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悪の剣  作者: Dai


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番外編 その後

◼️最終話 「それぞれの人生」

政宗がいなくなってから、10年が経った。

街は変わり、そして人も変わった。

それでも——

皆はそれぞれの人生を歩んでいた。

カズマは営業トップの成績を収め、課長に昇進していた。

部下からの信頼も厚く、厳しさの中に優しさを持つ上司になっている。

ミサキは教師になった。

かつてSNSでのいじめに苦しんだ経験から、同じように傷つく子どもたちを救いたいと願った結果だった。

今は中学校で、生徒に向き合っている。

佐藤先生は教頭になっていた。

ミサキと同じ学校で、静かに学校全体を支えている。

リナは専業主婦として穏やかな日々を送っている。

SNSとは距離を置き、スマホは連絡と調べものだけに使う生活になっていた。

昔とは違い、もうスマホを長く見つめることはなかった。

マサトは飲食店を経営している。

あの頃と変わらない明るさで、店を切り盛りしていた。

そしてユウキは警察官になっていた。

柔道も剣道もトップクラス。

期待の新人として、街を守る仕事に就いている。

それは、かつて政宗が歩いていた道と同じものだった。

飲食店。

店内は、いつもより少しだけにぎやかだった。

「おせえよ、ユウキ!」

「ごめん、マサト。ちょっと忙しくてさ」

「俺が呼ばねえと全然来ねえだろ」

「そんなことないって」

マサトは笑う。

「子どもにもまた会わせろよ」

「そうだな。また今度、家族連れてくるよ」

その奥の席では、ミサキと佐藤先生が並んで座っていた。

「ユウキくんか。立派になったね」

「久しぶり!元気だった?」

「元気だよ」

「ミサキさんは仕事どう?」

「大変だけど、やりがいもあって楽しいよ」

「そっか」

「ユウキくんは?」

「やりがいしかないよ」

その言葉に、ミサキは少しだけ笑った。

「ユウキくんらしいね」

「ユウキ、あの時お前が言ってくれたこと覚えてるか?」

「あの時?」

「ああ。友達になろう、って言ってくれた時のことだよ」

「ああ……覚えてる。」

ユウキは照れ臭そうに言う。

「あの言葉のお陰で俺は今、こうしてお前と仲良くなれたし、前に向けるようになった。やり直したいって思えるようになったんだ。」

マサトはしみじみと話す。

「大げさだって。」

「大げさじゃねえよ!」

ユウキは、あの日のことを思い出した。

ーー回想

学校の帰り道、マサトたちに囲まれるユウキ。

「最近、ホームレスのおっさん見かけねえな。」

「最近、お前の面が気に食わねえんだよ。」

「やっちまえ!」

殴りかかる。

ユウキは避ける。

投げ飛ばす。

全員倒れる。

「……くそっ」

手が止まる。

「もうやめよう」

「は?」

「何でだよ。」

ユウキは黙って手を見た。

少しだけ迷って、

それから手を差し出した。


「友達になろう」


「は、何言ってんだよ!」

「なれるわけねえだろ!」

「俺は散々お前をいじめてきたんだ。」

「今さら……なんでだよ……。」

「過去は過去だよ。」

「友達になるのに理由なんていらない。」

「時期なんて関係ない。」

「俺なんかが友達になれるわけ……なっていいわけないだろ……。」

「なれるさ!あの時、一緒に子供を助けた仲だろ!」

「正直、俺一人じゃどうなってたか分からなかった。」

「マサトが来てくれた時、ホッとしたんだ。」

「あの時、マサトが来てくれたおかげで、俺とあの子は助かった。」

「ありがとう。」

マサトはどこか救われた気がした。

なぜか涙がこぼれ落ちる。

「マサトだから、また友達になりたいんだ。」

「マサト、友達になろう。」

そして、もう一度手を差し伸べる。

小さい頃、近所で一緒に遊んだ記憶が蘇る。

「ああ……。」

マサトは、ゆっくりその手を握った。

ーー

思い出から現実へ戻る。

マサトは小さく笑った。

「懐かしいなぁ。」

「ああ。」

そのとき、店のドアが開く。

「いらっしゃい!」

「マスター、いつもの」

「いつもありがとうございます、カズマさん!」

仕事終わりのカズマが、部下を連れて入ってきた。

「ここの料理、ほんとにうまいんだよ」

「ごちになります!」

「おう、遠慮すんな」

店は少しだけ賑やかになった。

そのとき、ユウキのスマホが鳴る。

「もしもし?」

妻からだった。

「え……それは大変だ。すぐ帰る」

「どうした?事件か?」

マサトが聞く。

「子どもが熱出したって。すぐ帰ってきてほしいって」

「悪いな、マサト。また今度ゆっくり話そう」

「おう、気をつけてな」

ユウキは席を立ち、店を出た。

外の空気は少し冷たく、けれどどこか優しかった。

ユウキは空を見上げる。

そして、小さく笑った。

「見てるか、政宗」

春の風が、街を静かに吹き抜ける。

この街には、もうあの日の弱い少年はいない。

それぞれが、それぞれの場所で誰かを守りながら生きている。

——その日常は、確かに続いていた。


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