第二話:出るか? 出るのか? 二発目
登場人物:
モッコリウス=ケン・ナジャール
誠司の脳内に住みついた“伝説の戦士”。
『もっこり大戦争』の主人公で、パンツ星出身・全裸マントの銀河最強バカ戦士。
最近、誠司のPC画面に突然現れるようになり、「二発目を出せ!」「立て!」と謎の激励をしてくる。
脳内キャラなのに無駄に存在感が強く、言うことが意外と名言っぽくて腹が立つ。
古本屋の倉庫裏。
ほこりまみれの文庫の山の隙間に、俺はうずくまっていた。
30円。
三十円。
税込みでも33円だ。
「……出ない。二発目が、出ないで候……」
小声でつぶやいたそのときだった。
突然、PCの画面がチカチカと点滅し、
電源も入れていないのに、画面中央に“あの顔”が現れた。
「出ないのか……“二発目”がッ!!」
「貴様、それでも我が創造主かァァァァ!!」
音も立てずに現れた筋肉の塊。
肩幅が画面の枠をはみ出している。マントが風もないのにバッサバサ揺れている。
その男こそ――モッコリウス=ケン・ナジャール。
かつて俺が『もっこり大戦争』で書いた、
パンツ星から来た無敵の戦士にして、全裸マントで銀河を救った伝説の男。
「先生。……最近、ずいぶんと筆が鈍っておるようだな?」
「出たな、幻覚。俺の黒歴史の亡霊が……」
「“黒歴史”とは心外だな! 貴様が“出した”からこそ、
世界中が笑い、涙し、そして“伝説”が生まれたではないかッ!!」
「うるせぇ……もう“もっこり”じゃ笑えない年齢なんだよ……」
「ほう。ならば今は、何を書いておる? 『純文学風・夜の砂漠』とか、
『君と僕の終わらない散歩道』とか、陰キャ男子の拗らせポエムかァァァ!?」
図星だった。
「“二発目”を恐れるな、先生よ。
恐れるべきは、“何も出せないまま朽ちる”ことであろうがァァァ!!」
誠司は、しばらく黙っていた。
PC画面の中で仁王立ちする、
“パンツ一丁の銀河英雄”が、妙にまっすぐすぎて直視できなかった。
そのとき、店のチャイムが鳴った。
「……あ、ちょっとお客さん来た。黙っててくれ」
「承知!!」
※だがなぜか敬礼ポーズがうるさい
こうして再び、俺の中で“アレ”がうごめき始めた。
かつての栄光。俺を有名にし、そして縛りつけている、もっこりの亡霊。
二発目は、いつ出るのか。
そもそも、出す覚悟が、俺にあるのか。
つづく




