第5奏パート6 後編:終わらない夏を、君と一夜ぶん盗む。
サブタイトル:下弦の月 — 強敵(親友)の約束〜Waning Moon〜
花火大会は、無事に幕を閉じた。
さっきはゆっくり見ることができなかった、出店の並ぶ通りへと足を向ける。
お面屋。
ふわふわの綿飴。
カラフルなかき氷に、チョコレートがたっぷりかかったバナナチョコ。
こんなふうに笑って、はしゃいで、誰かと並んで夜店を歩くのは
――いつぶりだろう。
そう思うくらい、僕は今この「当たり前の夏」を全身で味わっていた。
「なあ、みんな!! これで勝負しね!?」
陸が少年みたいな顔で、あたりを見回しながら声を上げる。
彼が指さした先には「レイザーシューティング」と書かれた看板が揺れていた。
XR空間内に浮かぶ的を、光線銃で撃ち抜いて得点を競う的当て。
マーウィンの簡易版みたいなシステムで、店内に設置されたセンサーと連動しているらしい。
だから――ノゾミも参加できる。
「せっかくだし、みんなで勝負しませんか?」
ノゾミの一言で、一気に場が盛り上がる。
「いやでもさ、ノゾミちゃんが一番有利じゃね!? AIだし」
陸のもっともなツッコミに、西園寺がすかさず反論する。
「ちょっと待ってよ。
それ言うなら、普段こういうゲームに慣れてる男子の方が有利でしょ?
女子にはハンデちょうだい!たとえばさ、最後に取ったポイントを倍にするとか。
ねえ、透花?」
笠原さんは少し頬を赤くしながら、こくりと頷く。
「じゃあいいぜ、委員長。ただし負けたら罰ゲーム付きな。どうだ?」
「上等よ! 罰ゲームは“告白”にしましょう。
最下位の人は今までの人生で一番恥ずかしかったことをここで告白
――泣いても知らないからね?」
どこか悪巧みをしているときの、あの西園寺の笑顔。
僕にはそれがどうしても「フラグ」にしか見えなくて、ひとりで笑いを堪えていたら、隣のノゾミに不思議そうな顔をされた。
結果は――
1位:ノゾミ
2位:僕
3位:笠原さん
4位:陸
5位:西園寺
……やっぱり、こうなる気がしてた。
「ご、ごめんね、結菜ちゃん。最後に真ん中の高得点、当てちゃって……」
申し訳なさそうにしている笠原さんの隣で「ぐぬぬぬ」と頭を抱えてうずくまる西園寺。
「委員長〜、ドンマイ♪ まあ、委員長の人生で一番恥ずかしい話なんて、どーせおねしょしたとかだろ?」
陸の軽口に、西園寺の右ストレートが綺麗に決まる。
「ぐはっ!!」
脇腹を押さえて吹っ飛ぶ陸。
僕たちは、涙が出るほど笑ってしまった。
そんな中――
ふと、視界の端に、ひとつの屋台が入ってきた。
「……露天商?」
「痛ててて……」と脇腹をさすりながら立ち上がった陸が、僕の視線の先に気づく。
「湊、どこ行くんだ?」
「ちょっと……あっち、見てもいい?」
そう言って歩み寄った先には、所狭しとアクセサリーや小物が並べられた小さな露店があった。
そのデザインや色合いに、後ろからついてきた西園寺たちも思わず見入っていると――
「やあやあ、これはこれは。可愛らしいお客さんたちだね。何か目に留まる品はあったかい?」
どこか妖艶な声色で、キセルを咥えた女店主が笑いかけてくる。
ふわりと漂う甘い煙草の香りに、僕たちは思わず顔をしかめた。
ノゾミも含め全員が「う〜〜〜ん」と答えに迷っているときだった。
――そこに、ひときわ異彩を放つペンダントがあった。
僕は、気づけばそれを手に取っていた。
「ふふふ。これを手に取るなんて……お兄さん、なかなか目の付け所がいいね」
女店主がキセルを口から外し、ふうっと紫煙を吐き出す。
甘い香りを含んだ煙が、僕たちの周りをゆっくりと取り巻いていく。
「ごほっ、ごほっ……!」
咳き込む僕たちを見て女店主は「これは失礼」と上機嫌そうに笑った。
そのとき一瞬だけ、彼女の瞳が西園寺のカラコンとも違う、桃色とも紅色とも言えない、不思議な色に見えたのは
――きっと、僕だけだろう。
「どの品もとても素敵ですが、この宝石はそんなにも高価なものなんですか?」
キセルの煙が苦手なのか、口元を浴衣の袖で押さえながら、笠原さんが問いかけた。
「ええ。これはね、うちの祖父、そのまた祖父が、とある豪族から引き取った大変貴重なペンダントさ。
遥か昔から“家宝”として祀られていた、“契りの証”らしいよ」
「“らしい”ってどういう意味ですか?」
西園寺が、食い入るように身を乗り出す。
「何でも、幕末の頃さ。大政奉還の混乱で神社仏閣が次々に廃されてね、
そのときに祀られていた神社も焼かれてしまったんだと。その際に、貴重な文献もほとんど消失した。
当時の巫女頭が機転を利かせてね。
せめてこのペンダントと、まだ幼い次代当主だけは逃して
――そのあとは時代の波とともに、この品と“口伝”だけが残った、ってわけさ」
「……っ」
ごくり、と喉が鳴る音が、自分でもはっきり分かった。
女店主は、さらにいくつかの“昔話”を続けた。
気づけば僕たちは、誰も口を挟めないほどにその話へ引き込まれていた。
あの陸でさえ「うん」「うん」と真剣に頷きながら聴き入ってしまうほどに。
改めてペンダントを指先で撫でると、他人事とは思えない不思議な親近感が湧きあがって、
どうしようもなく欲しくなった。
「これ、ください。なんだか……僕に必要な気がしたというか。きっと大事なものだと思うので」
「もちろん。これは“君に”出会うまで、ずっと――いや、きっと“悠久”の刻を眠っていたからね」
「それって、どういう意味ですか?」
不思議そうに首をかしげるノゾミに、女店主は静かに微笑む。
「人と人の巡り合わせに“偶然”がないように、“人”と“物”の間にもまた、“縁”ってものがあるのさ。
君たちはよく、自分が選んで手に取ったって“勘違い”しているけど、本当は違う。
“物”が“人”を、“主”として選んでいる――ってことを、覚えておくといい」
巡り合わせ、か。
確かに、このメンバーと今日この日を一緒に過ごしていること自体が、ひとつの「巡り合わせ」だ。
僕の誕生日の日にノゾミと出会ったこと。
その会話を、偶然西園寺が聞いていたこと。
陸が退院して、笠原さんのための“作戦”を立てたこと。
そしてあの日の約束が、こうして花火大会へとつながったこと。
全部がくるくると巡り巡って、今ここにある。
そんなことをぼんやり考えていると、女店主は、ぱっと両手の指を広げてみせた。
「ちなみに、お値段はこれくらい。払えるかい? 私も生活があるんでね」
「……10万!?」
一気に現実へ連れ戻される数字に、陸が苦笑いを浮かべる。
正直、僕も苦笑いするしかなかった。
先日、秋葉原で“アレ”を購入したばかりで、僕の財布事情はほぼ壊滅状態。
さすがに今回は諦めるしかないと肩を落としかけた、
その瞬間――
「あのっ!! 私が払います!! 電子マネーでも大丈夫ですか? 仮想通貨でもお支払いできますので、それ、譲ってください!!」
女店主は「毎度あり」と笑い、カウンターの下から決済端末を取り出す。
ノゾミがその端末にそっと触れると、聞き慣れない決済音が鳴り響き、僕たちは思わず目を見開いた。
「ノゾミちゃん、お金あるの!!? えっ、第3世代って、そんなことまでできるの!?」
驚きのあまり、さっきまで眺めていた水晶を落としそうになる西園寺。
それを慌てて笠原さんが支える。
「はい。私、OM社からマーウィンの広告宣伝費をいただいていて、
その一部を株や仮想通貨で運用しているんです。“これ”くらいなら手元にありますよ♪」
ピースサインと一緒に見せられた残高の“0”の数に、僕以外のみんなが絶句した。
さすがの僕も、具体的な額までは把握していなかったから、ほんの少しだけ背筋が冷たくなった。
「お前もう、ノゾミちゃんと結婚して養ってもらえよ!!」
陸の冗談に、場の空気が一気に和らぐ。
女店主さんから受け取ったペンダントを、僕は首元にそっとかけてみた。
長さはちょうどよく、ペンダントトップが胸の真ん中あたりに落ち着く。
手で持ったときに感じていた“ずっしり感”が、首にかけると不思議と消えていた。
まるで羽根みたいに軽い。
それどころか、心なしかさっきよりも、石の輝きが増しているようにも見える。
去り際に、女店主がぽつりと呟いた。
「物が主を見つけるとね、そのもの本来の“価値”を取り戻すのさ。
……君も、このペンダントに恥じない男になりなさい」
その言葉が、胸のどこか深いところに、すっと刺さった。
僕自身にも、このネックレスに負けないくらいの“価値”と“輝き”があると言われたようで
――ふと、嬉しくなる。
そんな僕の顔を見て、ノゾミが少しだけ肩をすくめた。
「湊……みんなの前で勝手なことしちゃって、ごめんね。でもね、これは……その……“お礼”なの。
こんな私を普通の女の子みたいに接してくれて……
それに、私からの“誕生日プレゼント”。ちょっと遅くなっちゃったけど。
あの時の私はまだ何も知らなかったから。だからこれは――
“これからもよろしく”って意味を込めて。
……私から渡すからこそ、意味があるって、店主さんの話を聞いていて思ったから」
「……ありがとう。約束するよ。ずっと、大切にする」
そのときのノゾミの笑顔は、今でもはっきり覚えている。
えへへっと照れくさそうに、右手で口元を隠しながら笑うノゾミは――
誰よりも人間くさいのに、どこか幻みたいな儚さと朧げさが混ざっていて。
だから余計に、“いつか消えてしまいそうで怖い”と、ほんの少しだけ思ってしまった。
そのとき――
「きゃっ!」
僕のすぐ後ろで、短い悲鳴が上がった。
振り向くと、そこには下駄の鼻緒が切れて、足首を押さえてしゃがみ込んでいる西園寺がいた。
「痛たたた〜……。慣れない下駄で歩いてたから、紐切れちゃったみたい。でも、大丈夫、大丈夫……」
笑顔でそう言うけれど、立ち上がろうとした瞬間、顔がわずかに歪んだのを僕は見逃さなかった。
きっと大丈夫じゃない。
――そのとき、母さんの言葉を思い出す。
「足、見せて」
僕は戸惑う西園寺の足をそっと持ち上げて、巾着袋から“カットバン”と“五円玉”を取り出す。
鼻緒の根元に五円玉を当て、結び直す。
よく見ると指の間が赤く皮が擦り剥けていたのでカットバンも渡す。
「……ありがとう」
まだ動揺が残る西園寺は俯いたまま、消え入りそうな声でそう言った。
さっきのことを思い出しているのか、頬はまだ、カラコンの色みたいに桃紅色に染まっている。
何だかこっちまで照れくさくなってしまった僕が黙り込むと、西園寺もまた黙り込んでしまった。
そんな二人の沈黙を、真っ先に察したのは笠原さんだった。
「結菜ちゃん、大丈夫? ちょっと足、挫いちゃってるみたいだから……湊くん。結菜ちゃん、おんぶしてあげてくれない?」
さすがの西園寺も
「ちょ、ちょっと待って!? 大丈夫……じゃないけど、おんぶはその……重いし悪いし……って、何言っているの私!! 重くないから、おんぶも大丈夫だから〜〜〜!!」
一人でテンパって、わけの分からないことを口走っていた。
あまりの挙動不審っぷりに、つい笑ってしまうと
「笑わないでよーーーー!」
と半べそをかきそうな声で怒られてしまう。
「ごめん、ごめん。ほら――」
僕は笑いを飲み込んで、そっと右手を差し出した。
「歩きづらいでしょ。痛みが引くまでは、手を貸すから」
西園寺の手をそっと包むと、その手は女の子特有の小ささと柔らかさで、握る力を間違えたら簡単に壊れてしまいそうな繊細さがあった。
「委員長と湊、なんだかんだ言っていい感じじゃん♪」
「うん。結菜ちゃん、素直な子なんだけどさ。湊くんの前だと、変に力んじゃうんだよね」
後ろから聞こえてくる陸と笠原さんの会話を聞いていると、どうやらさっき2人で買い出しに行っていたときに、何か“作戦会議”をしていたらしい。
――でもね、陸。
透花さんがどんな目であなたを見ているか、気づいてる?
AIである私が言うのも変かもしれないけれど。
女の子としての私は、どこかもどかしさを感じてしまうんだよ。
貴方の瞳の奥に映っているのが誰なのか
――早く、その事実に気づいてあげてね。
花火大会が終わり、僕たちは駅に向かって歩き出す。
楽しいものはいつだって一瞬で、終わりが近づくと、どうしても少しだけ寂しさが顔を出す。
「休み明けテスト、だるいよな〜」
「頭髪服装検査って、正直意味あるかな……」
「球技大会と文化祭って、何月だっけ?」
それぞれが夏休み後の2学期に対する愚痴をこぼす姿も、なんだかんだで愛おしい。
「なあなあ。まだ帰るの、勿体なくね? 16歳の青春はもっと、こう――パーーッとしたことやろうぜ! なあ、湊?」
「いきなり“パーーッと”って言われてもさ……」
陸の無茶振りに頭を抱えていると、僕の左手を握る西園寺の手に、ふっと力がこもる。
「花火。コンビニで買って、そこの土手でやるのはどう? 湊くん。私、線香花火やりたいな」
「さすが委員長! 話分かってるじゃん♪ 湊、ロケット花火飛ばそうぜ! 透花も、それでいい?」
笠原さんは、小さく微笑んで頷いた。
陸とはしゃぐ二人を見ていると、二人の距離も、今日一日でちゃんと縮まったのが分かって、僕はほっとする。
幸い、コンビニはすぐ近くにあった。
僕たちは手持ち花火と飲み物、簡単なお菓子を買い込む。
近所の住民に通報されたり、AIモニターに感知されないように、ノゾミは周囲にさりげない感知フィールドを展開した。
「数分だけ待っててくださいね。お色直し、してきますから」
そう言って、一度電脳空間へ戻っていくノゾミ。
後から知ったことだが、さっきの会場投影やフィールド維持には、かなりの負荷がかかっていたらしい。
ノゾミは「アップデートしたから大丈夫」と笑っていたけれど、現時点の端末容量やエネルギー消費は、僕には想像できない領域に達していた。
そのことをまだ知らない僕に西園寺が
「女の子にはね、女の子なりの“お色直し時間”や色々な事情があるのよ♪
分かってないな〜、湊くん」
少し呆れたように笑いながら僕の浴衣の袖をくいっと引っ張る。
「ねぇ…一緒に線香花火しよ…」
その丸く大きな瞳がやや上目遣いで僕を見てくる。
「…わ、分かった」
買ってきた花火の中から、彼女は迷わず線香花火を取り出し、僕に火をつけるよう目で合図した。
かちり、とライターの火がつく。
「……せーの」
2人並んで火を移すと、線香花火は
ぱち、ぱち、ぱち……
と小さく弾けながら、静かに灯りを咲かせる。
そのささやかな光を見つめていると、さっきまでの喧騒が少しずつ遠のいていく。
夜の帷がそっと降りてきて、僕たちだけを包んでいるみたいだった。
さっきまでの気まずい沈黙とは違う。
ここにあるのは、どこか懐かしくて、やわらかい静けさ。
隣で線香花火を見つめる西園寺の横顔は、さっきまでの賑やかさが嘘みたいに穏やかで。
僕は、この時――初めて、本当の意味で、西園寺に見惚れていたと思う。
髪を耳にかける仕草。
吐息のリズム。
花火の光に照らされる睫毛の影。
全部が、胸の奥をくすぐってくる。
そんな僕の視線に気づいたのか、西園寺がふっと視線を横に滑らせた。
「……私の顔に、何かついてる? ダメだよ。あんまり女の子の顔をじろじろ見るの。
男の子には分からない悩みがいっぱいあるんだからね?」
動揺して、何か誤魔化そうとしたけれど、うまく言葉が出てこなかった。
だから僕は、少しだけ深呼吸をして、素直な気持ちを口にする。
「……可愛いと思ったんだ。線香花火を見つめてる、西園寺がさ」
告白みたいな、その一言に、西園寺の肩がピクリと震える。
「私ね、線香花火が大好きなんだ。
この、静かに燃えて、最後にちいさく落ちる瞬間を見ているとね。昔の懐かしい気持ちに戻れるから……。
……って、変なこと言っちゃったね、私。気にしないで」
一瞬だけ、西園寺の瞳の奥がふっと揺れた。
それは、僕が抱えている“痛み”とどこか似ているような、そんな影だった。
――だから僕は、もっともっと西園寺のことを知りたいと思った。
もう一度、さっきみたいにちゃんと手を繋ぎたいとも思った。
そのとき、巾着の中に入れていた携帯がぶるるっと震いた。
ノゾミが、「お待たせしました」と花火を片手に姿を現す。
ちょうど線香花火が落ちたタイミングだったので、新しい花火を取りに僕がその場を離れると、
後ろの方では――
穏やかな笑い声が、2つ、そっと重なっていた。
〜ノゾミ視点〜
私がこちらに戻ってきたとき、結菜ちゃんは、真っ直ぐな瞳で私を見ていた。
「ねえ、ノゾミちゃん。私たちが初めて会った日、覚えてる?
私ね、あの日のこと、すごく覚えてるよ。
だって――ノゾミちゃんったら、いきなり宣戦布告してくるんだもん」
結菜ちゃんは、くすっと笑ってから、続ける。
「でもね、その気持ち。今なら、痛いほど分かる。だから、私も言うね」
さっき、ダストボックスに“破棄した”はずのあの感情が、再び胸の奥で顔を出す気がして、私は思わず身構えた。
きゅっと目を閉じて、覚悟する。
……でも、何も起きなかった。
そっと目を開けると、そこには、どこまでもまっすぐな桃紅色の瞳をした結菜ちゃんが立っていた。
「ノゾミちゃん。私、湊くんが大好き。
リアルとかAIとか、正直どうでもいい。
だから――私も、ノゾミちゃんに負けない“いい女”になるから。恨みっこなしの、ガチンコ勝負しよう?」
差し出されたその手に、私は力いっぱい自分の手を重ねる。
たとえ今ここで重ねているのが“データの指”だとしても、私たちの間にあるこの感覚だけは、本物だと信じられた。
「もちろん。受けて立ちますよ、結菜ちゃん♪ えへへへ♡」
この日、私のメモリには、新しいフォルダがひとつ作られた。
結菜ちゃんが一緒に撮ってくれた一枚の写メ。
そこにつけられたタイトルは――
『強敵(親友)』
ピースサインをしながら撮った、ちょっとぶれてる自撮り写真。
でも、それは決して色褪せることのない、“約束された未来”につながる一片になる。
私はそう信じていた。
少なくとも――
この頃の5人は、全員、心からそう思っていたよね。
湊――。




