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悪の剣  作者: Dai


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番外編 侍と少年

◼️第六話「技名②」

女性 「キャー! 引ったくりー!」

政宗 「……相変わらずこの街は、治安が悪すぎる。」

少し呆れたように木刀を構える。

ユウキ 「ゴッサムシティかよ!」

政宗 「政宗流――木刀一閃!!」

ドンッ!!

引ったくり犯は勢いよく吹き飛んだ。

ユウキ 「あ。」

政宗 「あ。」

ユウキ 「いや、使ってんじゃん!」

「しかも"政宗流"まで付けてるし!」

政宗 「……これは違う。」

目をそらす政宗。

ユウキ 「何が違うんだよ!」

   「認めろよ〜!」

政宗は何も答えず、少しだけ歩く速度を速める。

その後を笑いながら追いかけるユウキであった。



◼️第七話「不審者」

朝。

体育館。

全校集会が開かれていた。

校長先生がマイクを持つ。

校長 「皆さんに大事なお知らせがあります。」

体育館が静まり返る。

校長 「本日、この学校周辺で不審者の目撃情報がありました。」

生徒たちがざわつく。

校長 「特徴は――」

「全身に包帯を巻き、黒いスーツを着用。」

「木刀を所持。」

「年齢は二十代後半から三十代くらい。」

「非常に危険と思われます。」

「見かけても絶対に近づかず、すぐ先生へ知らせてください。」

静まり返る体育館。

ユウキ 「……。」

リナ 「……。」

二人はゆっくり顔を上げる。

ユウキ 「絶対、政宗じゃん。」

リナ 「絶対、おじさんじゃん。」

佐藤先生 「静かに話を聞いてくれた人だ……」

放課後。

校門前。

黒いスーツ。

全身に包帯。

腰には木刀。

政宗が腕を組んで立っていた。

政宗 「遅い。」

女子生徒 「きゃああああっ!!」

男子生徒 「いたーーー!!」

「不審者だーーー!!」

一瞬で校門前は大騒ぎになった。

先生たちが駆けつける。

体育教師「君! その場から動くな!」

政宗 「?」

体育教師 「木刀を置きなさい!」

政宗 「断る。」

体育教師「断るな!」

    「警察を呼ぶぞ!」

そこへ佐藤先生が駆けつける。

佐藤先生 「……あ。」

政宗 「久しいな。」

佐藤先生 「その節はお世話になりました。」

政宗「気にするな。」

周囲の先生たち 「え?」

佐藤先生 「いや、この人は……その……。」

説明に困る佐藤先生。

そこへユウキが走ってくる。

ユウキ 「先生! 違うんです!」

体育教師 「ユウキ君! 危ない!」

ユウキ 「この人、俺の知り合いです!」

体育教師「……え?」

政宗 「迎えに来た。」

ユウキ 「だから来なくていいって!」

リナ 「おじさん、今日だけで学校中の有名人になったね。」

政宗 「有名人?」

ユウキ 「違う。不審者。」

政宗 「……そうか。」

政宗は少し考え、

「次からは見つからぬようにする。」

ユウキ 「そういう問題じゃない!」

リナ 「そこじゃないんだよ、おじさん。」

先生たちは最後まで固まったままだった。



◼️第八話「街に紛れる影」

朝。

ユウキの家の玄関前で、政宗は少しだけ立ち止まっていた。

黒いスーツ。

まだ慣れない感覚。

ユウキが後ろから言う。

「行けそう?」

政宗は短く答える。

「行くしかあるまい」

ユウキは少しだけ笑った。

街に出る。

その瞬間、空気が変わった。

人の数。

音の量。

速さ。

政宗は一歩遅れて歩く。

そのわずかなズレが、妙に目立つ。

駅前。

人の流れに飲まれそうになる。

スーツの男たちの中に混ざっても、政宗だけが“違う時間”を歩いているようだった。

ユウキが小さく言う。

「歩くスピード、合わせて」

政宗は少し間を置いてから頷く。

信号待ち。

車が流れる。

政宗はそれを見ている。

「鉄の馬か……」

小さく呟く。

ユウキは聞こえたが、何も突っ込まない。

歩道。

政宗は周囲を見る。

何人かはこちらを見ている。

だが誰も近づいては来ない。

「……妙だな」

「何が?」

「皆こちらを見るのに、誰も関わろうとせぬ」

ユウキは苦笑した。

「現代人だからね」

政宗の手が、ほんの少しだけ動く。

刀の癖。

だがそこには、何もない。

「気になる?」

ユウキが小さく聞く。

政宗は前を見たまま答える。

「……皆が無関心だな」

「それ、普通だよ」

ユウキは少しだけ笑う。

「むしろいいこと」

政宗はその言葉を、すぐには理解できなかった。

交差点。

人波の中で、一瞬だけ立ち止まる。

音が重なる。

政宗の中で、過去の戦場の記憶がわずかに揺れる。

だが、剣はない。

誰も死なない。

誰もこちらを殺そうとしない。

政宗は小さく息を吐く。

「……奇妙な世界だな」

ユウキは横で歩きながら言う。

「でも、生きてる世界だよ」

その言葉に、政宗は返事をしなかった。

駅前の雑踏を抜ける。

少しだけ静かな場所に出る。

そこで初めて、政宗は肩の力を抜いた。

「どうだった?」

ユウキが聞く。

政宗は少し間を置く。

「……戦より、疲れる」

ユウキは笑う。

「それ、現代あるある」

政宗は意味はわからないが、もう聞き返さなかった。

そして小さく言う。

「だが……悪くはない」

ユウキはその言葉を聞いて、少しだけ安心したように歩き出す。


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