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悪の剣  作者: Dai


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番外編 その後

◼️第三話 「消えない傷」

放課後。

教室には、すでに人影もまばらだった。

ミサキは静かに教科書を鞄へしまっていた。

そのとき、一人の男子生徒が彼女のもとへ歩み寄る。

「……ミサキ。」

ミサキは顔を上げた。

かつて、誹謗中傷を書き込んでいた男子だった。

「この前は……本当にごめん。」

「謝って許されることじゃないって分かってる。」

「でも、ちゃんと伝えたかった。」

ミサキはしばらく黙っていた。

「……ありがとう。」

「でもね。」

「スマホを見ると、今でも怖いの。」

男子は言葉を失った。

ミサキは続ける。

「また何か書かれているんじゃないかって、思っちゃう。」

「夜になると、眠れない日もある。」

男子は唇を噛んだ。

「……俺たちのせいだ。」

「本当に、ごめん。」

ミサキはゆっくりとうなずく。

「すぐには忘れられない。」

「でも……。」

「変わろうとしてくれるなら、私は前に進みたい。」

男子は深く頭を下げた。

「……本当にありがとう。」

ミサキは何も言わなかった。

男子は顔を上げる。

「……絶対に変わる。」

その日の夕方。

橋の下で、ユウキが政宗に声をかける。

「ちゃんと謝ったみたいだよ。」

政宗は静かに空を見上げた。

「謝罪は、あくまで始まりにすぎぬ。」

「失った信頼は、日々の行いによってしか取り戻せない。」

ユウキは小さくうなずく。

「じゃあ、あの人たちはこれからなんだね。」

政宗は穏やかに笑みを浮かべた。

「ああ。」

「人は過ちを犯す。」

「だが、過ちから目を背けぬ者は、昨日の自分を斬ることができる。」

夕日が橋の下を赤く染める。

その光は、昨日より少しだけ温かく見えた。



◼️第四話「屋上の侍」

昼休み。

リナは一人で屋上の扉を開ける。

「……いる?」

風だけが吹く。

「今日は来てないか。」

そう呟いて帰ろうとした瞬間。

「何の用だ。」

背後から声。

リナは苦笑する。

「びっくりさせないでよ。」

政宗は柵にもたれ、街を見下ろしている。

「ここから見える景色は、嫌いじゃない。」

「なにそれ。」

リナは少し笑う。

「今日はね、友達と少しケンカしちゃって。」

政宗は静かに聞く。

「どうしたらいいと思う?」

「謝りたいなら謝れ。」

「それだけ?」

「それだけだ。」

リナは笑う。

「相変わらずシンプル。」

「難しく考えるから、人は迷う。」

風が吹く。

「……ありがと。」

リナは笑顔を見せる。

「おじさんさぁ、前から気になってたんだけど、ここまでどうやって来てるの?」

「歩いてだ。」

「いや、それは分かるって!」

「また悩んだら来てもいい?」

「好きにしろ。」

リナは小さく笑い、屋上を後にした。

政宗はその背中を見送り、小さく呟く。

「少しは強くなったな。」

それ以来、リナは悩みがあるたび、昼休みにあの屋上を訪れるようになった。

そこには今日も、街を静かに見下ろす侍がいる。



◼️第五話「佐藤先生」

朝。

職員室。

「おはようございます。」

佐藤先生は笑顔で挨拶をする。

「おはようございます、佐藤先生。」

以前のような暗い表情はもうない。

「最近、元気ですね。」

同僚にそう言われると、佐藤先生は少し照れくさそうに笑った。

「そうですか?」

昼休み。

廊下を歩いていると、一人の女子生徒がうつむいて座っていた。

佐藤先生は立ち止まる。

「どうした?」

「……なんでもない。」

「そっか。」

佐藤先生は隣に座る。

「無理に話さなくてもいいよ。」

「でも、話したくなったら聞くから。」

しばらく沈黙が続く。

やがて生徒が小さく口を開いた。

「……友達とうまくいかなくて。」

佐藤先生は最後まで黙って話を聞く。

話し終えると、優しく微笑んだ。

「話してくれて、ありがとう。」

生徒も少しだけ笑顔を見せる。

「……ありがとうございます。」

放課後。

誰もいなくなった教室で、佐藤先生は窓の外を眺める。

「あの時、私も助けてもらった。」

「だから今度は、私が誰かを支えたい。」

夕日が教室を赤く染める。

佐藤先生は静かに教室を後にした。



◼️第六話「カズマ」

昼。

スーツ姿のカズマは面接を終え、街を歩いていた。

まだ不安はある。

でも、不思議と前を向けている。

以前のような絶望はない。

転職活動は簡単ではない。

それでも、自分のやりたい仕事を見つけた。

「よし、頑張ろう。」

その時だった。

コンビニから出てきた二人の姿が目に入る。

「……!」

見間違えるはずがなかった。

包帯、黒いスーツの男。

そして高校生。

「あの時の……!」

カズマは駆け寄る。

「ありがとうございました。」

政宗は静かに見る。

「おかげで会社を辞めることができました。」

「今は転職活動をしています。」

「自分のやりたいことも見つかって、毎日頑張れています。」

「あなたのおかげです。」

政宗は首を横に振る。

「俺は大したことなどしていない。」

「お前が、自ら行動した結果だ。」

カズマは少し笑う。

「……そうですね。」

政宗は続ける。

「また助けが欲しい時は、遠慮せず助けを求めろ。」

カズマは力強くうなずく。

「でも今度は、自分で自分を守れるよう頑張ってみます。」

「ああ。」

カズマは一礼し、その場を去っていく。

ユウキが首をかしげる。

「政宗、あの人誰?」

政宗は歩き出す。

「誰でもない。」

その頃。

かつてカズマが働いていた会社。

「来月から残業時間の管理を徹底します。」

「ハラスメント相談窓口も設置しました。」

社員たちの表情は、以前より少しだけ明るくなっていた。

「お先に失礼します。」

「お疲れ様です。」

そんな当たり前の声が、少しずつ戻り始めていた。

すべてが変わったわけではない。

それでも、その会社は確かに前へ進み始めていた。


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