第22.5話 変わった人
昼休みの屋上は、少し風が強かった。
リナは弁当を抱えて階段を上がる。
「やっぱここにいるんだ」
フェンス越しに、黒いスーツの男が座っていた。
政宗だった。
「何か用か」
「用がないと来ちゃダメなの?」
政宗は視線だけ向ける。
「そうではないが」
リナは笑いながら隣に座った。
「友達と仲直りしたからさ、今日はここで食べようと思って」
政宗は小さく頷いた。
「好きにしろ」
リナは弁当を差し出す。
「これ、おじさんの分も作ってきたから」
政宗は少しだけ目を細める。
「……頂こう」
静かな昼休みだった。
風だけが、屋上を通り抜けていく。
リナは校舎を見下ろしながら、ふと話題を出した。
「そういえばさ」
「何だ」
「同じクラスのユウキって男子なんだけど」
政宗の手がわずかに止まる。
「最近さ、雰囲気変わったんだよね」
リナは続ける。
「前は目立たないっていうか、ちょっと弱そうだったのに」
「今はなんか違う」
「自信ある感じっていうかさ」
政宗は短く言った。
「そうか」
リナは顔を覗き込む。
「知ってるの?」
「知っている」
「どんな関係?」
政宗は少しだけ間を置いた。
「恩人だ」
「え?」
「そして、戦友でもあり……友だ」
リナは目を丸くする。
「なんかすごい関係じゃん」
政宗は空を見上げた。
「いずれ、大きくなるかもしれん」
「ふーん。ちょっと言いすぎじゃない?」
政宗はわずかに口元を緩めた。
「どうだろうな」
放課後。
リナは少し探すように校舎裏へ回った。
そこに、ユウキがいた。
「あ、やっぱりここにいた」
ユウキは顔を上げる。
「どうしたの?」
リナは少し間を置いてから、ぽつりと言う。
「ねえ」
「ん?」
「ほんとにさ」
リナはユウキをまっすぐ見る。
「変わったよね」
ユウキは少し視線を外す。
「そうかな」
「うん。前よりずっと」
リナは小さく笑った。
「かっこいいよ」
ユウキは一瞬だけ止まり、それから小さく息を吐く。
「……そういうの、慣れてない」
リナは軽く肩をすくめる。
「ほんとだし」
夕方の風が吹いた。
ユウキはそれ以上何も言わず、歩き出す。
その背中を見送りながら、リナは小さくつぶやいた。
「ほんとに、変わったんだな」




