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19話 隔離された結界2

➖結界内➖


 よく分からない奴から逃げたのはいいけど、ここがどこか分からないんだけど……どうしよう。大体はここなんだろうなぁってのは分かっているんだけども……知っているのとは違うから分からない。


 視聴覚室が動物の体内みたいな感じにはなっているけど、古村くんをとりあえず探す方向で行くかな。流石に生き物ってわけではなさそうだしね。


「古村くん〜いませんか〜」


 って大きな声で言ってみるけど返事はない。まぁそりゃそうだろうとは思うんだけどさ、少しは何かあってもいいと思うんだよねぇ。例えば大きなモノ音がするとかないのかな?


〈ねぇ〉


 僕は固まってしまった。一切の気配がなかった筈なのに声が聞こえてきたのが分からない。伊月に気配の把握くらいはできるようにと訓練されたので僕の近くに来た気配は分かるんだけど、こればかりは分からない。耳元で囁かれた筈なので気配があるのに……ない。


 僕はゆっくりと振り返ると誰もいなかった。幽霊って訳でもなさそう。確か幽霊はエネルギーの塊と言っていたから気配はないかもしれない。伊月か緋華さんは知っているかもしれないから戻れたら聞いてみよう。まぁ何もないみたいだから戻れるかわからないけどね。


「この辺にも何もないみたい」

「そうじゃろうな」


 声が聞こえるまで気配が全くしなかった。ここにいる妖って全員が気配を消せるのか? 完璧に逃げ道を塞いでいるから詰みってやつね。もしかしてアレなのかな? 僕は気配を感じれるのは生物のみで妖や幽霊って言ったものは無理って線もあるかな。


 殺される可能性はあるけど、イチかバチかを賭けるのもいいかも。僕は生きてここを出たいから何かに賭けないといけないんだろう。相手は僕の数百倍は強いからまず攻撃しても殺されるだけ……それなら話を持ち掛けてこっち側に一時的に引き込む。


「僕のことを弄んでますか?」

「なんの話じゃ? 意味が分からぬことを言うのぉ」

「姿を現す前に〈ねぇ〉って言いませんでしたか?」

(わし)じゃないの。妙な気配はないしのぉ」

「何か感知とかできませんか?」

「うむ……何もないの。気味が悪いくらいにの」


 この……狐っぽい人も何も分からないってことは僕の勘違いなのかもしれないかな。いや勘違いってことはないはず。しっかりと聞こえたんだよ。〈ねぇ〉って僕の耳元で言った女性の声がはっきりと。信用されないかもしれないけど、確実なんだ。


 狐の人は何か探っているのか分からないけど、動かない。ここから逃げるのであれば今しかないとは思うんだけど逃げたら攻撃されそうだから動けずにいる。もし伊月か緋華さんが助けに来てくれたとしたらこの人に会わせないようにしないと。


「お主、禍津神(まがつかみ)って知っておるか?」

「いいえ。神様なんですか?」

「うむ。厄災の神じゃな」

「それがどうしたんですか?」

「お主は目を付けられている可能性があるの」


 厄災の神様がなんで僕に目を付けているんですか。心当たりなんて一切ありませんから目を付けられない方法ってないんですか? 神社に行った方がいいのかな? というかこの人、もしかしていい人なのかもしれない。


「最近……禍津神になったようじゃな」

「最近ですか?」

「そうじゃ。お主はタラシのようじゃな」

「干渉ってされているんですか?」

「こうゆう空間のみじゃろう。厄介ごとはいやじゃな」


 そういうと狐さんは古村くんを何処からか出して引きずって視聴覚室? を出ようとする。それを見守っていると「お主もついてこい」と言われたので後をついて行った。何やらここから出れる場所まで連れて行ってくれるらしい。


 罠かもしれないと思いつつ大人しく付いていく。じゃないと古村くんをもしもの時に助けられないから。古村くんにも大切に思ってくれる人がいるだろうから助け出さないと……まぁ最悪の場合は見捨てるけどね。僕は自分の命を優先したいし。



「ここから出れるぞ。お主に聞きたいことがある」

「何ですか?」

「こやつはお主を売った。助けたいか?」

「はい」

「即答じゃな。コレを持っておけ」

「え、あ、ありがとうございます」

「まずこやつから投げるぞ」


 この柱って出口になるのかは分からないけど、まぁ古村くんから投げるって言っているし大丈夫でしょ。狐さんが古村くんを投げると吸い込まれた。本当のことだったみたい。やっぱりこの人はいい人だろう。伊月達にも言っておこう。


「帰る前に言っておくぞ。儂は善人ではない」

「けど」

「次はないからの」


 彼はそう言ってどこかに消えて行った。彼が善人ではないなら……古村くんは極悪人でしょ。状況的に仕方ないとはいえ、クラスメイトを売るなんてする人が許されなくていいと思う。まぁ本人が言ったのかは分からないから僕は「はい」って言ったわけだしね。


 さて僕も帰りますか。みんなの所に帰らないともみくちゃにされるだろうからさっさと通ろう。伊月には怒られるだろうけど、我慢しないとね。


〈もう帰っちゃうの?〉


 今度は声と同時に抱き着かれた感覚がする。狐さんが言っていたのはコレのことかもしれない。彼女が干渉できるのはこうゆう空間のみってのは……ヤバいかも。体が硬直して動ける気がしないんだよ。接点がない筈の神様に目を付けられるってどういうことだよ。


〈ねぇ昨日はごめんね。助けられなくて〉


 昨日ってもしかして、あそこにも居たってことだよね? これって普通に憑りつかれているって解釈でいいんですかね? 有識者さ~ん、答えてくださ~い。ここから抜け出す方法って一体どうしたらいいんでしょうかね。


 さっさと逃げるのが一番かもしれないけど体が動かないんだからどうしようもないよ。狐さんに助けてもらうってことは出来ないだろうし、緋華さんに大声で言ってみるとか? 無理じゃん。もう諦めるしかないのかな。


・・・ん? 伊月の妖力が僕の体にあるなら使えるのでは? 僕って天才。


〈使えないよ。ワタシが今消したから〉


 体が重くなった。力が抜けていくような感覚がし始めてきてるのは何故。

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