宿屋スピカ
中は食堂のようだった。4人から6人くらいが座れるテーブルがお店のあちこちに点在し、お客さんで賑わっている。カウンター席もあるようで1人で静かに食事をしている人もいた。
その机の間を縫うようにエプロンをつけたショートヘアの女性が忙しなく動いている。
「いらっしゃいませー!空いてる席に‥ってあら、クロードじゃない!」
女性はパタパタとこちらに走ってくると笑みを浮かべ出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、ようこそ。宿屋兼食事所スピカへ!クロードが人間の女の子を連れてるなんて珍しいこともあるわね!」
「やぁ、ソフィ。この子は里香だよ、仲良くしてあげて。」
「もちろんよ!初めまして、里香!私はソフィ、この店で働いているの。上は宿屋になっているんだけど泊まっていくのかしら?」
ふわりと笑いソフィさんは手を差し出してくれたので手を重ね握手する。
(綺麗なおねいさんだなぁ)
歳は20代くらいだと思うが色気が私と全然違う。サバサバした喋り方なのになぜだか色っぽい。同じ人間だよね?
「初めまして、ソフィさん。里香です、よろしくお願いします。」
クロードにはなんだかんだタメ語で話していたが(なんか敬語で話すのも癪だったので)流石に初対面の大人の人には敬語で話す常識はある。
「あら、敬語なんて使わないで!そんなに歳違わないでしょ?」
ね?っと可愛らしく首を傾げるソフィさんは本当に可愛い。
因みにお歳を聞くと26歳とのこと。あれ?本当に歳あんまり変わんないじゃん、その色気ちょっとくれません?
「‥わかった、よろしくね。」
私がそういうとよろしくーっといって嬉しそうに抱きしめられてしまった。いや、本当、いい香りがする。ってちょっとまって、私お風呂入ってない!臭いから!
そうおもって急いで離れたがソフィ(さん付けも禁止だそうだ)は全然気にした様子もなくクロードに向き直る。
「それで、泊まっていくってことでいいのかな?ふた部屋隣でとるわね。」
「いや、一部屋でいいよ。ね?里香」
「はぁ?嫌だよ。‥あぁ、でも私お金持ってないからふた部屋は申し訳ないか。んー、あー、わかった!いいよ!」
女は度胸と言うし、まぁ会社で男に囲まれて寝ていたくらいだから大丈夫かと思ってオッケーを出すと何故か言い出したクロードがびっくりした顔をしてこちらを見ていた。
「冗談だったんだけど、いいの?お金なんて気にしなくていいのに律儀だねぇ。んじゃ、まっ、いっか。一部屋でよろしくー」
えっ、冗談だったの?いや、分けてくれるならそれに越した事ないんだけど?でも申し訳ないよな、私ただの穀潰しだし
なんてグルグル考えている間に話はついてしまったようでほらおいでーとクロードが奥の階段の上から呼んでいる。
急いで追いかけようとするとソフィがコソッと耳打ちをしてきた。
「ベット2つの部屋にしといたけど‥余計なお世話だったかしら?」
そう言ってふふっと微笑んだ。
いや、本当そんな関係じゃないので。ていうか可愛いな、色気頂戴、マジで。




