決戦!絶望へと誘う黒の支配者⑤
目の前には依然として佇む黒鳥。
イリスや私、カモミールさんやエーデルワイスがつけた傷はある。
だが、いまだに黒鳥は余裕がありそうだ。
私は生成した剣を握りしめ、言う。
「くそったれ。けど、ここで止めてやる!」
私一人だけになってしまったが、ここで止めないとまずい!
黒鳥は翼を振りかざす。
私は嫌な予感がした。
「っ!!」
慌てて、横に転がると。
私が元々いたところは地面がひび割れ、巨大な風の刃の跡が残る。
恐らく、黒鳥が風の刃を放ったのだろう。
「風の刃?……イリスの技のコピーだよね」
すると黒鳥は足の爪でこちらに着地しようとしてくる。
あんな鋭利な爪でやられたらひとたまりもないだろう。
けど……。
「ピンチな時の度に大技をぶっ放してるから、そろそろ魔力切れなんじゃない?」
黒鳥は喋れはしないが、こちらを無言で見てくる。
まるでこちらのことを理解しているかのように。
「確かにあんたが今まで戦ってきた相手の中じゃあ、私が一番弱いってのは事実かもね。……けど」
私は黒鳥に剣を突き立てて言う。
「エルザの時のようにはさせない、確かに今回戦ってる魔女イリスはエルザよりも弱いかもしれない。だけど、イリスには仲間がいる。私がいて、カモミールがいて、エーデルワイスがいるの。だから」
私は剣を構える。
黒鳥はずっと私のことをにらんでいる。
すごい威圧だ。
鳥肌が止まらないし、変な汗だって出てきた。
けれど、続けて言う。
「同じことなんて繰り返させない。今度は葬ってあげる。」
イリスはきっと大丈夫だ。ここでやられるわけない。
信じてる。
思わず、変な笑いが出る。
「まずはその目を潰してあげる。」
私のことをにらんでいた黒鳥は、スピードを落とさないまま、地面へ突っ込んできた。
私は即座に後ろに下がり、それをかわす。
ガガガッ!と凄まじい音を立て、土を次々とめくっていく。
数メートル滑走したところでようやくその巨体が停止する。
地面には巨大なひっかき傷のようなものがついており、こんなものでひっかかれたら、ひとたまりもないだろう。
「っ!?」
突如、視界が暗くなる。
黒鳥の翼が真横に来て、陰になっていたのだ。
私ごと、跳ね飛ばす気か!
すぐさま私は受け身の体制を取る。
黒鳥の翼が右肩に当たる。力強く、耐えきれるわけがない。
私は跳ね飛ばされる。
岩壁にぶち当たり、左半身をもろに殴打される。
衝撃が走り、痛みが全身を駆け抜ける。
辺りには砂埃が舞い上がり、視界が見えない。
本来なら、これ以上は戦えない……はずだった。
「あぁ、痛いなぁ!もう!」
砂埃が落ち着き、視界が開く。
黒鳥は驚いたのか、こちらを見つめて、静止している。
痛みで肩やわき腹がピリピリと痛むが、あいにく動けないほどじゃない。
いや、もしかしたら骨折とかしてて危険な状態なのかもしれない。
けど、闘ってやるという意気込みがそれを麻痺させている。
「言ったでしょ!その目を潰してやるって!」
黒鳥に向か合って一直線に駆け出す。
黒鳥は再び、翼で進路を妨害してくるがもうそんな手になんて乗らない。
「言ったでしょう!物理攻撃だったら、私との相性が最悪だって!」
……いや、本当はそんなこと言ってないのだろうが、別にいいや。
頬を横切る風が今は気持ちいい。
何故か、高揚感が湧いてくる。
やってやる!
やってやるんだこいつを!
私は地面に着地していた黒鳥の脚を見る。
片方はイリスにずたぼろにされたがもう片方なら!
足を止めず、黒鳥の脚を駆け上がる。
まさか、脚から上がってくるだなんて予想外だったのだろう。
必死に振り払おうとしてくるがもう遅い。
黒鳥の頭までよじ登った私は、剣を振りかざす。
「だから言ったでしょう?」
私は黒鳥の瞳に剣を突き刺す。
「その目を潰すって!」
『!!!!』
黒鳥は声にならない叫びのようなものをあげ、振り下ろそうとしてくる。
私は羽をつかみ、必死に振り下ろされないようにしつつ、もう一枚カードを出す。
「もう一回!」
もう一度、剣を生成する。
振り下ろそうと、黒鳥が頭を振り回す。
私は振り回してくる頭の動きに合わせ、双頭のもう片方の頭へ飛ぶ。
「ああああああああああああ!」
着地の勢いのまま、もう一本の剣を黒鳥の瞳に突き刺す。
『キエエエエエエエエエエエエ!』
黒鳥は今度は明確な甲高い叫び声をあげる。
「おっと!」
すごい勢いで頭を振り回すものだから、思わず、振り落とされてしまうがなんとか、地面に着地する。
すると着地した私に、黒鳥は翼を振り下ろしてくる。
「おっと!」
危うく潰されてしまうとこだった。
するともう片方の翼で、まるで地面を掃除する箒のように地面ごとめくりながら振り払ってくる。
「危なっ!ふんっ!」
私はそれを高くジャンプしてよける。
地面に着地した私は一連の動作でバランスを崩しかけてしまう。
「おっとと」
すると周りの空気少し揺れたように思えた。
「っ!ま、まさか!」
黒鳥の潰されていない瞳と目が合う。
瞳は一瞬だけ、赤く光ったように思えて。
「もう魔力が回復したっての?!」
空気が先ほどより大きく揺れる。
そして、双頭の嘴、両方から凄まじい勢いで炎が噴射される。
まずい!
こんなものに直撃されたらただじゃ済まない。
私は、炎から逃れるべく、全速力で後ろに下がれる。
正直、足の速さには自信がある。
けど、猛烈な勢いで迫りくる炎の方が早い。
「く、ああああああああ!」
背中から、迫りくる熱を感じる。
熱い。
焼かれるわけにはいかない。
けど……追いつかれるかもしれない。
そう感じた時だった
「湧きあがれ!」
突然、戦場に私のものではない声が響く。
「水流之障壁!!」
すると、私と迫りくる炎を遮るように、巨大な水の壁が天高く出来上がった。
水の壁は迫りくる炎を飲み込んでくれる。
シュウウウ!と音を立て、激しい水蒸気を立てながら、私を完璧に遮断する。
「レイラ!無事?」
声の主の少女が私の元へ降りてくる。
声の主の少女は、紫色の髪をツインテールで束ねていた。
少女は、白いカッターシャツに青いネクタイ。そしてその上には青いブレザーを着ており、下には青いスカートを履いていた。
少女のブレザーの左胸ポケットにはある紋章が描かれている。
その紋章は馬に乗った騎士が盾を持ったもの。
それは騎士団に所属する人のみがつけられる紋章であった。
そしてその少女は私も知っている子だった。
「セリエ!?なんでここに?」
「うるさい!あんたが心配で抜け出してきたのよ!」
セリエは叫ぶと同時に、手を前へと掲げる。
それに合わせるように、展開されていた水の障壁が、大砲から放たれたかのような、凄まじい勢いで前へと進みだす。
そしてその水の障壁は、迫りくる炎を全て搔き消しながら、黒鳥の顔の真正面へぶち当たる。
水飛沫が激しく舞い散る中、セリエは黒鳥を睨みつけ、言い放った。
「随分、好き勝手してくれたみたいじゃない。けど、次はそうもいかないわよ!」
レイラとセリエ、性格は凹凸で真逆な二人が、黒鳥に真っ向からぶつかろうとしていた。
第二章の終盤戦、書いてたら次々と展開を盛ってしまうのでなかなか進みませんね汗
次回も頑張って書いていきますので、引き続き読んでいただけると助かります!
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