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第19話 ティナの目覚め

森の中に立ち尽くす少女・・・

彼女の名はティナ。

ゆっくりと目を開いて自らの手足を確認し地面を何度か踏む。


「やった・・・地面だ・・・」


地を踏みしめながら肌に触れる暖かい空気に幸せを感じる。

どれ程の時間闇の中に囚われていたのか検討も付かない。

フト近くの木に自らの背丈を合わせて確認して身長がそれ程変化していない様子に無言で頷く。

自分の姿がまだ少女のままである事に安堵したティナは闇の中に囚われていた間成長が止まっていたのか時間がそれ程流れていないのか・・・

どちらにしろ自分の顔が見たいと考えたティナは森の中を歩き出す。


「なんでだろう・・・こっちって分かる、あの神様のおかげかな?」


ティナは森の中の獣道を進む。

自らの姿が前に居た世界で最後にしていた服装であった為に少し動き辛かったがそれでも半刻程で森を抜け町が見えた。

その外壁を回り込むように歩き町の入り口と思われる場所に辿り着いた彼女に声が掛けられる。


「ん?どうした君?」


門番をしている兵士が優しそうな顔をして声を掛けてきたので頭に浮かんだ内容を返す。


「実は魔人族に旅の途中で襲撃に遭って、家族ともバラバラになったのですが森の中で獣に襲われて・・・」

「そうか・・・大変だったな、とりあえずここは安全だ。詰め所の中で暖かい飲み物でも飲んでいくといい」


不思議だ。確かにこんな女の子が1人森の中から出てきたらもっと怪しんでもいいと思うのだが・・・

そう考えたティナはフト兵士の目線に気が付く。

あっ・・・

そうである、兵士にはボロボロのマントを纏った女の子の姿がティナの横に映っていたのである。


「これが・・・私の新しい力?」

「ん?どうかしたかい?」

「いいえ、ありがとうございます。大丈夫です」

「そうか、とりあえずようこそ『プロメタの町』へ」


その後、詰め所で暖かい飲み物を頂きこの町が自分の目的の町だった事に安堵したティナは町にある孤児院に案内された。

そこでシスターに寝床を借りる事が出来、その日は就寝したのであったが・・・


「痛い・・・何これ・・・頭が・・・」


毛布に包まるティナは突如襲い掛かる頭痛に苦しみながら横になっていた。

そして、痛みがスッと消えると共にこの先自分がしなければならない事を理解し覚悟を決めそのまま意識を失うのであった・・・







アレから3日が過ぎた。

孤児院に居た他の子供と一緒に遊んだりしながらこの町の中を案内してもらったりして自分が行かなければならない場所を把握したティナは村の門まで来ていた。

兵士に他の子供が挨拶をしていつもの様に山菜等を取りに出る了承を頂いて町の外に出たティナ達はこの数日と同じように木々の合間から食べれる山菜を収穫していく。

そして、そいつはやってきた。

一見すると熊に見えそうな大きな獣、そいつが獲物を見つけたと嬉しそうに涎を垂らして近寄ってきたのだ。


「皆、逃げて!」


私の声と共に収穫していた山菜を投げ捨てて次々と街道の方へ駆けて行く子供達。

大丈夫、私にはこれがあるから!


「こっちよ!」


声だけ出してティナはゆっくりと足音を立てない様に熊の魔物を見詰めながら後ろへ下がる。

すると熊の魔物は誰も居ない方向を向いてそっちへ追いかけていった。


「上手くいったわ」


そう、ティナはダブルを使って熊に自分の偽者を見せて走り去る様に見せたのだ。

この力は使用者のティナの姿が見えなくなり映し出された幻覚のティナが見えるようになるので便利であった。


「さぁ、私も逃げないと・・・」


そうして振り返ったティナは絶句する。

目の前にもう一匹熊の魔物が立ちはだかっていたのだ。


「う・・・そ・・・」


振り下ろされる腕に吹き飛ばされ木に背中をぶつけたティナは咳き込みながら熊をにダブルを使おうと顔を上げる。

だが既に遅かった。

魔物は走ってティナに迫っておりその口が大きく開けられていた。


「アァ・・・いやぁあああああああああ!!!!ごふっ」


腹部に走る激痛、背骨がボキボキ噛み砕かれながら口から溢れる血に叫び声が止まる。

口に咥えられて持ち上げられたティナは本能的にもう駄目と悟っていた。


「う・・・そ・・・まだ・・・なにも・・・」


薄らぐ意識の中で熊の魔物にこのまま食べられると言うのが彼女の最後に考えた事であった。








「失せなさい!」


突然圧迫されていた感覚が無くなり地面に落ちる衝撃で激痛が走り意識を戻すティナ。

だが腹部の傷が深く声も出せないティナの目に人影が写っていた。


「全く、貴女はお気に入りなのですから勝手に死なれたら困るんですよ」


聞き覚えのあるその声が神様だと理解したティナの脳裏に頭痛が走る。


「全く、治療関係に至っては苦手分野なのですよ私は・・・こうして肉体を持たないと使えないのもありますからね」


治療には肉体が必要?

それが脳裏に刻まれた事をティナは不思議に思いながら先程までの激痛がまるで無かったかの様に消えた事に安堵した。

そして、死の直前彼女は走馬灯の様に思い出していたのだ。

その戻った記憶が複雑すぎてティナは言葉を発する事無く目の前の青年を見詰める・・・


「フフフッ不思議ですか?貴女は死なせませんよ、人が死ぬ時に死んでから自然に魂が抜けるまで少し猶予がありますからね。その間にこうして治してあげますよ」


口にしている言葉が脳裏に刻まれる、そして思い出す。

こいつだ・・・こいつが私を・・・

ティナの心の中が黒く染まっていく・・・

そして、理由は分からないがティナは理解をした。


「そうか・・・これなら・・・」


目の前の青年は既にその姿を無くしていたがティナは気にせずに鋭い目つきで振り返り街道の方へ足を進めるのであった。

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