第23話 黒影社
朝。
橋の下。
立ち上がろうとして膝をつく。
壁に手をつく。
口元から血がこぼれる。
誰も見ていない。
政宗は小さく呟く。
「……もうそろそろか」
全身を焼いた火傷。
常人なら、とっくに命を落としていてもおかしくない。
それでも政宗は木刀を握り直した。
――
ユウキがやって来る。
「おはよう! 政宗!」
「今日も稽古よろしく!」
木刀がぶつかる。
カンッ!!
ユウキは何度も弾き飛ばされる。
「無理だよ!」
「どうせ僕なんか!」
その瞬間。
「ふざけるな!!」
政宗の怒声が響く。
ユウキが固まる。
「そんな覚悟で誰が守れる!」
「自分自身も!」
「大切な人も!」
政宗は息を切らす。
痛みに顔を歪めながらも言う。
「立て。」
「立つことをやめた人間に未来はない。」
――
修行が終わる。
ユウキが笑う。
「政宗って江戸時代でも特別に強かったの?」
「それとも同じくらい強い人がいたの?」
政宗は空を見上げる。
「……昔、俺と互角に渡り合った男がいた。」
ユウキは目を丸くする。
「えっ、本当に?」
「ああ」
政宗は静かに続けた。
「白虎という男だ。」
「幼き頃より共に剣を学び、何度も競い合った。」
「血は繋がっておらんが、兄弟のようなものだった。」
「へぇー!政宗と互角ってことは、めちゃくちゃ強いんだろ?」
「そうとうすごい人なんだね!」
そして笑いながら言った。
「この時代にいたら、頼もしい味方になってくれそう!」
政宗は少しだけ目を伏せる。
「……そうだな。」
「味方であればな。」
――
夜。
繁華街。
一人の少女が男たちに囲まれていた。
「借金は返してもらわないとな。」
「連れていけ。」
少女は泣きながら抵抗する。
「嫌です!」
「助けて!」
誰も止めない。
その時。
コツ……
コツ……
木刀を持った男が現れる。
「その娘を離せ。」
男たちが笑う。
「なんだ、このミイラ。」
「死にたいのか?」
政宗は木刀を構えた。
「悪を斬る。」
一瞬だった。
ドン!!
バキッ!!
男たちは次々と倒れていく。
最後の一人が震えながら叫ぶ。
「待て!」
「俺たちはただの下っ端だ!」
政宗の動きが止まる。
「誰の命令だ。」
男は震えながら口を開く。
「黒影社……。」
「俺たちは黒影社の命令で動いてるだけなんだ!」
政宗の目が細くなる。
「黒影社……。」
男は逃げるように続ける。
「逆らったら殺される!」
「俺たちだって!」
その瞬間。
パンッ!!
銃声が響く。
男の胸から血が噴き出した。
全員が振り向く。
ビルの屋上。
黒いコートの男。
帽子で顔は見えない。
男は静かに拳銃を下ろした。
「口の軽い駒は不要だ。」
政宗は屋上を見つめる。
黒コートの男は静かに笑う。
「久しいな……伊納政宗。」
「それとも、影虎、と呼ぶべきかな。」
その姿は闇へ消えた。
政宗の目がわずかに見開かれる。
「俺の名をなぜ知っている……。」
政宗は木刀を強く握りしめた。
「……黒影社。」
風が吹く。




