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第8話 総ツッコミって、そんな理不尽な……

 こんにちは、町屋太郎です。

 俺は今、アエーシュマ・アンラ・マンユさんから全力で逃走しています。


「もうっ! タロウ様!! 何で、逃げるんですか!?」

「……スキル発動<危機察知>。おい、出歯亀神っ!! どうせ聞いてんだろ。俺がこの女と結婚したらどうなる!?」

<良い感じになると思います。というか、彼氏いない歴150年の女神に聞かないでください>

「知らんよ!?」


 というか、アエーシュマ・アンラ・マンユさん足はっやっ!!

 剣道部の田中より早いじゃねーか。

 陸上部の佐藤よりは遅いけど。

 あ、無理だこれ……。

 俺の足は、剣道部の田中より遅いから。


「タロウ様!! 一人目は女の子、二人目は男の子。頑張って産みますね!!」

「……助けて、女神様」

<裏山死刑。美人に言い寄られてるんですから、素直に抱かれたらどうですか。あー彼氏欲しい>


 殴ると決めていたが、辞めた。

 ぜってーこの女神は泣かす。


「うわっ!? 『狂犬』じゃねーか!! 嫌なもん見ちまった……」

「あの男の子、可哀想に……。『狂犬』に殺されちまうのか……」


 俺は足を止める。

 折角なので、そのまま屈んでみる。

 ちなみに、完全に思いつき。

 その場のノリだっ!!

 アエーシュマ・アンラ・マンユさんは俺に蹴躓(けつまづ)いて転びそうになったのを、ハンドスプリングの要領で華麗に着地する。

 俺は思わず拍手をしていた。


「もう! タロウ様ったら!! 急に止まったら危ないじゃ無いですか」

「いやっ!? そんなこと言われてもっ!? 無理ですからっ!!」


 アエーシュマ・アンラ・マンユさんは俺に向かってゆっくりと近づいてくる。

 それはまるで蛙を見つけた蛇のように思えた。


「おい! 『狂犬』っ!! この少年に何をしようとしている!!」

「いたいけな少年をその毒牙に掛けようというのなら、我が誇りに掛けてお前を止める。――男には負けると分かっていても、戦わないといけないときがあるからな」


 その辺にいた2人組の男が俺とアエーシュマ・アンラ・マンユさんの間に割って入る。

 筋骨隆々で、見るからに強そう。

 剣道部の田中には瞬殺されそうだけど。


「――どいてくださいませんか? これは妾とタロウ様の問題ですの」

「無理だな。強い者は、弱い者を守る責務がある。それが、俺たち冒険者の責務だ」

「そうだそうだ! 俺たちの流儀に染まれない『狂犬』には、教育が必要だ!!」


 男達とアエーシュマ・アンラ・マンユさんがにらみ合う。


<スキル『危機察知』を強制で発動させました。逃げてください町田太郎さん>

「MA・CHI・YA!!」


 俺の叫びはアエーシュマ・アンラ・マンユさんの剣が起こした風圧によってかき消される。


「……空中散歩は二度目か」


 俺は地面に叩きつけられる。


<……『スキル:キノコ判定』を獲得しました。だから言ったのに>


「畜生っ! なんて風圧だっ!!」

「クソっ! 少年!! 大丈夫か!?」

「無理です! 死にました!!」

「……狂犬っ!! 少年の敵(かたき)、討たせてもらうぞ」

「『袖振り合うも多生の縁』か。たまたますれ違っただけだが、同じ街で生きた仲だ。覚悟しろ、狂犬!!」

「でも、生き返ったので大丈夫ですっ!!」

「そうか、良かったな」

「長生きするんだぞ」

「「……って、なんで生きてるんだよ!?」」


 男達二人がもの凄い勢いで振り返る。

 そして、まるで幽霊でも見たかのような表情を浮かべた。


「あなた方は何を勘違いしているのか知りませんが、結婚を申し込まれて、受け入れたのに、急に逃げ出した夫を追いかけて何が悪いのですか?」

「「……はぁっ!?」」

「……いや、だから知らなかったんだって!! 愛称で呼ぶのがプロポーズで、二人でドラゴンを倒すのが結婚式だったなんて!!」

「「いや、ダメだろ!! 知らなかったで済まされないぞ!?」」


 あ、これはダメみたいですね。

 侠気にあふれていた冒険者二人が、完全にツッコミ役になってる……。

 どーしてこうなった!

 どーしてこうなった!


<お前は、世界のうつけ者>


 黙れ。

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