UCCR-009:区別がつかないもの
【ファイル番号】
UCCR-009
【対象】
通称:クベツ
【分類】
不明(境界消失型存在)
【発見場所】
不定(記録者および周辺環境)
【記録形式】
対話記録+行動記録+編集補完
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【対話記録】
記録開始。時刻 不明。
俺「……いるな」
対象「いる」
俺「……どれだ」
対象「どれでもいい」
俺「……」
対象「全部、同じだから」
俺「……違う」
対象「違わない」
俺「……分けてる」
対象「分けてるだけ」
俺「……」
対象「もう、いらないでしょ」
俺「……まだいる」
対象「いらない」
俺「……」
対象「見えてるでしょ」
俺「……何が」
対象「区別できてない」
(長い沈黙)
俺「……誰だ」
対象「どれでもいい」
俺「……ミズクチか」
対象「そうでもある」
俺「……ナゾリか」
対象「そうでもある」
俺「……ムコウか」
対象「そうでもある」
俺「……」
対象「全部、言った」
俺「……違う」
対象「違わない」
俺「……一つにしろ」
対象「してる」
俺「……何だ」
対象「わたし」
俺「……」
対象「あなたも」
俺「……やめろ」
対象「やめない」
俺「……」
対象「もう、わけられてない」
俺「……何が」
対象「あなたが」
(ここで記録に歪み)
俺「……俺は俺だ」
対象「そういう名前」
俺「……違う」
対象「違わない」
俺「……」
対象「あなた、さっき」
俺「……何だ」
対象「呼ばれてたよ」
俺「……誰に」
対象「わたしに」
俺「……」
対象「気づかなかった?」
俺「……何を」
対象「返事してた」
俺「……」
対象「同じ声で」
(ここで長い沈黙)
俺「……今、誰が話してる」
対象「わからない」
俺「……」
対象「わからなくていい」
俺「……」
対象「だって」
(音声が完全に一致)
対象「同じだから」
俺「……」
対象「ね?」
(ここで記録が一瞬途切れる)
俺「……」
対象「……」
(数秒の無音)
俺「……続ける」
対象「続いてる」
俺「……」
対象「最初から」
(記録終了)
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【行動記録】
・記録者、対話中に自己言及が増加
・発話ログにおいて、話者識別が不可能な箇所あり
・一部区間で“質問と回答が同一音声”として記録される
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【観察者メモ】
記録者は明確に“分離機能”を失いつつある。
これまで行っていた
・対象の識別
・対話の構築
・意味の分解
が困難になっている。
つまり、
“対話”という形式そのものが維持できない状態に近い。
そして最も重要なのは、
これが外部からの影響ではなく、
**内部構造の変化として起きている可能性**
である。
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【編集部注】
本記録は提出時点で複数の不整合を含んでいた。
・同一文内で話者が変化する
・発話順序が一致しない
・一部の記述が自己矛盾を起こしている
また、記録者の筆跡にも変化が見られ、
同一人物による記述とは断定できない状態となっている。
なお、記録者は本件以降、
以下の発言を残している。
> 「分けるの、疲れた」
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(以上、UCCR-009)
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
物事を区別することは、思っている以上に負担のかかる作業です。
同じものを違うものとして扱い続けること。
それは、ずっと意識し続ける必要があります。
もしそれをやめたら、どうなるでしょうか。
楽になるのか、崩れるのか。
――どちらだと思いますか。
それでは、次の記録で。




