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銀の伝承  作者: 銀の伝承
第八章「神域決戦編」
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第167話「最終戦」

太陽が完全に昇りきる前に世界は、沈黙を失った。

ガウレムが吼える。それは万象を震わせる怒声。

空間が震え、重力が歪む。


彼の背後に現れた巨大な魔法陣が、濃密な闇のエネルギーを呼び出した。


「終焉を告げるのは、この一撃だ」


黒と赤の雷が暴走し、大気が裂ける。

ガウレムの掌に集約されたその力は、惑星の核すら破壊する開幕の咆哮。


ブリシンガーも動いた。

剣を横薙ぎに構え、黄金の光を収束させる。その刃から立ち昇る光は、まるで太陽の核そのもの。


「行くぞ……!」


閃光。世界を貫くような、光と闇の衝突。

二人の一撃が、天地の境界でぶつかり合った。


その瞬間、すでに半分壊れている地球が更に半分に消し飛んだ。

音は、しばらく遅れてやって来た。地響きとも悲鳴ともつかない咆哮が、大地の奥底から響きわたる。


地球は、わずか数秒で、かつての姿を大きく失った。

その中心で二つの存在が、なおも交差していた。


ブリシンガーとガウレム。

英雄と呼ばれた男と、神を超えた存在。

もはや彼らの戦いは、単なる「力」としての衝突ではなかった。

意思そのもののぶつかり合い。


ブリシンガーの振るう一閃は、時間軸すら斬り裂き、ガウレムの放つ一撃は、因果律を逆流させる。

それらすべてが、戦いという形を持って、今この空間に現れていた。


剣が鳴るたび、過去が揺れる。

拳が交わるたび、未来が書き換わる。

そこから、異なる未来が垣間見える。滅びた地球、別の形をした宇宙。

それらすべての可能性が、一瞬だけ現れては、次の瞬間、砕け散った。


「……やはり……前とは違うな」

そう呟いたのは、ガウレムの方だった。

その声音には、「好敵手」としての認識が込められている。


ブリシンガーの瞳が、輝きを増す。

剣を振るう。

だがその瞬の交差でガウレムがわずかに優位に立った。


「……くっ……!」

ほんの一瞬、ガウレムの拳が腹部をかすめただけで、空間ごと抉れ、彼の体が吹き飛んだ。

数百メートル先まで叩きつけられた地面が、地殻ごと割れる。


立ち上がる。剣を支えにして、崩れかけた膝を立て直す。


(……やはり、まだ……届かない……)


確かに前よりは戦えている、だが、お世辞にも勝っているとは言えなかった。

ほんのわずかずつ。

少しずつ、確実に押されている。それが、破壊神ガウレムの完璧というものの重みだった。


ブリシンガーが踏み込む。

回転する剣閃が時間差で爆ぜ、四重に重なった光の斬撃が軌道を描きながらガウレムへ迫る。

その一太刀ごとに、空間が何重に切断される。


しかしガウレムは微動だにせず、口元にわずかな嗤いを浮かべる。

「その程度の技で我に挑むか」


彼の腕が残像を残しながら一瞬で別の位置に転移し、見えていないはずの斬撃全てを的確に捉えて打ち払う。


その返しに拳を一閃。

ブリシンガーは剣を旋回させて受け流すが、全て受け切れずにそのまま地に叩きつけられる。


即座に反転。

上空から滝のように振るわれる十数連撃。

それはまるで光の剣雨だった。


しかしガウレムが手を広げると、そこに現れたのは因果律を歪ませる盾の陣形。

ブリシンガーの斬撃は、一つ残らず到達前に逸れていく。


「これが、完全な力というものだ」

ガウレムが指を弾く。

瞬間、ブリシンガーの足元が爆ぜる。

ブリシンガーは滑るように後退してかわす。だがー


(読まれている……!)

その瞬間、後方の空間が炸裂。


逃げた先を読まれていた。爆発した空間が、彼の背を焼く。


「ッ……!」


彼は空中で一回転し、地面に着地。しかし、ダメージで膝がわずかに沈んだ。

たったそれだけの遅れ。だが、戦況はそれを見逃さない。


「貴様に先手を取らせぬ」


だが、ブリシンガーもまた黙ってはいない。

「時界返し!!」

斬撃を放ち、それを空間が吸収。それを時差発動で呼び戻す技。

数秒前の剣閃が、ガウレムの背後から再現される。


「遅い」


それを、まるで予見していたかのように掴み、粉砕。

記憶すら力で破壊するという暴挙。ブリシンガーの技術が、力で塗り潰された。


(マズい……!)


反撃に転じたガウレムの爪が、ブリシンガーの左肩を斬り裂く。

肉が裂け、血が舞った。逃れるために、急上昇。

だが、ガウレムが待ち構えていた。


上空から、掌底を叩きつける。

その一撃が、ブリシンガーの胸部に命中。

爆発する衝撃。

彼は彗星のごとく落下し、大地に叩きつけられる。


確実に、差が開いてきていた。

力でも、技でも、速度でも、ガウレムが上にいる。


だが、その目にはまだ決して諦めぬ光が宿っている。

その動きには、かすかな淀み。戦況は、静かに、しかし確実に傾き始めていた。

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