番外編 侍と少年
◼️第五話「技名」
放課後。
河川敷。
高校生くらいの不良たちが数人の中学生を囲んでいた。
「おいおい、逃げるなよ。」
「金持ってんだろ?」
一人の不良が中学生の胸ぐらを掴む。
中学生たちは怯えている。
すると不良の一人がポケットからナイフを取り出した。
「言うこと聞かなかったらどうなるかわかってんだろうな?」
中学生たちの顔が青ざめる。
その様子を遠くから見ていたユウキがため息をついた。
ユウキ 「またあいつらだよ。」
隣には政宗。
政宗は黙って不良たちを見る。
ユウキ 「今度はナイフまで持ち出してる。」
政宗 「ほう。」
政宗はゆっくり歩き出した。
ユウキ 「あ、行くんだ。」
不良A 「なんだテメェ?」
不良B 「ミイラみたいな格好しやがって。」
「コスプレかよ。」
政宗は何も答えない。
木刀を軽く構える。
不良たちが笑う。
次の瞬間―― スパンッ!! 木刀が一度だけ振られた。 不良たちは何が起きたのかわからない。
一拍遅れて―― ドサッ。 ドサッ。 ドサドサドサッ。 全員がその場に倒れた。
不良A 「な……。」
不良B 「うそだろ……。」
全員気絶。
政宗は木刀を肩に担ぐ。
ユウキ 「出たっ!政宗の木刀一閃!」
政宗 「何だそれは。」
ユウキ 「技名だよ。」
政宗 「技名?」
ユウキ 「今の時代は技名を叫びながら倒すのがかっこいいんだよ。」
政宗 「くだらぬ。」
ユウキ 「えー。」
二人は歩き出す。
ユウキ 「じゃあさ。」
政宗 「?」
ユウキ 「政宗一閃の方が良かった?」
政宗 「……。」
ユウキ「木刀斬り!」
政宗「……。」
ユウキ 「影虎流・木刀一閃!」
政宗 「……。」
ユウキ 「絶対そっちの方が――」
政宗 「黙れ。」
ユウキ 「はい。」
少しの沈黙。
政宗 「……木刀一閃の方がまだましだ。」
ユウキ 「気に入ってるじゃん!」
政宗 「気に入ってはおらん。」
ユウキ 「顔がちょっと嬉しそうだった。」
政宗 「気のせいだ。」
夕日を背に、二人は河川敷を歩いていく。
ユウキの笑い声が響く。
政宗は少しだけ困ったような顔をしていた。




