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ここには汚いものが無い。
道が整備され凸凹してなく平らで歩きやすい。ゴミなんてどこにも落ちてなくて脇には綺麗に整えられた花壇まである。
徹底的に汚い物を排除し美しさを主張している。
穢れたものを消し去る事がここに住む人間にとっての正義なのだろう。
その証拠に、この場を歩いているだけのルキナには不快さを隠しもしない蔑む様な目が向けられている。
本当に気色悪い。
外側を飾る事ばかりに必死で内側の醜悪さには目を向けない。自身の醜さを通してでしか周りを見えないから何を見たって汚いに決まっている。
「それは私も同じか」
ルキナは自嘲する。
何もかも気持ち悪い。
ついこの前まで見ていた世界が全て反転したみたい。
辛く汚い場所が嫌で恥ずかしくてずっと抜け出したくて頑張ってきたのに憧れていた綺麗な世界は汚い世界がマシに思えるほど穢れて見える。
幸福な人間はその幸福を手放したくなくて醜くしがみつく、意地汚いのは不幸も幸福も同じ。
ルキナが不躾な視線を向ける人間を睨み返すとそいつは慌てて目を逸らした。
自分では何も出来ない臆病者、金の力で人を使うしか出来ないこいつらより劣ってるだなんて思わない、下だなんて認めない。
見た目、世間体、そんなものばかり気にするお前達にお似合いの穢れをこの高級住宅街に振り撒いてやる。
殺人という名の汚点を。
お金が無いからずっと着続けられるようにとルキナが子供の時に母に買って貰った大きめのパーカー。今は少し小さいくらいになった大事なパーカーのポケットにある銃を御守りみたいに握りしめる。こんな金属の冷たさだけが今のルキナの支えになってしまう程に何もかも失って捨てた‥‥‥いや違う、奪われた。
取り返しのつかないものを奪われ出来た心の痛みを癒すのは同じく痛みしかない。
死にたくなる程の苦痛を宿した表情、ただそれだけがルキナの癒しになる。
目的地は目の前、清潔感を前面に押し出した白く大きな家が目に入る。
一見すればただの豪邸、しかしその内側では大きな腫瘍が出来ている。
放置された病巣、医者のくせに治すつもりがないなら他の誰かが治療してあげないといけない。
人を殺してしまえる程に悪化してしまった病を。




