番外編 白虎とボス
◼️第一話 「用心棒」
雷鳴が響いた。
次の瞬間、視界が真っ白に弾ける。
——気がつけば、倒れていた。
そこは見知らぬ庭だった。
黒いコートをまとった男の屋敷。 その庭のど真ん中に、白髪の男が一人、倒れている。
白い着物。 腰には刀。
「……ここはどこだ」
男がゆっくりと起き上がる。
その瞬間、数人の影が動いた。
「誰だ貴様」
「侵入者だ!」
前に出てきたのは、用心棒。 地下格闘技のチャンピオンだと噂される男だった。
白髪の男は、目を細める。
「貴様らが、答える側ではないのか?」
空気が変わる。
次の瞬間。
一閃。
音すら遅れて、影が崩れ落ちた。
一瞬の静寂。
そして、庭の奥から拍手が鳴る。
「素晴らしい」
黒いコートの男——ボスが、ゆっくりと歩いてくる。
「君、私の新しい用心棒にならないか?」
白髪の男は刀を下ろさないまま、ボスを見る。
「用心棒……?」
「最近ね。包帯だらけの侍のような男がうろついていてね」
ボスは続ける。
「全身火傷の痕を隠しているらしい。何度か邪魔されていてね」
白髪の男の目が、わずかに細くなる。
「火傷……侍……?」
(まさか……)
沈黙のあと、男は短く言った。
「いいだろう」
その口元に、わずかな笑み。
(こいつは利用できる)
こうして——白虎は、ボスの用心棒となった。
◼️最終話 「白スーツ」
「君は今日から私の用心棒だ」
黒いコートの男——ボスは、静かに言った。
「その前に、格好から整えよう」
「……格好?」
白虎は首をかしげる。
「スーツを買ってやる」
「スーツ……?なんだそれは」
ボスは少し笑った。
「現代の鎧みたいなものだと思えばいい」
そして二人はスーツ店へ向かった。
「黒で頼むよ」
店員が頷き、試着室へ案内する。
白虎は鏡の前で袖を通す。
「……ずいぶんと軽い鎧だな」
「気に入らないかい?」
ボスが聞く。
白虎は鏡の中の自分を見たまま、ぽつりと言った。
「黒は気に食わん」
店内の空気が一瞬止まる。
「いやいや、我々は黒で統一しているんだが……」
ボスが苦笑する。
白虎は振り向いた。
「白だ」
「……白?」
「白はいい」
静かに続ける。
「斬ったやつらの血に染まる」
「……」
「斬った分だけ、色がつく。自分だけの着物になる」
白虎はわずかに口元を歪めた。
「最高だろ?」
沈黙。
ボスは一拍置いて、肩をすくめる。
「……そうだな」




