第一話:立ち上がらない朝、その男、かつて“バズった”
登場人物:
高槻 誠司【30歳】
本作の主人公。通称「もっこり先生」。
かつて、処女作『もっこり大戦争』がSNSでバズりまくり、奇跡の書籍化&10万部超ヒット。
一夜にして“時の人”となったが、それが人生最大のピークだった。
以来、「もっこりを超える二発目が出ない」状態が続き、現在は知人の古本屋でバイト中。
本人は「俺は本当は、真面目な小説が書きたいんだ……」とよく言うが、だいたい書けていない。
俺の名は高槻誠司。
三十歳、独身、肩書き「一発屋」。
かつて書いた処女作『もっこり大戦争』が、SNSで奇跡的にバズった。
“タイトルがバカすぎて逆に気になる”という謎の拡散を経て書籍化。
結果、売上10万部を超える異例の大ヒット。ドラマ化までされた。
……だが、それがすべての始まりだった。
俺の人生は、“あの一発”ですべて変わった。
良くも悪くも、いや……**悪くも悪くも、**だ。
それ以来、何を書いても「次は“もっこり”系ですか?」と言われ、
真面目な小説を書こうとすれば、
「えっ、こんな普通の話を書くんですか?」と戸惑われた。
気がつけば、執筆依頼は途絶え、印税も尽き、
今では知人の紹介で始めた古本屋のバイトが、
唯一の収入源になっている。
その店の名は「ブック堂 カタスミ書房」。
駅から微妙に遠く、冷暖房が死にかけ、客は1時間に1人。
けれど俺にとっては、
原稿からも編集者からも逃れられる**“避難所”**のような場所だった。
そんなある日の午後。蝉の声が外からうるさい。
「あの、これ……買い取りお願いしたいんですけど」
20代前半くらいの青年が、紙袋を手に来店した。
店主の永田さんが袋の中を覗いたとき、
俺はすでに、何か“嫌な予感”を察知していた。
「……おっ。出た。“もっこり大戦争”。懐かしいねぇ〜」
永田さんのその一言で、全身が一瞬にして汗ばむ。
「これね、うちじゃあまり動かないけど……30円でいい?」
_人人人人人人人人人人人人人_
> 三十円で候……!? <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
……たしかに、もう何年も前の本だ。
読み終わって手放す気持ちもわかる。
けれど、自分の“代表作”が、今こうして、
レジ裏の買取本が無造作に置かれているカーゴへ入れられていく姿を、
俺は静かに見届けるしかなかった。
「おまえの本、まだ持ってたファンいるみたいだな〜」
店主はニコニコして言ったけど、俺はうまく笑えなかった。
ここ数年、“次の一作”が出せないまま過ごしている。
いや、書こうとしたことはある。何度もある。
けれど――
「先生。“二発目”は、出ないんですか?」
そんなセリフを編集者に言われてから、俺の中の何かがポキンと折れた気がした。
出した一発が早すぎたのか、
もう出せない体になってしまったのか。
とにかく、俺は今も、“立てていない”。
つづく
※※※ 決してエロ小説などではございません ※※※




