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人殺しの助手  作者: レア
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20

『今日の運勢第一位は乙女座のあなた! 思いがけない出会いで問題は解決、幸福な一日が訪れます』


朝、BGM代わりにつけていたテレビがそんな情報を伝えてくる。


「私じゃん」


『ラッキーカラーは赤、赤いものを身に付けておけば運気アップ』


「ふーん」


幸運のお告げ、だがアリアのテレビを見る目は冷めている。

占いなんて当たらない、それがアリアの意見。

昨日の朝までのアリアなら否定も肯定もしない中立として情報を受け取り運勢がいい日は何かいい事あるかなと僅かながら期待して悪い日は忘れる、そんな朝を迎えていた。

突如、否定派へと転身した理由は昨日の運勢のせいだ。

第四位、どちらかと言えば良い順位を与えられたアリアの星座だったのに昨日アリアは警察のお世話になって夜遅くまで説教を受けている。

四位の人間が警察行きなら昨日の十二位は一体どんな悲惨な目に遭ったのか。


「どうせ当たらない」


下らない情報を垂れ流すテレビを消して朝食の支度を始める‥‥‥その前に一度アリアは両親の寝室に向かった。

数分後、出て来たアリアの首元からは赤い宝石のネックレスがちらりと見える。

別に占いに影響されたわけじゃない、昨日散々な目に遭ったからこれは御守り。

母親がよく身に着けていた形見、これが近くにあると守られてる気がする。

主張し過ぎず、けれどしっかりとした輝きを放つそれは母によく似合っていた。

ずっと見ることすら辛くて近づきもしなかったけど今はこうして生きる為の力に出来る。

とても大事な物だから本来眺めるくらいしかしないのだが今日だけ特別、別に期待してないが一応ラッキーカラーらしいし家にいる間だけでも身に着けてみる。

完全体となったアリアは朝食を終え今日も便利屋に向かう準備を終えて玄関扉を開け外に出た瞬間、頬を微かな風が通り過ぎた気がした。

ふと見上げると空は灰色の雲に覆われている、だがアリアは傘を持とうとしなかった。雨が降ったらそれを理由に居座って最終的にお泊まり出来るかもなんて邪な目的を抱きそのまま家を出たのだ。

今日の占いで運勢も良いらしいしもしかしたら思い通りに運ぶかも、そんな予感に頬が緩んだところで思い出す、そういえばネックレスを着けっぱなしにしていると。

幸いすぐ帰れる距離、アリアは一旦戻ることにして家の前に着き鍵を外し中に入って身体が硬直した。


「‥‥誰、あなた?」


フードを目深に被りマスクをした人物が家の中に居た。

恐怖で頭が回らない、何をするのが適切なのかも考えられない。

だけどそれは向こうも同じだったようだ。


「なんで‥‥」


帰ってくるとは思っていなかったのだろうアリアと同じように侵入者も現実を理解するまで動けず更に混乱からか声まで発していた。

自身の失敗に気付いたのか慌てて口を手で押さえる。


「女の人?」


次の瞬間、侵入者はナイフを取り出した。

性別という情報を知られたが故の口封じかと思ったが違う、ナイフを握る手は震えて定まらず両手で包んでも治らない。人を殺す決意を固めて犯罪をおこなっているようには到底見えない。

咄嗟に取り出してしまったに違いない。

下手に刺激しなければきっと命までは奪われない。


「落ち着いて。欲しいものがあればなんでも持って行って良いから。私はあなたの顔も分からない、私を殺してもあなたに人殺しという罪が上乗せされるだけで何の利益もない。信じられないかもしれないけど警察にも言わない」


二度も命の危機を味わったせいかこんな場面でもすらすらと言葉は出てくれる。

しかし侵入者はナイフを向けたまま動かない。

まともな思考が働かず何をどうすれば良いのかも冷静に考えられていない状態であろうその人物にアリアは最強の脅し文句を伝える。


「早くしないと助手が来ちゃう」


約束なんてしていないから来るわけ無いのだが焦ったように侵入者は震えるナイフの切っ先をアリアの胸元に向け「それ」とだけ伝えてくる。

一番近くにある高価な物、どうやらアリアのネックレスを要求している。


「これは‥‥‥」


「早く」


母の形見を手放すなんてしたくない、けれど‥‥‥。


「分かった」


アリアはネックレスを外して手渡す直前、最後の抵抗を試みる。


「母の形見なの」


家に侵入しナイフを向ける相手の良心に訴え掛けるなんて馬鹿げている、だがその言葉を聞いて侵入者は伸ばして来た手を一瞬止めた、しかし結局はアリアから奪い取ってそのまま逃げるように去って行ってしまう。

あの一瞬のうちに侵入者が何を思ったのかは分からない、けれどあの一瞬の躊躇いこそが彼女の本質を表していると思いたかった。



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