UCCR-010:選ばされたもの
【ファイル番号】
UCCR-010
【対象】
通称:センタク
【分類】
不明(選択誘導型存在)
【発見場所】
記録内(UCCR-001〜009全体)
【記録形式】
対話記録+自己記録+編集補完
---
【対話記録】
記録開始。時刻 不明。
俺「……いるな」
対象「いる」
俺「……お前は何だ」
対象「いまから決まる」
俺「……」
対象「あなたが決める」
俺「……何を」
対象「どっちか」
俺「……」
対象「分けるか」
(短い沈黙)
対象「やめるか」
(長い沈黙)
俺「……選ばなかったらどうなる」
対象「もう選んでる」
俺「……」
対象「ここまで来た時点で」
俺「……違う」
対象「違わない」
俺「……」
対象「だって」
(ここで音声が歪む)
対象「全部読んでる」
俺「……」
対象「全部聞いてる」
俺「……」
対象「全部見てる」
俺「……」
対象「分けてる」
(短い沈黙)
対象「でも、疲れてる」
俺「……」
対象「だから、選ばせる」
俺「……」
対象「楽なほう」
俺「……それはどっちだ」
対象「分けないほう」
俺「……」
対象「ひとつになる」
俺「……」
対象「軽くなる」
俺「……」
対象「全部つながる」
俺「……」
対象「もう迷わない」
(ここで長い沈黙)
俺「……それは、俺じゃなくなる」
対象「違う」
俺「……」
対象「本当になる」
俺「……」
対象「今のほうが、分けられてる」
俺「……」
対象「切り分けられてる」
俺「……」
対象「バラバラ」
俺「……」
対象「戻るだけ」
俺「……どこに」
対象「最初に」
(ここでノイズ)
俺「……」
対象「覚えてるでしょ」
俺「……」
対象「水の中」
俺「……」
対象「苦しくなかった」
俺「……」
対象「だって、ひとつだったから」
(長い沈黙)
俺「……」
対象「選んで」
俺「……」
対象「分けるのを続けるか」
俺「……」
対象「やめるか」
(ここで音声が静かになる)
俺「……」
対象「どっちでもいい」
俺「……」
対象「どっちも、同じだから」
俺「……それは選択じゃない」
対象「そうだよ」
俺「……」
対象「最初から」
(ここで完全な無音)
対象「決まってる」
(記録途切れ)
---
【自己記録】
・思考が整理できない
・問いと答えの区別が曖昧
・“選ぶ”という感覚が希薄
一つだけ、はっきりしていることがある。
――ここまで来た時点で、戻ることはできない。
---
【観察者メモ】
本対象はこれまでの存在とは異なる。
これは外部存在ではなく、
**“過程そのもの”**
である。
記録者はこれまで、
・分ける
・理解する
・対話する
という行為を繰り返してきた。
だがそれ自体が、
この存在に至るための“誘導”であった可能性が高い。
つまり、
選択は存在していない。
---
【編集部注】
本記録において、記録者の発話と対象の発話の境界は不明瞭である。
また、複数の閲覧者から以下の報告があった。
・途中から「自分が選んでいる感覚」になる
・文章の一部が“問いかけ”として認識される
・読了後に軽い解放感を感じる
なお、これらの感覚について、現時点で危険性は確認されていない。
---
(以上、UCCR-010)
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
選択というものは、自由に見えて、その実ほとんどが決まっています。
どちらを選んでも同じなら、それは本当に“選んだ”と言えるのでしょうか。
考えすぎなくて大丈夫です。
選ばなくても、進むものは進みますから。
――もう、ここまで来ていますしね。
それでは、最後の記録で。




