表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の剣  作者: Dai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/49

第17話 嘘の代償(中編)

数日後。

学校への苦情は、止まる気配がなかった。

職員室。

電話が鳴る。

「教師を辞めさせろ!」

「説明しろ!」

「そんな教師を雇っている学校も同罪だ!」

電話が切れる。

また鳴る。

佐藤先生は何度も頭を下げ続けていた。

「申し訳ありません……。」

その顔から笑顔は消えていた。

昼休み。

教室。

生徒たちの声が聞こえる。

「先生って本当にやったの?」

「分かんない。」

「でもネットじゃすごいよ。」

佐藤先生は教室へ入る。

いつもなら笑顔で挨拶する先生。

しかし今日は違う。

「……席につけ。」

その声には力がなかった。

放課後。

職員室。

校長が静かに言う。

「佐藤先生。」

「少し休職することも考えましょう。」

先生は苦笑した。

「……はい。」

「ですが、生徒たちを置いて休むのは……。」

「今のお身体では授業も難しいでしょう。」

先生は返事ができなかった。

夕方。

学校。

職員室には誰もいない。

佐藤先生は一人、机に向かっていた。

引き出しから一枚の紙を取り出す。

退職届

ペンを持つ。

しかし、手が震える。

書けない。

その時。

廊下から足音が聞こえた。

コツ……

コツ……

先生が振り向く。

黒いスーツ。

顔には包帯。

腰には木刀。

見知らぬ男が立っていた。

先生は思わず立ち上がる。

「だ、誰ですか!」

「学校に何の用です!」

政宗は静かに立っている。

「教師か。」

「……え?」

「お前が佐藤という男だな。」

先生は一歩後ずさる。

「警察を呼びますよ!」

政宗は動かない。

「好きにするがいい。」

「俺は争いに来たのではない。」

先生は戸惑う。

「……では、何のために?」

政宗は静かに答えた。

「真実を知るためだ。」

先生は眉をひそめる。

「真実……?」

「その娘との間に、何があった。」

先生はしばらく黙っていた。

やがて、小さく首を振る。

「特別なことは何も。」

「授業中に撮影をしていたので、注意しただけです。」

「それだけです。」

政宗は先生の目を見つめる。

嘘をついている目ではなかった。

政宗は静かに言った。

「その顔。」

「眠れておらぬな。」

先生は苦笑する。

「……分かりますか。」

「ここ数日は、ほとんど眠れていません。」

「夜中でも電話が鳴るんです。」

「知らない番号ばかりで……。」

「出ると。」

『教師を辞めろ。』

『犯罪者。』

『最低教師。』

先生は目を閉じた。

「自宅の住所までネットに書かれました。」

「家の壁には落書きまでされました。」

政宗は黙って聞いている。

先生は続ける。

「家族にも嫌がらせの電話が来るようになりました。」

「妻は毎日泣いています。」

「妻は最初……。」

「あなた、本当に何もしてないの?」

「……そう聞いてきました。」

「信じたいけど、世間があれだけ騒ぐと、不安になるって。」

先生は笑おうとする。

しかし笑えない。

「責める気にはなれませんでした。」

「私でも、同じ立場なら疑ったかもしれません。」

少し沈黙。

「小学生の息子も。」

「学校で。」

『お前のお父さん最低なんだろ?』

そう言われたそうです。

先生の声が震える。

「泣きながら帰ってきました。」

「『お父さん、本当に悪いことしたの?』って。」

先生は顔を伏せた。

「……あの子には、あんな顔をさせたくなかった。」

机の上には退職届。

「辞めるのか。」

佐藤先生は苦笑する。

「……ええ。」

「もう限界です。」

「教師を辞めれば。」

「家族だけでも守れるかもしれません。」

政宗は黙って聞いていた。

「十五年かけて積み上げたものが……。」

「たった一本の動画で、壊れてしまいました。」

静かな教室。

夕日が差し込む。

政宗は机の上の退職届へ目を向けた。

「終わってはおらん。」

先生は顔を上げる。

「真実は消えぬ。」

「ならば。」

「その嘘、俺が断つ。」

佐藤先生は苦く笑った。

少し間を置いて、恐る恐る尋ねた。

「あなたは……誰なんですか。」

政宗は背を向けた。

「名乗るほどの者ではない。」

「ただ――」

少しだけ足を止める。

「弱き者をいたぶる者を、見過ごせぬ侍だ。」

そう言い残し、夕暮れの廊下へ消えていった。

佐藤先生は、その場に立ち尽くしていた。

「あの人は……一体……。」

机の上には、書きかけの退職届。

佐藤先生は、その紙を静かに見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ