ある国の王子
とある城の一室。
天蓋のついた豪華なベットに寝転ぶ1人の王子がいた。
金色の髪に青い瞳、美しく整った顔も今は疲れからか影をさしている。
(今日も疲れた。)
ただでさえ仕事は山積みだと言うのに今度は10人もの女の相手をしなくてはいけないとは。
城のどこを歩いていても誰かしらに見つかるし、執務室に篭っていても休憩しないかと誰かしら訪ねてくる。
父上からは上手くあしらい利用しろと言われているが数が多すぎる。
あの日、召喚の儀が成功し僕はやってきた聖女達に魅力のスキルを使った。気乗りはしなかったが余計な言動をとられても困るし操れるなら手っ取り早いと思ったからだ。
しかし1人だけ、効いていないものがいるのに気がついた。
(確か黒髪の‥)
そう、ドラゴンに食べられた聖女だ。恍惚とした表情で私を見ていた他の聖女達と比べ、彼女の目はとても冷静だった。
スキル耐性を持つタイプの聖女か、はたまた興味がなかったのか
(自分で言うのもなんだが整った顔をしていると思うのだが。)
それに、あの時ドラゴンは聖女をまるごと飲み込んでいるように見えたがあれは多分口に入れただけだ。嚥下した様子がなかったしドラゴンが聖女を食べてからすぐにこちらが仕掛けた魔法で撤退したことからもほぼほぼ間違いない。
あのドラゴンの目的はあの聖女を連れ出すことだったのだろう。
(しかし、なぜだ?)
ドラゴンは一直線に彼女に向かっていったし、彼女も動かずそこにいた。聖女を連れ去る事が目的なら誰でも良かったはずだ。なにせ11人もいたんだから。
(彼女である必要があった‥?)
しかし何故だ?まだ召喚されて間もなかったはず。何かを確認したりする暇もない。ただ、私のスキルが効かなかっただけ‥別に珍しいことではあるがそこまででもない。
もう一つ気になるのは今回召喚する予定の聖女は10人だったということだ。
なにせ、ここまで大規模な聖女召喚は前例がない。何かしらの不具合が発生しただけと父上は判断したようだが‥
「‥気になるな。」
聖女達のステータス確認の為の鑑定士を冒険者組合に派遣するよう要請しているがなんだかんだと理由をつけてまだ到着していない。魔法具があれば良かったのだが財政難で売ってしまったらしく本当にバカばっかりで疲れる。今の王家に信頼がないのも当たり前だからしょうがないがそろそろ本腰を入れて対応した方が良さそうだ。
(やることはいっぱいあるがとりあえず聖女達のステータス確認と拐われた聖女の捜索を最優先にした方がいいかもしれない。)
同時に10人へのスキル使用は不可もデカすぎる。正常な判断もできなくなっているようでこんな簡単な事にも今更気がつくなんて対策を考えなくては。
この国は今窮地に立たされている。たとえどんな犠牲を払っても‥‥
(あぁ‥もう疲れた。明日考えよう‥)
程なくしてスースーと静かに寝息をたて王子は眠りについた。




