表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完結』天使と悪魔の言う通りに…ね?〜力を貰えず異世界へ…だから2人とも、俺に力を貸してくれないと死んじゃうんだけどッッ!?〜  作者: お汁粉パンチ
港湾都市ダイコウ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/57

第42話 裏の顔


 そうしてヤオの屋敷での生活が始まり一週間が経った。

 相変わらず良い暮らしをさせてもらっていた。

 3食豪華な食事に加えて、暖かい風呂にフカフカのベッド。

 これ以上ないぐらいで、これからの旅が心配になるくらいだけど…。

 

 彼女の相手をしているだけなのに、ここまでされると不安になってくる。

 だってクラーク家の時は竜王祭があったけども、今は本当に何もない。

 それを彼女に直接告げても、


「良いさ良いさ、もっとリラックスしてくれたまえよ。

自分の家だと思って…ね?」


 柳に風、綺麗に受け流されてしまう。

 

 こんな贅沢生活の唯一のデメリットと言えるのは、外に出れない事だろうか。

 せっかく楽しい観光地に来たのに、窓から見ることしかできないのは残念すぎる。

 ヤオに言わせると、


「冒険者なんだろう?

フラッと居なくなられると、私は悲しいからね」


 との事だ。

 この大きな屋敷には数えれないほどの使用人がいて、勝手に出ようとしてもバレるだろう。

 だから、俺は出ることを諦めた。



 そう俺は…だ。

 3人は透明だし、誰かに見つかる事もない。

 俺から離れた際のペナルティなんかも無いらしいし、本当に自由だ。

 そんな訳で、


「では私達の集めた情報を話していきますね」


 彼女達が集めた情報を聞く。

 一応先頭になった際に1人は居ないと行けないからルシェとセフィが交代で、ステラはずっとお仕事だ。

 ステラだけは貸せる力が残念ながら無いらしいし、しょうがないかな。

 

「カルナーク商会会長ヤオ、彼女は1代でこの大商会を築いたやり手です。

とはいっても、数百年堂々と生きていますけど」


「この港を使った貿易の3分の1ぐらい関わってるぐらいにデカいしねぇ〜。

ダイコウ内だったら圧倒的1位の規模だよ」


「だから人間とは思われてないらしいな。

流石に数百年生きるのなんてエルフなんかの長命種だけだしな」


 やっぱり彼女の商会は大きかった。

 まあ調べなくても、この屋敷やあの黄金の馬車を見れば誰でも分かるだろうけどね。

 問題は…この先だ。


「商会が扱うのは異国の絹織物や海産物、宝石までも幅広く手を出している様です」


「それに武器や薬も…金貸しもな。

魔王討伐されてからの数百年は、人間同士の争いが絶えなかった。

さぞ…儲けただろうなァ」


 何で稼いでるのか疑問だったけど、こだわりはなく幅広く手を出していたのか。

 馬車より圧倒的な量を運べる海路、それに魔王討伐後は魔物の動きが控えめになったらしい。

 ということは…陸だと盗賊が住みやすくなったって事だろう。

 国同士での争いが続き、荒れていたなら尚更だ。

 彼女が商会を開いたこの立地も相まって、拡大の一途を辿ったという感じだろうか?


 正直、今のところ魔女の雰囲気は全く無い。

 だってただ長命種が商会を作り、儲けましたってだけだし。

 戦場に便乗して儲けるというのも、商人としては別に何の問題もない。

 …多少思うところがないと言ったら嘘になるかもだけど。


「まあ、ヤオも孤児院運営といった慈善事業にも手を出しています。

15歳になった子はカルナーク商会で雇ったり、この屋敷なんかでも働いているみたいですし一概に悪とは言えません。

裏の顔が無ければ」


「?」


 良いことを並べていたはずなのに、急に不穏になった。

 俺はつい、セフィに向かって首を傾げてしまう。


「…奴隷ですよ、それも一般市民の」


 奴隷…他はどうあれ、この国では原則認められていない。

 あるのは敵国との戦争で現れた捕虜の戦争奴隷や、大罪を犯した者への刑罰の一種である犯罪奴隷だけ。

 しかもこれらの奴隷を所有できるのは、王族だけとされている。

 貴族にも認められていないのに、大規模とはいえ商会が所有することなんて許されない。

 それが一般市民なら尚更だ。

 …でも、


『何でそんな事するんだろう。

別に金なら一杯あるんだし、正規ルートで雇えば良いと思うけど…』


 これは疑問だ。

 一歩間違えば…というか捜査が入ったら商会解散級なのに、こんな危険な橋をわざわざ渡る必要ないだろうに。

 でもそんな俺の疑問は、彼女らにとっては想像の範疇だったらしい。


「それは…その奴隷たちが珍しい種族だったからだろうな。

エルフに、ハーピィと人間のハーフ…天翼人だったりさ。

あの女、ダンとシャツ然り珍しいものに目がないんだろ?」


『…雇うだけじゃダメ、なのかな?』


「それは、彼女に聞いてよ〜。

人間の考え…しかもイかれた人なんて全く分かんないんだからっ!」


「…まあ想像はつく、きっと彼女は手放すというのが許せないんだろうさ。

ダンが軟禁されてるのがその証拠だろ?」


 ステラは怖い事言うなぁ…。

 じゃあ、俺待ってたら奴隷になるって事?


「その可能性が高いでしょうね」


 …俺一応人間なんだけどね。


「いやいや、創造神と会った異世界人じゃん。

多分この世界だとオンリーワンでしょ?」


 知られたらやばそうだ。

 今の所は大丈夫だとは思うけど。


「これだけ重いと禁制品の薬なんかも集めてる、な〜んて話じゃインパクトが薄いな」


 どうやらヤオは、商会だけじゃなく趣味までも幅広く手を広げているらしい。

 薬か…そんなもの集めて何になるんだろうか?

 …考えてもしょうがない。

 もう彼女を問い詰めるしかないか。


『…ヤオが魔女の確率は?』


「99.9%、ほぼ間違いないでしょう」


 そっか…



 

 カチャン


 彼女がカップを皿に置く音が響く。


「それで…キミはそれを私に告げてどうするつもりだい?

まさか、脅してお金を取ろうなんてつまらない事は言わないだろう?」


 香り立つ茶葉の香り、彼女がニコニコしながら持ってきた品だ。


「…もちろん」


「では聞こうじゃないか」


 彼女は肘を立てて手を組むと、その上に顎を乗せた。

 いつもなら、あざとさを少し感じていたかもしれない。

 でも今の彼女が浮かべる貼り付けた様な笑み、その向こうから漏れ出る冷たさはこちらの背筋を凍らすほど。

 ゴクンと嚥下を一回挟み、


「俺は、魔女を斬る旅をしています。

1人目は、竜王祭初代王者魔女ステラ」


「へぇ〜、結局キミがあのダンだったんだね」


 白々しくも答える彼女。

 こちらが気付ける様な反応はしてくれない。


「そしてこの街へも同じ目的で来ました。

…強欲の魔女ヤオを探しに」


 ピクンと彼女の指が跳ねる。

 そこでようやく、素の彼女の反応が見えた。


「強欲の魔女ねぇ…誰がそんな酷い呼び方してるんだい?

確かに私はお金が大好きだけども」


「数百年前、勇者によって魔王が討たれた際に分裂した魂。

それが人に取り憑き、強欲の魔女を生み出した」


「………」


 そうして彼女と静かに目を合わせる。

 その碧眼はこちらを捉えて離さない。

 

 相手は海千山千の商人、隙を見せたら一瞬で喰われるだろう。

 そう自分によく言い聞かせる。


「……ふぅ、確かに私は強欲の魔女だ」


 長い沈黙、それに彼女は絶えきれなかったのだろうか。

 あっさりとその秘密が開示される。

 

「それで?キミは何を望む」


「…え?」


「拳サイズのダイヤモンドでも、王族しか着ることが許されない絹でも、国を傾けるほどの美女でも用意しよう。

カルナーク商会なら、キミの欲望…全てが望むままだ。

…私はこんなところで死ぬ気はないよ」


 これが…彼女の交渉か。

 欲しいモノ…正直今はない。

 強いていうなら魔女を倒すことと、祭りなんかのささやかな楽しみぐらいだ。

 別に贅沢なんて、それより優先度が低いものでしかない。


「まっ、こんなもので諦めてくれるとは思ってなかったさ。

ただ言ってみただけ」


 俺が無言で居続け、彼女はそれをNoと解釈したらしい。

 分からないとジェスチャーで言う様にしながら、左右に首を振る。

 

 そうして彼女…強欲の魔女ヤオは静かに椅子を引き、立ち上がる。




「今までもそうだ。

私は、私の障害となるものは全て排除してきた」



「それが強引だと憎まれ、蔑まされようとも」



「キミと過ごした時間はとても心地の良いものだった」



「だから…とても残念だよ。

キミが私からモノを奪うなら…もう私の敵だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ