第18話 死神と世界の終わり
あれからそれなりの日数が経過した。
何日にかに一度は死神はティナの集めた魂の総量をチェックだけしていた。
「ふむ・・・まぁ進行的には遅れ気味ですが着実に少しずつ集めてはこれてるようですね」
死神の目の前の水晶の中にはティナがあの世界で因果を持って死んだ者の魂が輪廻する事無く集められている。
世界が滅ぶ日までに予定数の魂が集められるのか少し気になる死神であったが・・・
「予定数に達しなくて失敗に終わってもそれはそれで良い経験となるでしょう・・・今後の為にも」
ティナを助手の死神として今後も使おうと考える死神はお気に入りのティナを言葉で攻めるのを想像して興奮していた。
人の命を操り殺す対象でしかない死神にとっても初めての感覚であった。
そうして死神は再び姿を消す。
また別の世界の魂を回収しに行ったのだ。
そして、瞬く間に日は流れ遂にティナを送った世界が滅びるその日となった。
自分の仕事を終えていつも通りにティナの集めた魂の確認に戻った死神は驚きに包まれていた。
「これは?!今日一日でこれ程の魂を集めたのですか!?素晴らしい・・・」
嬉しそうに水晶を見詰めた死神はティナを迎えに行く為の時間を確認する。
世界が終わる午前0時までにティナを回収しないと世界と共にティナは完全に消滅してしまうのだ。
「そうですね、少し早いですがもう十分でしょう」
そう呟き水晶に予定数を超える魂が集まっているのを確認した死神はティナを回収しにその世界へ移動する為に闇に溶けるのであった・・・
「やりましたねブラン隊長」
兵士の1人が口にした言葉が聞こえるのに気付いて死神は姿を消したまま天井付近に待機する。
柱の影にティナが身を隠して様子を伺っているのを見て最後の仕事をしているのだと考えたのだ。
そして、1人・・・また1人と手にしている武器に命を吸い取られ死んでいく人間を見て死神は感心する。
(なるほど、この1日の為に仕込んだ物ですか・・・素晴らしい)
ティナがどうやったのか分からないがこの場に居る人間が持っている武器を使用すればティナとの因果が繋がりその命は武器に吸い取られる。
つまり使用するだけで魂の回収が成せると言う形を作ったティナに心から賞賛を送る死神は柱の影から出てきたティナの目を見て驚いた。
覚悟・・・そう、まるで覚悟を決めた様なその瞳に死神は心を揺らされる・・・
(あぁ・・・壊したい、何て素敵なんだ。今すぐに滅茶苦茶にして壊してしまいたい・・・)
だがその気持ちは声に出さずティナが部屋の中央で大きく息を吐いて力を解除する。
それは死神が与えたダブルの能力、ティナが他人に自分以外の姿を見せて自分の姿を見えなくする能力。
初め聞いた時はなんて不便な能力を選ぶのかと思った死神であったが結果を見てティナが予想を遥かに超える存在であった事に喜ぶ。
そして、黒い靄となった死神はティナに話しかける。
「ティナ、もう十分ですよ。予定数の魂は集まりました」
ティナは天井から聞こえたその声に顔を上げた。
初めて見た時からその目には死神に対する恐怖の感情は一切無かった。
それが今では睨み付けるような瞳で死神を見ている。
死神にとってそれはとてつもない喜びでもあった。
「もう疲れたわ」
「はい、私の言いつけ通りによく頑張りましたね。さぁ一緒に戻りましょうか」
丁寧に話す死神であったがティナは表情を変えずに死神に向かって言い放つ。
「嫌よ、もう私はあそこには戻らない。もう私の両手はこんなに血に塗れてしまった。もう元の私には・・・」
声が枯れる様に搾り出される声に死神は心を打たれる。
人間の持つ喜怒哀楽の感情を普段気にも止めない死神にとっては刺激的過ぎたのだ。
だがティナを手放す気は全く無い死神は言い放つ。
「駄目ですよ、貴女はお気に入りなのですから・・・」
「私を解放する気は無いんでしょ?だったらこうするまでよ!」
死神の言葉にティナは反抗し手にしていた短剣を自らの心臓に突き立てる!
それを傍観していた死神は嬉しそうに笑いながら口にする。
「ティナ、言った筈ですよ。貴女はお気に入りなのです。死なせはしませんよ」
心臓に短剣を突きたてたティナが蹲る前に死神は黒い霧を集めて具現化する。
ティナの傷を治す為には肉体を持たねばならないのだ。
そして、ティナの背中に手を乗せて魔力を流す・・・
自殺すらも認めない、その命まで全て自由にはならないと死神は以前伝えた通りティナを治す。
だが・・・
「それを・・・待ってたわ!」
「なっ?!」
心臓に短剣が突き刺さったままのティナが顔を上げてもう一本の短剣を体当たりするように死神の心臓に突き立てた!
死神は驚きはしたがそれでも神である、肉体を具現化しているとはいえ殺されても消滅する筈が無い。
その無駄な抵抗にほくそ笑む死神はティナの頭を掴んで横の壁へ放り投げる!
「ぎゃあ?!」
背中を壁にぶつけてそのまま床へ倒れこむティナ、互いに心臓に短剣が刺さっている状態ではあるがその意味合いは大きく違う。
闇に戻れば傷なんて無かったことになる死神とそのままなら死んでしまうティナ、その差は歴然であった。
だが・・・
「なっ?!これは?!」
死神は脳裏に浮かんだ映像に驚きの声を上げる。
それは自分が消えてなくなる映像であった。
慌てて心臓に刺さった短剣を引き抜いて捨てる死神だったが床に倒れたままのティナが笑い出す。
「ははは・・・あははははははははは・・・・勝った。私は勝ったんだ!」
ティナのその顔色は出血で青白くなり死神はもうすぐ自分が死ねると喜んでいるのだと喜んでいると感じさせた。
死神はその異様な様子に生まれて初めて恐怖と言うものを感じた。
そしてそれは既に成されていたのであった。
「それじゃあさようなら死神さん素敵なプレゼントありがとうね」
「なっ?!」
そして、ティナの体が黒い霧となり浮かび上がるその光景に目を疑った。
死神は理解したのだ。
「そ、そうか・・・あの短剣・・・」
「ご名答、アレは互いの心臓に刺せばその能力を交換できる『完魂相殺の短剣』よ。使えば互いの能力を交換できる代わりに二人共心臓を貫いてまもなく死ぬ呪いの武具、だから・・・」
そう言ってティナは目の前に時計の様な物を表示させる。
それは死神が世界を管理する時に使用する世界の寿命を知らせる時計。
それを出現させたと言うことは死神の全能力がティナに渡ったという事である。
「残り5分、それが死神さんの寿命よ。楽しんでね、それじゃあバイバイ」
「ま、待て?!待ってくれ?!」
そうしてティナは闇の中へ消えてこの世界を去る。
後に残されたのは心臓に短剣が刺さった状態の死神だけであった。
この短剣を抜けば一気に出血をしてそのまま死ねる、だが抜かずに耐えたとしても5分後にはこの世界と共に消滅する。
死神は自らの能力に助かる方法が何か無いのかティナには教えてなかったこの世界の言霊を発する。
「ステータスオープン!」
残り4分となった世界で死神は必死に自らのステータスを目にして目を見開いた。
そして、全てを悟って笑い出した。
「ははは・・・なんて事だ。そう言うことだったのか・・・全て計画通りだったというわけか・・・くくく・・・あーはっはっはっはっはっ!!!」
大量の死体が転がるその部屋で死神は最後のその瞬間まで笑い続けた。
口から血を吐こうが気にもせずに自らの最後を看取る人も居ない状況でその瞬間を迎えるのであった。
闇ではなく無、一切が瞬時に虚無に返るその瞬間死神だけでなく世界そのものが一瞬にして無に消えるのであった・・・
第4章 死神 完
さぁ、次回から最終章に突入します!
結構独特な作品なので読まれた方の感想是非お聞きしたいので宜しくお願いします。




