第17話 俺は、生きる
「ま、そんなこんなで俺は死んだ。で、この世界にきたって訳だ」
こんにちは、町屋太郎です。
俺のつまらない話を聞いてくれてありがとう。
「……タロウ様。ありがとうございました。話してくださって」
「面白い話じゃなくてごめんな。――湿っぽい話はこれで終わりにしようか」
俺はシュマの脇腹をつっつく。
本気で腕が折れそうなので、シュマの弱いところを攻撃する。
良かった。今回は折れずに済んだぞ。
「今度はシュマの話が聞きたいな」
「はい。身長は175cm、101-65-89で足は27cmです」
「……くっ!! 2cm身長が負けた」
「……女としては、スタイルの方にも触れて欲しいところですが」
「俺の住んでいた『日本』って国は、そこに触れると怒る人が居るからスルーした」
シュマが少しむくれている。
やっぱ、可愛いな。
俺の語彙力は夏休みらしい。
「真面目なことを言うと、私はアエーシュマ・アンラ・マンユ。マンユ王国の第3王女でした。マンユ王国が滅んだのは以前お話ししたとおりです」
「あの天使が撃ってた極太雷か」
「はい。辛うじて生き延びた私は身分があやふやでもお金を稼げる冒険者になりました。ですが、その……」
「?」
「……国を失ったばかりで、荒れていまして。気がついたら、『狂犬』と呼ばれてました」
まぁ、俺も似たようなもんだしな……。
剣道部の田中にぶん殴られなきゃ、今頃は闇バイトをして檻の中で40年~50年ってとこだろ。
「……なぁ、シュマ」
「何でしょうか、タロウ様」
「俺、ちょっと頑張ってみるわ」
俺は冒険者のライセンスカードを取り出す。
そこには登録したばかりの証である「天」の文字が書かれている。
シュマに見せてもらったライセンスカードには、「権」と書かれていた。
――俺より、二つも上。
「タロウ様は私が守ります」
「シュマ。自信満々のところ悪いけど、お前は俺の親友。剣道部の田中よりは弱いぞ。ついでに、あの天使は田中より圧倒的に強い」
「……」
シュマがショックを受けた顔をしている。
でも、事実だから仕方ない。
「ちなみに単純な剣術だけなら、俺はお前より強い自信あるぞ。身体能力で劣ってるから、長引くと負けるけどな」
「……え」
「お前の動きには無駄が多い。それを身体能力で無理矢理補っているだけだろ。まぁ、3秒で倒せるかな」
「私、そんなに弱くないですよっ!!」
「じゃあ、殺す気でかかってきてみろ。安心しろ。万が一死んでも俺は生き返るから」
シュマが「え?」って顔をしている。
「スキル発動<枝拾い>。うん、こんなもんで良いだろ」
俺は地面に落ちていた良い感じの棒を拾う。
そして、軽く素振りして頭を突き出し、右足を引く。
僅かに体を落とし、杖をつくように構える。
師範代が最も得意にしていた技の構え。
「ほら、斬りかかってきてみろよ」
「……本当に良いんですね」
「あぁ」
シュマが俺の頭を狙って斬りかかってくる。
俺はその一撃を体を起こし、左足を引く。
大きく避ける必要は無い。
剣が当たらない程度に避ければ良い。
シュマの腕を枝で打つ。
枝を返し、シュマの目を狙い撃つ。
シュマが咄嗟に目をつぶったので枝を持ち替え、左上から右斜め下へ切り伏せる。
最後の一撃は腰を回す事でためを残す。
師範代に「まだ、相手が生きていたらそこから腰を戻せば平突きが出せますわ」と言われたから。
「ま、こんなもんだろ」
「……今のは?」
「黒衣流、飛燕っていう技だ。シュマ、お前は我流だろ? きちんと技を身につければ化けるぞ」
「……タロウ様、なんか変わりました?」
シュマが俺に尋ねる。
「――ちゃんと生きようと思っただけさ」
あの日、田中に殴られた。
そのときは、生きるということがよく分からなかった。
だけど、今は少しだけ分かった気がする。
10回以上死んで、やっと分かったバカだけどな!!
<あの、薬草採取は良いんですか? そろそろ夜になりますよ?>
「……シュマ、やばい。薬草集めて帰るぞ!!」
いまいち締まらない。
でも、それが生きるって事なんだろうな。
そうなんだろ。
――田中?
「タロウ様っ!? そっちは崖ですよ!!」
「あっ!!」
<『スキル:成長強化(爪)』を手に入れました。本当に締まらないですね。町屋太郎さん>




