長い夜
途中から視点がクロードに変わっております。
「もう、無理。眠いー」
部屋に入るなり私はベットに身体を投げ出した。
お風呂屋さんで歯も磨いたし私は寝る。もう寝る。
「おやすみ、クロード。」
「うん、おやすみ。」
もぞもぞと布団に潜り込むと目を閉じる。お腹の空きよりも眠気が凄い。私はそのまますぐに意識を手放した。
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(‥理香はもう寝たか)
男と同じ部屋にいるとは思えないほど無防備にスヤスヤと寝息を立てて眠っている。別に襲う気は毛頭ないがこれはこれで複雑な気分だ。
まさか、ここまで付き合ってやっている自分に自分でも驚いていた。一緒にいれば楽しそうだとは思ったがここまで世話を焼いてしまうとはこれはもう彼女の才能なのではないかという気さえする。
(人の世話が出来るんだな、俺でも。)
もちろん人の世界に紛れて暮らす以上それなりの社交性は持っていると自負している。仕事をする上でコミュ障という訳にもいかないしな。
友人も多いしみんなから見れば俺はいい人にあたると思う。
だが、本来1人が好きだし楽だ。
理香には濁したが俺には人の感情が分かる。ぼんやりとだが、嬉しいや悲しいといった感情が一目見ればわかるし、マーキングした相手の感情であれば目の前にいなくても分かる。実は知り合った当初、握手した時にどさくさに紛れてマーキングしておいたから里香の感情は手に取る様に分かった。
本来人間というのは感情と言葉が噛み合わないことが多い。悲しそうな顔をしながら感情は喜んでいる。そんな人間ばかりで疲れるからあまり近づきたくはない。
(だけど‥)
里香には表裏がない。申し訳ないというときは本当に落ち込んでいるし、喜んでいる時は本当に喜んでいる。
さっきの帰り道で申し訳ないと俺に謝った時だって彼女は真剣に言っていた。真剣に俺に申し訳ないと思っていたんだ。
そんな人間は初めてだったから困惑した。本気で申し訳ないから服を売ろうとするなんて、唯一の持ち物なのにそれを捨てるのか、と。元の世界に未練がないのかもしれないがそれでも唯一の繋がりさえ手放すことができる彼女に一種の憧れさえ持った。
彼女の世界は平和なのかもしれない。騙さなければ騙され、最悪殺される。そんなことも珍しくはないこの世界よりはずっと。そんな世界が彼女を作ったのか、はたまた元々の性格なのか、わからないが悪い気はしなかった。
心配する言葉をかければ素直に喜び、からかえば純粋に怒る。そんな彼女を見てるのは楽しくてついつい世話を焼いてしまった。
(‥楽しいな。彼女の側にいるのは。彼女なら‥‥)
いや、くだらない事を考えているな。自分らしくもない。
やっと自由になったんだ、俺を縛るものはもう何もいらない。
「‥長いな。」
彼女が寝ている時間は時間が経つのが遅い。
長い夜はまだ始まったばかりだ。




