25話 古いボードゲーム1
➖自室➖
はぁやることが何もない。伊月と緋華さんは今ごろデートに行っているんだろうしなぁ。何か部屋で出来ることって言っても……この自作のボードゲームくらいかぁ。スマホも今は使えない状態だし、本は読む気分になれないしね。パソコンはあるけど、中古で色々と制限が掛かっているから何も出来ないしね。
「どこにあったかなぁ」
押し入れに仕舞い込んでいる筈のボードゲームを探すが、見つからない。アレは僕が一人でないといけない時間が多かったから作ったモノで段ボールで手作りした思い出の品なんだけど……間違えて捨てちゃったのかな?
まぁいつでも作れるけど、アレは大切な物だったからなぁ。・・・宝物に入れたんだった。あった!! コレだぁ。ただボロボロだぁ~ところどころに修復するためにセロハンテープが貼ってある。唯一母と一緒に遊んだボードゲームだ。
「・・・ははっ、字ぃが汚いなぁ」
本当に幼い時に自分で考えたゲームでルールもいっぱい変なのを作った記憶しかない。オセロと人生ゲーム、あと将棋を合わせたような物だったかな? ルールを書いた紙を開く。
1.楽しむこと
2.駒は一人、5つ
3.1回ずつで1つ
4.
他のは字が汚すぎるし、擦れて読めない。ルールを忘れてしまったからコレも出来ないなぁ。勿体無いけど捨てるかぁ。思い出を捨てるようで嫌だけど、あっても仕方ない物だしね。母が生きているかも分からないからいつまでも縋っているのもどうかと思うし。
「捨てに行くかぁ」
➖リビング➖
コレを捨てる為にリビングへと降りて来たけど、母さんは来客対応をしていたみたいだった。中から少しだけ声が漏れているのでいけないと頭で分かっていても気になってしまったからドアに耳を当てる。何かを言い合っているような。
「先輩が……長く生きれないって本当ですか?」
「えぇ、反応はするんですが……ただそれだけって感じで」
「先輩に、雨歌ちゃんを会わせることはいいでしょうか?」
「やめた方がいいでしょう。発狂する可能性もありますし、そもそも洗脳が解けていないんです」
「ソレをどうにかするのは貴方たちの仕事でしょう!!」
「分かっていますが……我々の手には負えません。あの時と同じです」
もしかして母さんが「先輩」って呼んでいるのは母なの? 洗脳、発狂ってことは僕は憎まれていなかった? あの母に……いやまだ可能性の話であってソレを確かめないと。部屋に戻って可能性を全て調べて探しに行こう。ちゃんと何かあった時ようで準備をして。
―不澤涼音視点―
はぁ、特殊技能対策課_略してTGT課の獣人と先輩のことについて話し合いが今日あると言うことを私はすっかり忘れていた。だから仕方なく雨歌ちゃんには部屋に軟禁状態で居てもらった。まぁ2階にもトイレがあるし、1階に降りてくることはないでしょう。
「ガラス越しでも無理ですか?」
「はい、彼には伝えてはいないのでしたね」
「そうです。先輩に関するニュースも見せてないです」
「お辛いかもしれないですが、隠し通しましょう」
簡単に言ってくれる。雨歌ちゃんを先輩のクローンと認定したのはおま__TGTの方だろう。なら先輩が得意とすることを雨歌ちゃんが引き継いでいることを想定しないなんて……相変わらず無能の集まりなのだろう。
あの時と同じで対策がとれませんでしたってよくもまぁ、私に対して言えたことね。アンタらが必ず、先輩を助け出すと言ったからあの病院で預けていたのに……はぁ、怒っても仕方ないから冷静でいないと雨歌ちゃんにバレちゃう。
「亡くなった後は私共の方で遺体は有効活用させていただきます」
「はぁ!? そんなことは認めませんよ」
「分かっていないですね。アレは貴重なサンプルなのですよ?」
「TGTはまだ遺体や被害者をおもちゃにしているんですか!?」
「仕方ない犠牲なのです。分かってください」
「分かりたくもないです!! 先輩のことに対してにかかるモノは全て私が出しているんですよ?」
「しっかりと倍で支払いします。だから救えなかったということにしていただけないでしょうか?」
「お断りします!! 帰れ!!」
私はイタチの獣人を家から追い出した。先輩が本当に長くないのであれば私だって諦めたけど、あの課がわざと治療をやめようとするのであれば、流石に怒りしか湧いてこない。確かに数多の犠牲によって今も助けれている人々はいるが……アイツらのすることは冒涜だ。
だから取り締まられたと言うのにまだそんなことをしていたとは。二人が帰って来たらしっかりと話さないと。大きな声を出してしまったから雨歌ちゃんが心配ね。・・・降りて来ていてもおかしくないくらいには大きかった筈……
「まさかね」
私は嫌な予感がしたから雨歌ちゃんの部屋まで行く。その時についでに靴があるかを玄関で確認したらあったから部屋で寝ているのだと思いつつも心配だから見に行く。雨歌ちゃんの部屋の前に着いたので扉をノックするが、返事が返ってこない。
寝ているだけなのだろうと安心して部屋に入ると誰もいなかった。雨歌ちゃんの用に中古パソコンを置いてあるから急いで開き、検索履歴を……病院のことを調べられていた。会話を聞かれていた? いつからなのかによって変わるけど、ここから病院までは車で3時間かかる。
雨歌ちゃんのスマホは今は修理に出しているのでない。GPSが付いているのは持って行ってないってことは……私たちに追いかけてほしくないってことね。私はスマホを取り出して伊月くんに電話を掛ける。デート中に申し訳ないと思ってはいるけど、彼しか適任がいない。
『もしもし、涼音さん?』
「ごめんなさいね。雨歌ちゃんが一人で……せ_産みの母に逢いに行ったのよね」
『はい……』
「もしかしたら落ち込むかもしれないの。だから支えてあげて」
『分かりました。涼音さんも無理しないでくださいね』
「私は無理していないわよ」
『雨歌は貴女のことを母と思っていますし、自慢していましたよ』
「そう」
電話を切り……私は雨歌ちゃんの部屋で一人で泣いた。私は心の底であの子の母親になれていないとずっと思っていた。「母さん」と呼んでくれた日から只の先輩の代わりだと私は思っていたから……どうしても会わせたくないと思ってしまった。
先輩が生きていて、近くに居ると分かってしまうと雨歌ちゃんがそちらに行ってしまうのではないかと思ってしまったからだ。だってあの子、たった一回だけ遊んだボロボロの自作しているボードゲームを大事そうに……抱えていたのを知っているもの。
ずっと抱きしめていたから……やっぱり本物がいいのだと思っていた。他の子供は私にちゃんと伝えてくれるから安心出来ていたけど、雨歌ちゃんだけは言ってくれなかった。けど、1番の理解者である伊月くんが言うなら間違いじゃないわね。
「泣いている暇はないわね」
私は涙を拭き、雨歌ちゃんを迎えに行かないとね。私はあの子の母親なんだから……いや、6人の母親んだからしっかりとしないと。




