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4話 担任登場

 チャイムが鳴る前に伊月はトイレに行ったので僕一人になってしまったのだけど……どうしようか。クラスで仲良くなれるように誰かに積極的に話しかけに行った方がいいのかな? 伊月からは「誰かに話しかけるなら一人じゃない時にしろ」と注意されているからなぁ。


 大人しく伊月が戻ってくるまでは寝たフリでもしておこうかな。流石に外部受験してきた人間に話しかけてくるような奴なんていないだろうからね。だって獣人の皆さんは僕から距離をとっているから話しかけられることはない。尻尾とか触ってみたい。


「すまないが少し話せないか?」

「・・・えっ? 僕とですか?」

「そうだが? 逆に誰がいるんだよ」

「お、お話しましょう!」

「よろしく頼む。俺は狗谷智成(いぬたにともなり)だ」

「不澤雨歌です」


 狗谷くんは僕に対して優しく話しかけてきてくれた。のだがそれを良しとしていない人がいるのを僕は忘れていた。狗谷くんが急に浮かび始めたので僕は教室の入り口に目をやると伊月が負のオーラを纏わせながら能力を使っていた。しかも狗谷くんは苦しみ始めた。


「伊月!! 狗谷くんを降ろして!!」

「ダメだ。誰の許可を得て雨歌に個人で話しかけているんだ?」

「伊月今すぐにやめてくれないと口を聞かないよ」

「・・・ほらよ」

「ゴボッ……テメェ……ゴボッ」

「狗谷くん、ごめんなさい。伊月も謝る!!」


 伊月は一切謝る気がないのか、狗谷くんのただ見下している。絶対に後で説教をしないといけない。それと僕に話しかけるのに許可なんていりませんよ? 別に男子生徒から話しかけられてから何かあったことなんて、両手で数えれる回数しかなかったから問題はないはず。


 狗谷くんはなんか大丈夫だと思うんだよね。だから伊月に強く謝るように言うが何も反応してくれずに彼をひたすら見下し続けた。僕が見られているわけではないけどすごく怖いように感じるのは僕がおかしいのかな? 


「はぁ、そういうことか。すまなかったな犬コロ」

「お前みたいな粘着質な奴は見たことないな」

「雨歌……コイツと話してもいいが二人っきりにならないようにな」

「何もしねぇよ」

「お前じゃなくてだよ。危ない奴はいるからな」


 いや今のところ君が一番危ない奴だからねと言うのはあえて言わないでおこう。二人っきりにならないように言っているのはおそらくだけど狗谷くんじゃなくて伊月が今、最も警戒しているであろう彼だろうね。


「雨歌も気を付けろ。近寄らないように対策をしているといえ」

「気を付けるし狗谷くんはそんな感じし……は?」

「上位種の奴らの匂いが出てんだよ。獣人は特に鼻が効くから避けてるんだよ」


 初耳の情報が出てきたんだけど? 上位種の奴らって誰のことなのかな。その匂いで獣人は避けてるって言っても普通にくる子もいた訳だから気が付かなかったよ。身近で上位の存在って言ったら伊月しか分からないんだよね。ある程度はやらかしても見逃してくれるみたいだしね。


 真人間の僕にはおそらく分からない匂いだろうし、昔から人外に囲まれていたことが多かったからそれでも匂いが染み付いちゃっている可能性があるんだよね。じゃあなんで獣人であろう狗谷くんは僕に話しかけに来たんだろう?


「狗谷くんは匂いは大丈夫なの?」

「・・・不澤に相談してみたいことがあってだな」

「初対面なのに?」

「あぁすぐ側にヤバい奴がいたから一人の時を狙ったんだが」

「俺もいる時にしたら良かったんだよ。いつ惹きつけられるかも分からないんだからな」


 あの時のことを思い出しているんだね。もう大丈夫なのに。確かに一度、僕は一人で相談を受けていたがその時も獣人の子で片想いしている人に近付きたくて僕に話に来ていた。親身になって対応していたんだけど、その子が急に僕に襲いかかって来た。ってことがあっただけだから特に何もない。


 その時は担任に助けられたから事なきを得たと言われたのもいい思い出だ。懐かしいなぁとは思うけど、そこまで過敏にならなくてもいいんじゃないのかなと僕は思うんだよね。魅了に近い何かに掛かってしまっていたって警察も言っていたし伊月も後で呼ぼうと思っていたから。


「お前はもう少し警戒心を見せろ」

「いふぅひ、ひはい」

「お前は反省していないだろう。これは罰だバカ」

「ごべんばぁださい」

「イチャついているところを邪魔するのは悪いな。じゃまた後で」


 ほっぺをつねられてしまってちゃんと喋れないのだがイチャついてはいない。僕と伊月は幼馴染で親友ではあるが恋人ではないからイチャつきなんて出来ない。それに緋華さんと伊月は婚約者同士だから僕の入る間なんてものは一切ない。


「お前らさっさと席につけ。特に二人はな」


 担任と思われるジャージ姿のタバコを咥えている人が真横で僕らを見ながら言った。伊月もいつの間にか居た人に驚いていた。一体いつからそこに居て僕らを見ていた? クラスメイト全員も驚きのあまり固まっているし。種族は人であればいいんだけど、たぶんだけど違う。


 雰囲気があそこにいた人型と似ているからだ。僕は身体が震え始めたと思ったら呼吸が上手く吸えないような気がする。あそこでのことがフラッシュバックして来たから拒絶反応を起こしているんだろうけど、何も入学時じゃなくてもいいじゃないか。


「う、雨歌!?」

「落ち着け。ゆっくりで大丈夫だから深く息を吸え」

「すぅ」

「少し止めて吐く」

「・・・はぁ」

「落ち着いたな。なら席に座れ」

「ありが、とうござ、います」


 伊月は心配そうに僕を見ながら席に座ったがチラチラと見られると恥ずかしいからやめてほしい。先ほどの人は教壇に立ち黒板に名前を書き始めたと思いきや注意点を簡潔に書いていただけだった。小学生で習うような注意点を書いていることに僕らは困惑することしかできない。


「俺は担任のショケイという。一年間よろしくな」

「・・・私の方は副担任の水原(みずはら)です」

「あの……質問いいですか?」

「いいぞ」

「ショケイ先生は、生徒の首を斬った噂は本当でしょうか?」

「あぁ本当だ。問題を起こしてしまってな」


 えぇ怖い先生じゃん。優しい先生かと思っていたら生徒の首を斬ったって怖っ! 問題は何も起こさないでおこう。怖すぎる。

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