十一話
初心者用ダンジョンの他にいくつかダンジョンが存在する、教材として複数のものがありこれを潜りどれだけの階層までいけたかによって端末に記録され成績に加算される。俺や巻き込まれたルナやレイラは多少無茶こそしたが点数としては恐らく常識的な範囲に収まっているだろう、そんなな中俺はとある部活の先輩から呼び出された、最近何かとこういったことに縁があるがフラグというやつだろうか?
ラウネン・シックザール、占い同好会の部長で部員は現在部長ぐらいしかないはずだが幽霊部員が籍をおいていたりするせいか存続を許されているようである。不思議系クールガールな上級生、でヒロインの一人である。攻略自体は難しくないのだが同好会への入会や婚約云々などルートとして結構行動が制限されるためRTAではあまり推奨されていないキャラだった。無論この世界においてはそれなりに家柄のいいお嬢様でちょっと変わった性格をされている、程度の認識だ。
「……ようこそ、ごめんなさいね。わざわざ呼び出して」
空き教室を改修したとおぼわしきおどろおどろしい雰囲気のある黒い暖簾がかかった扉を開け部室を入るといかにも魔女といった黒装束に魔女帽子、一般的にエナンと呼ばれるそれを被った女性が佇んでいた。
「シックザール先輩、でしたっけ。どのようなご要件で?」
「ええ、実は貴方ともう一人の方の予知夢を見まして……」
「おまたせしてすみません、って御仏君?」
先輩の言葉とほぼ同時に現れたのは未来だった。こんなイベントがあった気がする。ただ二人というのはヒロインと二人であって俺達のことではなかった気がするが……
「来ましたね、二人とも。改めてようこそ占い研究会へ」
「それで予知夢というのは?」
「ああそうでしたね、ええ赤き不死鳥と黒き鎧……その2つが揃いし時大いなる闇が復活する、と」
予知夢告知イベントもまた定期的に発生するものの一つだ、あくまでルートに入ればだが。よってこんんなタイミングでしかも俺がこの場にいるということ自体がおかしいんだが既に正史から外れはじめているということだろう、それは既に覚悟の上だが。
「それが僕達、だと?御仏君と僕にそんな壮大なフレーズが当てはまるとは思えませんけど」
「いいえ、私の占いは当たります。であればこそ二人に直接伝えたかったのです、ダンジョンに潜む大いなる存在のことを」
大いなる存在、というのは所謂中ボスのことだ。ブラッドリッチーと呼ばれるそれは各ダンジョンの10の位の階層にいて次の階層に進もうとするユーザーの前に立ち塞がるというわけだ。これが中々の強敵でやり方さえ知っていればどうということもないが、序盤は聖なる属性の魔法を使えずアイテム便りだったり犠牲覚悟のゴリ押しをするしかないと言うほどだ。そしてそれが俺の第一の死亡フラグである、ゲームではパーティーの人数は三人程度と推奨されていたがそこは合同パーティーという事で倍の六人ぐらいまでならいける。未来と茜を加えての五人、人数は一人足りないが戦力的には問題ないだろう。ただパーティーに誘ってノッてくれるかは微妙なラインだがそこは友人として頼み込めばいけるだろう。
「ダンジョンボス、のことですか?それは確かに強敵ですが……」
「いやあははは、俺達で勝てますかねぇ?」
「私の占いによれば勝ちます、その結果しだいで大きく分岐するでしょう。特に御仏さん、貴方には死相が見えます、どうか気をつけて」
し、死亡フラグはまだ立っているのか~!?いや落ち着け俺、クールになろう。彼女の占いは確かに的中率が高いが予知能力レベルではない、変えることだって不可能ではない。ましてやこんなところで終わるわけにはいかないのだ。
「とーぜんです、この御仏真也美人から心配されて死ぬ程間抜けじゃあありませんからねっ」
「ぼ、僕も簡単に死んだりはしないですよ。皆と一緒に生き残って冒険者になるんですから」
俺のは見栄っ張りだが未来はやはりどこか信頼度が高いように聞こえてしまうのはやはり身内贔屓というやつだろうか?俺としては是非頑張って欲しいし俺も頑張るから強くなって欲しい。ただここで戦うであろうボスキャラをうまくとどめを刺すように誘導できるかが最大の問題だがそれは努力次第というものだろう。クエスト参加にあたってはルナやレイラの同意も必要になるわけだしな。
「ふふ、では頑張ってください。私としては運命を乗り越えてくれる形が一番望ましいので。後はお二人が向かえば運命の赴くままに自体は動くでしょう」
先輩に見送られて部室を後にする俺と未来であったが、二人は当然のように何とも言えない表情をしていた。どうしよう、といったところが本音である。言われるがままに攻略に挑んでいいものかということだ、大見得を切ってしまった手前逃げるというのは情けないが命あっての物種というものというものもある。
「御仏君、君はこの依頼というかクエスト……受けるつもりはあるかい?」
「真也でいいぜ、それよか未来こそどうなんだ、あの先輩相当素っ頓狂な事を言ってたけど」
「僕は受けるべきだと思う、このまま受けないで逃げるなんて何か違う気がするし、只今の僕達で階層のボスを倒せるかどうか」
実のところブラッドリッチーはそれほどの強敵ではない、序盤にしては強敵というだけだ。ただ戦闘経験やスキルの少ない俺達では不安、というのは確かにある。いざとなればクラヤミ変化も躊躇なく使うが出来れば共同での撃破で経験値を得てレベルアップにつなげたいところである、ちなみにどうやら経験値はモンスターを倒した時に発生する粒子を体に取り込むことで得るということになっている。もっとも大抵の場合目には見えなくて見えるほど強力なモンスターということになるようだが。
「男は度胸なんでもやってみるもんだろ、いや女もか?俺とお前と皆の力があれば乗り越えられない障害なんてないさ」
「あはは、ほんと不思議な人だね真也君は。じゃあ、僕も茜を誘って見る。真也君も誘える人がいるなら誘ってみてね」
「おうよ、まかせておけ!」
◆◇◆◇◆
二人が去ったあとの部室で一人ラウネンは占いの続きをしていた、今まで占った未来によれば一人の青年の死は避けられずそれによる覚醒が起きるはず、それが最近になって急に変わり始めたのだ。
「彼が、御仏真也が運命を変える……?明日野未来ではなく、何故彼が。大いなる黒き力、それを得て死の運命を回避するというならそれは、きっとさらなる災いを呼ぶことになる。見届ける必要がありますね」
彼女の占いは当たりすぎるのである、未来視に近いといってもいい、それ故に彼女は孤独の道を選び時折助言のようなことをしたりして部室を一人であってもまた占いで恩恵を得た客を幽霊部員になってもらうことで維持をしていた。一つの歴史ではここに明日野未来が加わることで一人ではなくなっていくのだが……この世界線においてはそれとも違う、新しい歴史が生まれようとしているとは彼女自身も気づいていないのであった。




