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第6奏 パート2:雷鳴の中で、ふたりがみたもの(第3話)

気づけば、翼くんと出会ってからもう1週間が経っていた。


あの日、僕たちは握手を交わしたあと、そのまま互いのSNSを交換した。


翼くんの投稿は、趣味全開のバイクや友人たちと写っている写真が多い。


海沿いの道を流した日の1枚や、夜の高架下で撮った愛車の横顔なんかは、どれも彼らしい危うさと格好よさがあった。


けれど、その中に時々、妙に場違いなくらい可愛いキャラクターのキーホルダーやぬいぐるみが映り込んでいて、思わず笑ってしまった。


ヘルメットの隅に、小さな丸いマスコットがぶら下がっていた時は、さすがに二度見したくらいだ。


そして、それ以上に意外だったのは――


翼くんが思っていたよりずっと“かまってちゃん”だったことだ。


暇さえあれば、僕に連絡を送ってくる。



「湊くん、今日さ……」



「これ見てよ!! 江ノ島までふかしてたらさ……」



「湊くん、次のGSにはいつ来る?今度は負けないよ♪」



そんなメッセージが、気づけば何件も溜まっている。


だから最近の僕は、休み時間になるたびスマホを取り出して、少しずつ返信していた。


すると――



「湊くんってさぁ、最近やたらスマホいじってるけど、どうかしたの?」



「それ、俺も思った。湊にしては珍しいよな」



学食で4人でランチを食べていると、不意に西園寺と陸が身を乗り出してきた。



「べ、別に大したことじゃないよ。ちょっと、かまってちゃんの友達がさ……ははは」



半分本音みたいな言い訳をしながらスマホをポケットへしまいかけると、向かいに座っていた笠原さんが、面白そうに目を細めた。



「あら。もしかして湊くん……女の子のお友達でもできたのかな?」


その瞬間、ガタン、と鈍い音がした。


見ると、西園寺が勢いよく机に膝をぶつけている。



「ちょっ……湊!? 親友の俺に内緒でどこの美女と知り合ってるんだよ!」



「そ、そうよ! 誰なの、その子!? 西女? それとも、聖ローズ女学院!?」



妙に具体的な学校名まで飛び出してきて、僕は思わず目を丸くする。



「2人とも落ち着いてって。だから違うってば」


慌てて両手を前に出して宥めると、笠原さんはくすっと笑った。



「でも、湊くんがそんなふうに休み時間のたびに返信してるの、ちょっと珍しいかも。……ふふ、結菜ちゃんの反応も含めてね」



「透花っ……!」



西園寺が頬を赤くして睨み返す。


どうやら完全に面白がられているらしい。


僕があらぬ疑いをどう誤魔化そうか困っていると、ポケットへしまいかけたスマホから、不意にノゾミの声が響いた。



「それに関しては、私から説明させていただきますね♪ 陸に、結菜ちゃん♪」









♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎









「……って感じで、1週間前に出会ったんだよ」



「なんだよ〜、イケメンのほうかよ」



「もう……透花が変なこと言うから、びっくりしたじゃない……」



落胆する陸と、あからさまに安堵した様子の西園寺。


その温度差の意味はよく分からなかったけれど、とりあえず変な誤解が解けたことに、僕はほっと息をついた。


その時だった。


左手の中で、スマホが小さく震える。


噂をすれば何とやら、だ。


3人の視線が、自然と僕の手元へ集まる。


4人で画面を覗き込むと、翼くんから届いたメッセージには、こうあった。



**「湊くん! 今日の18:00からGS新宿店に集合!! 野鳥狩りしようぜ」**



野鳥狩り――


その文面を見た3人は、意味が分からないのか顔を見合わせて首を傾げていた。


けれど、ノゾミだけはすぐに察したらしく、くすっと楽しそうに笑う。



「翼さんは相変わらず、マイペースでユーモアのある人だね、湊♪」



「……まったくだよ」



たぶん、またあの時みたいにシューティングで勝負しよう、って意味なんだろう。


雑で、強引で、でもどこか楽しそうな誘い方が、いかにも翼くんらしかった。


その文面を見つめているうちに、胸のどこかが少しだけ軽く跳ねる。


次は、どんな顔で僕のことを待っているんだろう。




**そう思った自分に気づいて、なんだか胸の奥が少しだけくすぐったくなった。**

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