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『時間を止める大鎚と、消えていく私』クロノ・クロスフィア 〜Invisible pains〜  作者: 猫娘


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第13話「『文化祭』〜本番!探偵たちと魅惑のティーサロン〜」

※この作品はダークな展開やシリアスな描写、ちょっと過激なスキンシップなどが含まれます

 秋の澄み渡る大空のもと、鳳凰学園の校門が開かれた。


「鳳凰学園文化祭、本日開幕いたしまーす!」


 放送部の元気なアナウンスが響き渡ると同時に、待ちかねた大勢の来校者が校内へと押し寄せる。渡り廊下に並んだカラフルな看板や装飾が、祭りの熱気をいっそう引き立てていた。


 時子と理子が所属する二年B組の出し物『レトロ和風カフェ』は、開店早々大繁盛を迎えていた。


「いらっしゃいませー! 出来立ての美味しいお抹茶クレープはいかがですか〜!」


 可愛らしい袴姿に身を包んだ時子が、お盆に載せたクレープを運ぼうと張り切る。

しかし、気合が空回りして自分の袴の裾を踏みつけてしまった。


「ふぇぇっ!?」


ドテッ!!


 盛大にすっ転び、お盆ごと床にダイブする時子。


「ちょっと男子ー! 時子ちゃんに転ばないお仕事させなさいよー!」


「大丈夫!? 時子ちゃん怪我ない!? 袴姿可愛すぎて倒れそう!」


 周囲の女子生徒や客たちから歓声と心配の声が上がる。時子は顔を真っ赤にして「えへへ……また転んじゃった……」と照れ笑い。


 その愛されドジっ子オーラに、店内は一瞬で温かい和気藹々とした空気に包まれた。


 そこへ、同じく男前な袴姿をピシッと着こなした理子が割り込んでくる。


「はいそこまで! ここでウチの爆笑ギャグが一発! 『和風だけに、和(輪)をかけてドジやな!』……って、誰が上手いこと言えと! ほら時子、手ぇ貸しや!」


 セルフツッコミを入れて時子を引き起こす理子。客たちからどっと爆笑が巻き起こり、二Bの和風カフェは最高のスタートを切った。


 一方、休憩時間に入った時子と理子は、二年A組の出し物『本格執事&メイドカフェ』へ遊びに向かった。


「おや、いらっしゃいませ。お嬢様方」


 教室の入口で二人を出迎えたのは、借りてきた黒の男装スーツを完璧に着こなした水琴だった。


 銀縁メガネをクイッと押し上げ、低音ボイスで深々と一礼する姿に、周りの女子生徒たちが「水琴様ー!」「格好良すぎる……!」と黄色い悲鳴をあげる。


「うわぁ、水琴さん、本物の執事さんみたいで格好いい……!」


 時子が目を輝かせる中、後ろからミニスカメイド服に身を包んだ火燐が、忍び足で近づいてきた。


「へへっ! 執事姿の水琴も萌えるぜぇ! 今日もその豊満な胸元をワシワシと揉みしだいて……って、んんっ!?」


 ガシッと背後から抱きついて胸を揉もうとした火燐だったが、手応えはまるでカチコチの鉄板のようだった。


「硬っ……!? ちくしょー! まだ胸に高密度の補正インナーと圧縮バンデージを巻きやがってるな! アタシの放課後の癒やしがぁぁっ!!」


「ふふん、甘いです火燐さん! 執事の美しいシルエットを保つための完全防備です! あなたのセクハラなど物理的にカットしてみせます!」


「揉むのが前提の思考を改めろやアホ!」と理子のハリセンチョップが火燐の頭に炸裂。同じクラスならではの息の合った暴走劇に、教室中が大爆笑に包まれたのだった。


 シフトを調整した四人は、前日から楽しみにしていた三年A組の出し物――『英国風ティーサロン&体験型ミステリーパビリオン』へと向かった。


 三Aの教室前に到着すると、重厚な木製のドアとアンティーク風の看板が出迎えてくれた。


「すごい……! 本当に別世界に来たみたい……!」


 ドアをくぐると、そこは十九世紀末のロンドンを思わせる洋館そのものだった。クラシック音楽が静かに流れ、アンティーク調のランプが温かい光を落としている。


 受付で案内係を務めていたのは、黒のシックな執事服をピシッと着こなした三年生徒会書記の男子生徒――『眼鏡先輩』だった。


「いらっしゃいませ。三年A組ティーサロンへ……って、君たちか」


 眼鏡先輩は胸に手を当てて気取りつつも、理子たちの姿を見てドギマギとメガネを押し上げた。


「へぇ〜! 眼鏡先輩、執事服めちゃくちゃ似合ってますやん!」


「つ、土屋……! 私は会長の厳格な指導のもと、執事としての責務を果たしているだけだ!」


 理子にからかわれて顔を赤くする眼鏡先輩。そこへ、奥のベルベットのカーテンがゆっくりと開いた。


「ふふ……ようこそ、私の洋館へ。可愛い探偵さんたち♡」


 あでやかで優雅な声とともに現れたのは、三年A組の生徒会長である風花アイシャ先輩だった。


 その姿を見た瞬間、時子たちだけでなく、周囲にいた来校者全員の息が止まった。


 アイシャが身に纏っていたのは、深いワインレッドと黒を基調とした、胸元が大胆に開いたクラシカルなヴィクトリアン・ドレス。


 最年長ならではの圧倒的なプロポーションと規格外の豊満な胸元がレースの縁取りから惜しげもなく強調されている。


 深い谷間がドレスの切れ込みから艶やかに覗き、豊かな膨らみがレースの縁にわずかに食い込むようにして揺れている。まさに「洋館の妖艶な女主人」そのものだった。


「〜〜〜〜〜〜っっっ!??!?」


 そのあまりの美しさと色香の暴力に、アイシャのすぐ横に立っていた眼鏡先輩が、真っ赤になってフリーズ。視線がどうしても胸元の深い谷間に釘付けになってしまい、眼鏡の奥の瞳が泳いでいる。


 さらに、偶然アイシャの正面で注文を聞こうとしていた男子生徒客のひとりが、


ブシャッッ!!


「ぐはっっ……!?か、会長……!刺激が、刺激が強すぎます……っ!!あ、あの胸元が……!」


 両手で鼻を押さえたものの、指の間から勢いよく綺麗な血しぶきが噴出!男子生徒は目を見開いたまま倒れそうになり、友人と思われる男子生徒たちに抱えられた。


 しかし視線だけは、最後までアイシャの強調された胸元から離れようとしなかった。


「おい大丈夫か!? 救護室へ運ぶぞ!」


「あ、アイシャ先輩の破壊力が凄すぎる……っ!」


 鼻血を出した男子生徒は、「会長……最高でした……」と涙ながらに親指を立て(グッ)、友人に連れられてフラフラと教室から退出していった。


「あらあら……大丈夫かしら? お鼻にティッシュを詰めてあげればよかったかしら♡」


 アイシャ先輩がクスクスと悪戯っぽく微笑むと、周囲の男子生徒たちが「僕も鼻血出そう……」「女神だ……」と一斉に拝み始める。


「アイシャ先輩……相変わらず凶悪な色気だな……っ!」


 火燐も自分の鼻をサッと押さえ、水琴も


「アイシャ先輩のスタイルと衣装の相乗効果……視覚的刺激の数値が測定不能です……」とメガネを光らせて圧倒されていた。


「さあ、可愛い探偵さんたち。美味しいお茶を飲みながら、我が洋館の『密室殺人事件』の謎、解き明かせるかしら?♡」


 アイシャ先輩の案内で、5人は特等席のテーブルへとつくのだった。


 テーブルには、本格的なダージリンティーと焼き立てのスコーン、そして一冊の古びた羊皮紙風の『事件記録カード』が置かれていた。


「制限時間は30分。見事犯人とトリックを見破れたら、特製『名探偵認定証』をプレゼントするわね」


アイシャ先輩が微笑むと、水琴がバインダーとペンを取り出し、瞳をギラリと光らせた。


「ふふふ……見せてあげます、我が薬学研究部およびオタクの観察眼を! 十九世紀末の化学知識と論理的思考で、最速クリアを目指します!」


「アタシは直感だ! 犯人はこの執事(眼鏡先輩)だろ!」と火燐が指をさすと、遠くで受付をしていた眼鏡先輩が「私ではない!!」と即座に叫び返してきた。


 そんなやり取りをやっている間に制限時間三十分の謎解きバトルがスタートした。


 文芸部と推理小説好きの男子が練り上げた謎は、想像以上に本格的だった。現場の配置図、被害者のアリバイ、毒物の検出データ、そして『完全に鍵がかかっていた密室の謎』。


「くっ…! 被害者の胃内容物から検出された成分と、紅茶の抽出時間のタイムラグが計算と合いません……! この密室の鍵は一体どうやって外からかけられたのですか……!?」


 水琴が猛烈な勢いで計算式と図面をノートに書き殴るが、最後の核心部分でパタリと手が止まる。残り時間はあと五分。


「あかん、ウチの機械的な構造の推測でも、外から鍵を回す糸仕掛けの痕跡が見つからへん……!」


 理子も頭を抱え、火燐も「うおーっ! 犯人出てこい! 殴って白状させてやる!」と頭を掻きむしる。


「うぅ〜、どうしよう〜! 制限時間がなくなっちゃうよぉ〜!」


 焦った時子が「えーっと、えーっと!」と身を乗り出した、その瞬間だった。


 手元が狂い、テーブルの上に配置されているジャムの小鉢に手が当たってしまう。


「ふぇっ!? や、やばっ、倒れちゃうっ!」


 ガシャンと小鉢が倒れそうになり、時子は咄嗟に素手でジャムの小鉢を受け止めた。


「ふぅ……良かった、こぼれなかった……あ、指にイチゴジャムがついちゃった」


 時子がジャムのついた指で、テーブルの上の事件記録カードの端をぬぐおうとした、その時。


 指の体温とジャムの水分がカードの余白に触れた瞬間、紙の表面に隠されていた『特殊な炙り出し文字』が、スーッとピンク色に浮かび上がってきたのだ!


「……えっ? なんか文字が出てきた……?」


 時子がぽかんとカードを見つめる。水琴と理子が目を見開いてカードに飛びついた。


「なっ…!? これは感熱インクならぬ、糖分と体温で反応する特殊指示薬インク…!?」


「時子、大手柄や! ここに犯人の手口が書いてあるで!」


浮かび上がった文字にはこう書かれていた。


『密室の鍵は最初からかかっていなかった。女主人が使ったのは、部屋の外から扉を鍵がかかったように見せる“鏡のトリック”である』


「あ……! 犯人は、被害者を毒殺したあと、鏡で密室に見せかけたんだ……! ということは、犯人は……洋館の女主人である、アイシャ先輩だ!」


 時子がパッと顔を上げて叫ぶと、ちょうどタイマーが鳴り響いた。


ピピピピ、ピピピピ……!


「制限時間終了よ。……ふふ、見事ね、時子ちゃん」


 ベルベットのカーテンの影からアイシャ先輩が歩み寄り、パチパチと優雅に拍手を送った。


「私の鏡のトリックと犯人を見破るなんて……素晴らしいわ、名探偵さんたち♡」


「やったぁぁぁっ! 時子の奇跡のドジひらめきで解けたでー!」


「さすが時子だ! よくやった!」


理子と火燐が時子を抱きしめ、水琴も「まさかジャムの水分と体温で隠しインクを反応させるとは……計算を超えたミラクルです……!」と感動の面持ちで頷いたのだった。


「見事な推理でした。我が生徒会および三年A組より、君たちにこれを授与します」


 眼鏡先輩が誇らしげに(そして相変わらずアイシャ先輩に照れながら)、特製の『名探偵認定証』と豪華なお菓子の詰め合わせを5人に手渡してくれた。


 こうして、二Bの『レトロ和風カフェ』、二Aの『本格執事&メイドカフェ』、三Aの『ミステリーパビリオン』すべてが大盛況のうちに幕を閉じた。


 すべてのプログラムが終了し、校内放送から終話のアナウンスが流れる頃。


 夕焼けの茜色と紫色のグラデーションに染まる校舎の屋上に、時子、理子、火燐、水琴、アイシャの五人が集まっていた。


「はぁ〜! マジで濃い一日やったな!」


 理子が笑いながら缶ジュースをプシュッと開ける。


「和風カフェも大繁盛やったし、ミステリーもクリアできたし、最高の文化祭になったわ!」


「おうよ! アタシも演武に呼び込みに大活躍だったぜ!」


 火燐が八重歯をニシシと覗かせて胸を張る。水琴は揉まれないよう胸元をしっかりガードしながら苦笑した。


「火燐さん、明日はもうその補正バンデージを外しますから、絶対に胸を揉まないでくださいね……?」


「ふん! 明日は明日の風が吹くんだよバカ!」


 照れ隠しにそっぽを向く火燐と、くすくす笑う水琴。


 アイシャ先輩は優しく時子と理子の肩を引き寄せ、夕空を見上げた。


「ふふ、本当に楽しかったわね。鼻血を出して運ばれた男の子も、無事に回復して『最高の文化祭でした』って戻ってきてくれたのよ♡」


「アイシャ先輩の破壊力が凄すぎたんですよ……!」と理子がツッコむ。


 時子は、手の中のジュース缶を見つめながら、そっと胸に手を当てた。


「「私ね……この学校に転校してきて、みんなと出会えて……本当に毎日が夢みたいに楽しいの。みんなと一緒に笑って、ドジ踏んで、助けてもらって……ずっとずっと、こんな日々が続くといいな」


 茜色に染まる鳳凰学園の屋上。時子のまっすぐな言葉に、隣にいた理子が優しく眼差しを向けた。


「当たり前やんか、時子。ウチらはいつでも一緒や。明日も、来月も、ずっとこうしてみんなで大爆笑するんやからな!」


 フェンス越しに並ぶ五人の手元には、来月に迫った修学旅行のしおりが開かれていた。

アイシャが優雅に温かい紅茶の入った水筒をソーサーに注ぎ、ごく自然な動作で微笑む。


「三年生の私は一緒に行けないけれど、来月はいよいよあなたたちの修学旅行ね。そろそろ自由行動の班決めやルート作成を本格的に始めないといけませんよ」


「おおっ、そうじゃん! 京都と大阪だっけ? アタシ、絶対本場のたこ焼きと串カツ食いまくる!」


 火燐が身を乗り出すと、時子も目を輝かせて「抹茶スイーツや焼きたてのみたらし団子も外せないよ!」と乗っかる。


「あんたら、ほんまに食い気ばっかりやな。新幹線や昼の移動はクラス別(二A・二B)やけど、宿の部屋割りは人数割りの都合で合同になれるかもしれんし、ルートはしっかり練らんとあかんで」


 理子が呆れ顔でバインダーを叩くと、水琴が銀縁メガネをクイッと押し上げた。


「伏見稲荷の千本鳥居の幾何学データや、道頓堀で時子さんが迷子になるリスクを想定したアルゴリズムは構築済みです」


「えぇっ!? 水琴ちゃん、私最初から迷子になる前提なの〜!?」


 時子が頬を膨らませると、屋上にどっと温かい爆笑が巻き起こった。


 自分は修学旅行には一緒に行けないけれど、大好きな後輩たちが紡いでいく新しい思い出の一ページが、どうかかけがえのない光になりますように。アイシャは豊満な胸元に手を当て、みんなを包み込むように優しく抱きしめた。


「ええ……あなたたちみんなで、絶対に忘れられない素敵な思い出を作ってきてね。ずっと、みんなで一緒よ♡」


「はいっ! 修学旅行で大暴れした後は、冬休みもまたみんなで大暴れしようぜ!」


「はい。修学旅行の安全ルートも冬休みのイベント計画も、私がデータで完璧に立案します」


 夕陽の美しい光が、五人の少女たちの影を屋上に長く伸ばしていく。


 ドジっ娘で真っ直ぐな時子、頼れる幼馴染の理子、男気と八重歯の火燐、不憫かわいい頭脳派の水琴、そして頼れるお姉さんアイシャ。


 五人の絆と弾ける笑顔は、夕空の下でどこまでも眩しく輝き続けていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

今回は楽しい文化祭の回でした。

アイシャさん…男女問わず悩殺ですね。

ドジっ娘スキルは色々な意味で(*´∀`)オソロシヤー

魔法少女たちの運命が今後どうなっていくのか、ぜひ見届けていただけると幸いです!


【読者のみなさまへのお願い】

もし「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】をいただけますと、執筆の大きな励みになります!

感想やレビューもお気軽に残していただけると嬉しいです!

次回、第14話もどうぞよろしくお願いいたします。

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