十話
ミッションを終えて数日後鍵について調べてみようかと図書館に行こうかと思っていたところに学園の校内放送で呼び出された、しかも学園長直々に。これはただ事でないと学園長室に向かうとそこには早速というべきなのか偶々立ち寄ったという同窓会に参加予定のOG、風波見涼風が来訪したのである。どうやら昨日の今日で様子を見に来たというわけではなさそうだが、学園長がその話題をだしてしまったが故に俺の興味を持ってのことだそうだ、本当にこの世界は俺の知識というものを次々とぶち壊していってくれる。現実なんてこんなものだろうが肝心なルナを救うという目的が果たせるが不安になってくるというものだ。さておき、風波見涼風という女性はもはや名前からして風属性に愛されているのでないはという程の風属性魔法使いの剣士である。
「ふーん貴方が御仏真也君?ズィズィーエ学園長が注目している割には平凡というかチャラいというか……普通ね」
「いやあ、ははは注目されているというかご迷惑をかけているだけですよ」
「でも、そうね……可能性を感じるわ。あなた一つ私のスキルを覚えて見る気はない?」
これは……もはや何から何まで違った流れだがスキル取得イベントということでいいのだろうか?
ゲームとは違いそう簡単にスキルというのは獲得できるものではないが、直に指導を受けられるだけでもラッキーというものだ。
「それは光栄ですが、俺のクラスはシーフでして戦士型の風波見さんのスキルを会得できるかどうか」
「あら、それなら心配いらないわよ?私が教えようと思っているスキルは後衛型のクラスでもなければ役に立つものよ?貴方はソロでも戦うそうだし、もっていて損はないわ」
「そうですね、そういうことなら」
彼女の言うことはゲーム中でも当てはまることだ。授業で覚えることも可能だが結構ランダムなところもあるためここで確実にゲットできるならしておきたいところだ。
「なら決まりね、あたしがいる間に貴方にスキルを叩き込んで上げる、”重落”をね」
数日程だが学園にとどまるらしい風波見さんとの訓練の約束を取り付けた俺は放課後暫くソロで活動すると二人に伝えた上で、学園長からは娘のことをよろしく頼むを再び念を押されて開放された。
◆◇◆◇◆
「このスキルは多くのスキルとの連携を前提としたもの、身をもって覚えてもらうわ、いいわね?」
「は、はいよろしくお願いします」
約束通り放課後から俺は指導を受けることとなった、レイラはバイトをしているしルナはルナで侍女見習いという名目で学園長の身の回りの世話をしているようだ。実の所を言えば何かフラグを折ってしまっているのではないかと気にしてしまうがそんなことよりもまずは一つでもスキルを物にして強くなり目的のために強くならねばならないのだ、ならないのだが。
「太刀筋が甘い!動きも遅い!」
右から左から上から下から模擬刀とはいえ彼女の容赦のない連撃が襲いかかる。こちらもシーフ向けの短めの木刀に魔力を通し何とか受け止めているがそれだけだ。ソロダンジョンクリアやルナやレイラとダンジョンに潜ったことを含めた経験は身になっている、少なくとも現時点での同級生の中では上とまではいかなくてもそれなりの実力はなければならない。クラヤミ変化はあくまで切り札でルナを救う為の物だし、そしてそれを纏う俺自身が強くならなければ宝の持ち腐れというものだ。とはいえそれを晒してしまったのは我ながらどうかしていたところではある、長い目で見れば誤魔化し辛くなっていくのでいずれ吐露する必要が出てくるだろう。流石に前世がどうの、とはいえないが。
「疾風!狼牙斬!」
「忍法!疾風斬!」
模擬刀が先に砕けてしまうのではないかと思うほどの魔力で模擬刀が緑色に発光し暴風のごとき一撃が襲いかかる。その一撃を辛うじていなしたはずだったが、模擬刀が弾き飛ばされて気がつくと首元に剣先がつきつけられていた。
「これで決まり、ね」
「いや、ははは……」
重落はスキルを連続して使用するためのスキルの一つだ、そしてそのいわばスキルとスキルとの間のラグを短くし連続して攻撃できるものので属性や名称は違えど多くの冒険者はこの手のスキルを身に着けていることが多い。メリットばかりではなく消費もそれなりにするしなんならそれに頼らずともという猛者もいるからだ。
「貴方にはこれからこの感覚を身をもって身につけてもらうわ、筋は悪くないけどやはりまだ一年ね」
「支援型より前衛型を目指す身としては助かります」
「あら、それはやっぱりソロでの階層踏破を目指しているからかしら?」
「い、いやあそこまでは。でもそのくらいの気持ちで望みたいですね」
階層踏破とはマップを隅々まで歩き回り配られた端末にそのデータを更新することである。大抵の場合既に踏破済みではあるのだがそれ自体に意味があることが多い。冒険者としてある種箔が付く行為と言えるからだ。ましてゲームでは階層踏破で隅々まで歩き回りアイテムを回収するのは当たり前の行為だったがこの世界では決してそんなことはなく命がけの危険な物としてあまり推奨されていないということが文献や授業でわかった。
「でもわたしの指導を受けるからには確実に物にしてもらうからね?覚悟しなさい?」
こういったことを一週間程繰り返した頃だろうか、ようやく俺は重落の取得に成功したのであった。実のところゲームとは違い流れ作業と行かないところが実に辛いところであった、そしてこの世界における上位の実力者の腕前というものを身をもって感じられたのは貴重な体験だった。この短期間でスキルを得られたのも大きい、この調子でうまく行けばいいのだが……
「また、何かあったら言いなさい。連絡先は登録しておいてあげるから。ま、わたしも世界中を飛び回っているからそう学園には来てあげられないけれどアドバイスぐらいならしてあげるわ」
「助かります、俺なんてまだまだ、ですから」
「当然よ、簡単に追いつかれたたらプロの名が廃るわ、せいぜい精進しなさい」
こうして俺はまた一つ縁を紡いだのであった。




