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二人は搭乗手続きを済ませて機内に入ると、疲れからかすぐにぐっすりと眠りにつく。
仲睦まじく頭を寄せて眠る二人に、キャビンアテンダントの女性は微笑んで優しくブランケットをかけた。
* * *
五時間半ほどかけ、サンフランシスコ国際空港に到着した二人は、目をこすりながらすぐさまタクシーに乗り込んだ。
タクシーは朝のラッシュの中を二十分ほどゆっくりと走り、サンフランシスコ市街中心にあるマーケットストリート沿いの高級ホテルの前で止まった。
二人は無言でチェックインを済ませて部屋に入ると、リエリはすぐにシャワーを浴びにバスルームに向かった。
シンは拘置所での疲労がまだ蓄積しているのか、すぐにベッドに横になり、目を閉じる。
三十分ほどでバスルームのドアが開く音がした。
リエリは、バスタオル一枚でベッドルームまで歩いてくる。
「ふう、スッキリしたぁ! げぇ! 手錠のとこ跡になってるぅ……。見てよシン、これ! って……寝てるし」
リエリは、ベッドに横になり、シンの寝顔を観察するように見ている。
「カワイイ」
リエリはその後もしばらく見ていたが、次第に眠そうな表情に変わっていった。
* * *
翌日、シンは早朝に目を覚ました。
隣に眠るリエリに驚きながらも、起こさないようゆっくりと起き上がった。そして、顔を洗い、歯磨きを早々に済ませた。
シンは、薄暗い部屋のデスクに座ると、視界に画面を十数個浮かべ、次々に内容をチェックしていく。
しばらくして、リエリがベッドの上で大きな伸びをした。
「ふぁ、よく寝たぁ…………。おはよ、シン」
「おはよう」
「あえ? あたしぃ、バスタオルのまま寝ちゃった」
「……」
シンは、デスクの鏡に映るリエリが視界に入らないように、体の向きを窓側に向けた。
「シン、何しあえべてうの?」
リエリは眠そうにして呂律が回っていない。
「ニュース。ここ数日、何も見れなかったから。……これ、見て」
シンはそう言いながら、視線は窓に向けたまま、背後のリエリに向かって画面を後方にスナップした。
「……ん? 『アム復活 EU圏で囚人の意識消失相次ぐ』――え? なにこれ? シンは日本にいたじゃない、ずっと」
「万引きした罰として奉仕活動をしている最中に粛清されたとか、粛清された受刑者が目を覚まさないとか、EU圏で情報が錯綜して混乱が起き始めてる」
「どういうこと、シンじゃないのよね?」
「俺じゃない。EU圏にも能力者がいるということで間違いないと思う。しかも、複数人いる。イングランドとスペインで粛清が十分以内に起きてる。能力の有効範囲から考えて、別人の行動だと思う」
「……能力者って、EU圏にもいたのね……これからどうするの?」
「能力者は俺一人でいい。俺が奪って、管理する。そのために――」
「どうしたの?」
「――アメリカでも、粛清が起きたって速報が出た」
「え? また!? 能力者って、一体どれだけいるのよ!?」
「……前から能力者は日本だけじゃないかも知れないと思ってたけど、一ノ瀬が俺と同じデリーターを持ってると言ったときに、それは確信に変わった。明らかに能力が拡散していってる……。こうなる前に、神の眼を世界中に広げていって、そのあと運用を乗っ取って、能力者を特定するつもりだったんだけど……。」
「そ、そんなことまで考えてたの」
「でも、今回の成功で、能力者を特定する必要はなくなった」
「あの遮断するやつを、インストールしてもらえばいいってことでしょ?」
「そう。だからただ単純に、世界中の誰もが必ずアクセスするサイトに、信号遮断プログラムをウイルスとして仕込めばいい。――例えば、世界最大の動画サイト〈マイビュー〉とかに。番組、映画、ニュース、SNS、あらゆるニーズで〈マイビュー〉は利用されてるから」
「でもそんなこと、どうやってするの? いくらシンがそういう系詳しいからって、そんな簡単にウイルスなんて入れられないでしょ? あんな有名なサイト、すっごい厳重な対策があるんじゃない?」
リエリは、眉毛を八の字にして、疑問あり気な表情をシンに向けた。
「そう、無理。とてもハッキングしてウイルスなんて仕込めない。でも、ハッキングじゃない方法ならできる。――こそこそやる必要は全くない、ただ直接、〈マイビュー〉を管理してる会社に乗り込む」
「し、シンって、大人しそうなのに、すごい行動力あるよね」
「そう? だから俺は、本社があるマウンテンビューに行こうと思う。実はここから四十分くらいの距離にある場所なんだ」
「私も行く」
「危ないよ? 撃たれるかも」
「……いいもん。能力をシンに移すのに、あと二日かかるよ。急いでるんでしょ?」
「ありがとう」
シンはそう言いながら、少し恥ずかしそうにリエリの方を向いた。
「いえいえ」
リエリは得意げな表情をシンに向けた。




