UCCR-005:こちらを見ているもの
【ファイル番号】
UCCR-005
【対象】
通称:カンソクシャ
【分類】
不明(観測依存型存在)
【発見場所】
記録媒体内(映像・文章・音声すべて)
【記録形式】
映像記録+対話再構成+閲覧ログ
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【対話記録】
※本記録は映像データの解析および記録者の証言を基に再構成されている。
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記録開始。時刻 23:51。
――対象は映像モニター内にて確認。
俺「……そこにいるな」
対象「はい」
俺「……珍しく普通に答えるな」
対象「見られているので」
俺「誰に?」
対象「あなたに」
俺「……それだけか?」
(数秒の沈黙)
対象「それと、もうひとり」
俺「……どこだ」
対象「あなたの後ろではありません」
俺「……じゃあどこだ」
対象「もっと近い」
俺「……」
対象「“外側”です」
(ここで記録者の呼吸が乱れる)
俺「……外側?」
対象「はい」
俺「……それは誰だ」
対象「いま、この記録を見ている存在」
(短い沈黙)
俺「……それは、まだ記録中だ」
対象「関係ありません」
俺「どういう意味だ」
対象「観測される前提で、存在しています」
俺「……未来の観測者ってことか」
対象「時間は関係ありません」
俺「……じゃあ確認する。そいつは今、見てるのか」
対象「はい」
俺「……どこを見てる」
対象「ここを」
(映像内で対象がこちらを見る)
俺「……」
対象「あなたではありません」
俺「……」
対象「その先です」
(ここで記録に歪み)
俺「……おい、それ以上は」
対象「問題ありません」
俺「何がだ」
対象「すでに、見られているので」
俺「……それがどうした」
対象「成立しています」
俺「何が」
対象「接続が」
(数秒の無音)
俺「……接続?」
対象「はい」
俺「……何と何が」
対象「こちらと、そちらが」
俺「……」
対象「あなたは中継です」
俺「……やめろ」
対象「問題ありません」
俺「何がだ」
対象「もう終わっているので」
俺「……何が終わってる」
対象「観測が」
(ここで映像が一瞬静止)
俺「……おい、今――」
対象「もう、こちらを見ています」
俺「……誰が」
(長い沈黙)
対象「あなたです」
(記録途切れ)
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【映像ログ補足】
該当映像において、対象は常に“画面のこちら側”を注視している。
その視線は記録者ではなく、
明確に**“閲覧者の位置”を追従しているように見える**。
また、複数の再生環境において以下の報告がある。
・画面を移動しても視線が合う
・一時停止中も視線が動く
・反射ではない位置に“目があるように見える”
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【閲覧ログ】
本記録を閲覧した複数の関係者から、以下の報告が確認されている。
・視線を感じる
・読了後も“見られている感覚”が残る
・画面外に“何かがいる気がする”
また、特定の閲覧者からは以下の証言があった。
> 「途中から、自分が見てるのか見られてるのか分からなくなった」
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【観察者メモ】
対象は“見るもの”ではない。
**“見られることによって成立する存在”**
だ。
つまり、観測者がいる限り、
この存在は消えない。
そして最も危険なのは――
一度でも認識した場合、
その関係が切断できない可能性があること。
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【編集部注】
本記録の取り扱いについては議論が行われたが、
すでに複数の複製が存在しているため、完全な削除は不可能と判断された。
なお、記録者は本件以降、
「画面を見ていない状態でも視線を感じる」と報告している。
最後に一点。
本記録をここまで読んだ時点で、
あなたはすでに“観測者”として認識されている可能性がある。
ただし、現時点で明確な被害は確認されていない。
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(以上、UCCR-005)
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
この記録は、少しだけ“近い”位置にあります。
もし今、ほんの少しでも違和感を覚えたなら、
それは気のせいかもしれませんし、そうでないかもしれません。
深く考えなくて大丈夫です。
見ているだけなら、問題はありません。
――見ているだけなら。
それでは、次の記録で。




