10話 誘拐 4
➖???➖
助けが来るまで待っておこうと思ったけど、上から何か物音が聞こえるってことは何かあった筈だからこの隙に逃げ出そう。暗闇には慣れてきたから行動はできるかな。よし行動しよう!!
_パキッ
「今、枝か何かを踏んだ音がしたけど気のせいだよね」
後ろから聞こえたので振り返るが見てない。慣れてきたからと言って見えるわけではないからね。何も暗闇で見えないが、ただ何かがいるってことはわかった。どうしたものかな。ライトとかがあればいいんだけど流石にないか。
「うわ!! 眩し!!」
急に蛍光灯がついた。こういうのはご都合展開とか後で言われるんだろうなぁ。まぁこれですごく見やすくなったし良かった。にしてもカビの臭いがしていたのは分かっていたから大体予想は出来てたけど……生えてる。
床や壁、天井まで生えてしまってるからあまり長時間ここに居ない方がいいかも。ここの壁などに使われている石? って言っていいかは分からないけど、使われている素材からあの研究所と同じだと仮定するとしたら、ここには実験された生物がいる筈。
鉄格子もあるけど見た感じは壊れているから脱走しているって分かるし、生物の骨が転がっているから死んでいる可能性もあるけど残っていた場合は……僕は食われるね。電気がついたことにより混乱しているかもだし、早くここから抜けた方がいいかな。
「あの……ニンゲンで?」
「・・・だだだだ、大蛇ぁ!?」
「えっ、ちょっ、逃げないで」
檻から出てから左に行こうとしたら声をかけられて見てみたら大蛇がいた。しかもどのくらいかは分からないけど、僕よりも遥かに大きく簡単に丸呑み出来るだろう。しかも人語を喋る。
ここはあの“オリジン”とか呼ばれてる研究所と同じだ。あそこは原点種と分類される生物を研究する場所だ。しかもクローンや復元生物、キメラも作ってる。僕は何度も何度も食われる恐怖と戦いながら同じ部屋に入れられていたから分かる。
アレは多分復元された古代の生物だ。神話とかに出てくるような八岐大蛇と同種だと思う。伊月や緋華さんと仲良くなってからは同じ部屋に入れられても近付いて来なくなった。だから油断していたんだよね。
「マジで待ってください」
「無理です。食われるのは分かりきっていますからぁ」
「件に案内するように言われてるから」
「あの放送を流していた妖か_いぃ」
「急に止まると滑って危ないよ?」
「イッ……遅いです」
大蛇が警告する前に僕は急停止した為、滑ってバランスを崩して思いっきり鉄格子に頭をぶつけた。頭というよりかは額だけど、あまり変わらないか。とにかく何か変なことをされる訳ではないからよしとするかな。
もしかして件さんって相当危ない状況に置かれているじゃないかな? 僕がここに連れて来られたからそれを利用してここを脱出しようとしているとか? 伊月が居れば相談出来るんだけど……ここには居ないから相談しようがない。
「大丈夫? 薬があったとしても古いから使えるかどうか」
「大丈夫です。逃げちゃってごめんなさい」
「いいよ。急に現れたのはこっちだし」
「パキッって音が聞こえたのですが……」
「ワタシではないね。ついさっき来た訳だし、それに貴方以外は見てない」
他に何かいるって可能性はあるけど、大蛇さんは蛇だから熱で生物を捉えれる筈。緋華さんがなんかそんなことを言っていたような記憶があるけど、まぁ覚えてないしいっか。それはさておいて誰かがいるってことは確実な筈。
引き寄せる体質って言っても母親からの遺伝ってだけだしそんなに強くはなかった気がする。あの人が言っていた劣化版が僕だから……って考えると敏感に反応するのは上位種もしくは原点種かな。それなら今までのことが辻褄があう。
「行かなくてもいいの? 誰か分からないけど猛スピードでこちらに来ているけど」
「僕を攫った人達って可能性は?」
「ないかな。制圧出来たらしいからね」
「絶対に伊月だぁ」
制圧と言う名の殺し……じゃなさそうだけどアレだね。伊月には今後腕相撲は挑まないでおこう。負け続けているから別にいいけど。強いってのは知っていたけど、僕って結構失礼なことをしたり言ったりしてたけど大丈夫かな?
「雨歌に近付いてんじゃねぇ!!」
「えっ?」
「ホボベラッ」
「大蛇さーん!!」
「雨歌、何もされていないか?」
「されてないけど……壁にめり込ませるのは違うんじゃない?」
「アイツいわく頑丈だから大丈夫らしい」
一番の疑問はなんで伊月がここにいるかだね。その次に疑問なのはアイツって誰なのか。まぁ後々問い詰めるとして、まずは大蛇さんを助けないとこのまま壁にめり込んだ状態では良くないだろうからね。いや、信用できた訳ではないけど悪い蛇ではないとは思うからね。
とりあえず伊月と協力しながらめり込んだ大蛇さんを引っこ抜いた。その後に伊月に色々と問い詰めた。何やら母さんから誘拐されたと連絡が来て急いで追跡したそうだ。どうやってかは教えてくれなかったけど、森に入った時に僕のスマホから電話がかかってきた。
「それで今に至ると」
「他の奴らは無力化しているから安心しろ」
「父さん達は?」
「着いたらしいからこれからじゃないか」
「なんで待てなかったの?」
「・・・すまん」
「まぁ助けてくれてありがと。伊月」
父さん達の到着を待っていたら僕は殺されていた可能性があるから責める気はないけど、せめて誰かと一緒に来てほしかったよ。何かあってからじゃ遅いんだから。




