第24話 奪われた金
朝。
橋の下。
ユウキは木刀を振っていた。
政宗は静かに見守る。
「いい振りになってきた。」
その一言に、ユウキは少しだけ笑う。
――
昼。
商店街。
一人の老人がベンチに座り、肩を落としていた。
手には空になった通帳。
「全部……なくなった……。」
「妻の手術代だったのに……。」
通りすがりの人々は足を止めるが、どうすることもできない。
ユウキが駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
老人は震える声で話し始めた。
「息子を名乗る電話があったんだ……。」
「会社の金をなくした……。」
「今日中に払わないと捕まるって……。」
「全部、振り込んでしまった……。」
「騙されたんだ……。」
涙が止まらない。
ユウキは拳を握る。
「そんな……。」
政宗は静かに老人を見る。
「悪だ。」
「金ではない。」
「人の心を奪う悪か。」
「おじいさん、警察へ行きましょう。」
老人は小さくうなずく。
政宗は静かに歩き出す。
「政宗?」
「金は戻せても、悪は残る。」
「悪を断ってくる。」
政宗は歩き出す。
ユウキは、その背中を静かに見送った。
――
夜。
古びた雑居ビル。
一室では男たちが札束を数えていた。
「今日も儲かったな。」
「年寄りは本当に騙しやすい。」
笑い声が響く。
その時。
コツ……
コツ……
扉が開く。
木刀を持った男が立っていた。
「悪を斬る。」
「誰だ!」
男たちが一斉に襲いかかる。
ドン!!
バキッ!!
一瞬だった。
全員が床へ倒れる。
最後の一人だけが震えていた。
「ま、待ってくれ!」
政宗は木刀を向ける。
「奪った金はどこだ。」
男は震えながら金庫を指さす。
「そこだ……!」
中には大量の現金。
封筒には被害者の名前が書かれていた。
政宗は男を見下ろす。
「誰の命令だ。」
男は顔を青ざめさせる。
「言えねぇ……。」
「言ったら消される。」
政宗は一歩近づく。
「答えろ。」
男は震えながら叫んだ。
「黒影社だ!」
「俺たちは金を集める役目なだけなんだ!」
「幹部の顔も知らねぇ!」
「名前も知らねぇ!」
「命令は全部、電話だけだ!」
「だが、白い虎の事なら聞いたことがある……。」
「黒影社最強と噂される男だ。」
「これ以上邪魔するなら、お前はその白い虎に殺されるぞ……。」
政宗は静かに目を閉じる。
「……白い虎。」
政宗はゆっくりと目を開く。
「……黒影社。」
男は力なくうなだれる。
「逆らえば終わりなんだ……。」
政宗は木刀を納めた。
「ならば、その終わりを俺が断つ。」
夜風が吹く。
黒影社という名だけが、静かに闇へ広がっていった。




