便な世界で生きていくの?

確かに仕事は辛かった。でも別に嫌なら辞めればよかった。こんな異世界に来る必要なんてなかった。


でも、この世界の人もいい人達よ。クロードもなんだかんだ助けてくれてソフィも優しくしてくれる。アレンさんは新しいことを教えてくれるし楽しいと思う。

でもそれは全て捨てていけるほどのもの?


私の気持ちなのに、まるで無理矢理押し付けられた感情のようで気持ちが悪い。


思わず涙が溢れてきた。思考がぐちゃぐちゃで帰りたい自分と帰らなくていい自分。みんなを助けたい自分とみんなより自分を優先したい自分。それがないまぜになり頭を掻き乱していく。


「わ、わたし……わたしは……!」


混乱ししゃがみ込む私の前にクロードもしゃがみ込むと背中をさすってくれる。


「ごめん、どうしても確認したかったから酷いこと言った。……また同じことをするなんて、結局神なんて俺たちを都合のいいように使いたいだけの、クソ野郎だ。」


クロードが何を言ってるかわからない。

わからないが私の気持ちをわかってくれているのは伝わってきた。


「辛いよね、でもごめん。乗り越えないとずっと辛いから考えて。帰りたい?」


頭がぐるぐるする。でも必死に考える。帰りたい?この世界で生きていける?全て捨てて残れる?


「っ!!………私は…私はっ!帰りたいよ!」


他の人なんてどうでもいい、帰りたい!それが身勝手な願いでも!


そう強く思った瞬間頭の中で何かが割れる音がした。そしてその瞬間頭の中が急にクリアになっていく。

やっと自分が帰ってきた。そう感じて余計涙が止まらずクロードにしがみつく。


「あのねっ…私ねっ…」


「いいよ、ちゃんと聞くから。」


ぐっと背中に腕がまわって抱きしめられる。…あったかい。

その暖かさに余計涙は止まらなくなって声を上げて泣いた。




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