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56- ──写真撮影──

2091.11.11 Sun. 17:22 JST



 リエリは、古びたスタジオの窓から誰かを待つように外を見つめている。


 スタジオの内壁は白を基調とした年季の入ったレンガでできており、床も同じく年季の入ったフローリングで、その上にソファが一つポツンと置いてある。


 しばらくすると、スタジオのベルを鳴らす音が聞こえた。


「やっときた……ハイハーイ! 今開けまーす!」


 リエリはそう言いながら宙で手の平を押し出した。そして、「ふぅ」と大きく息を吸うと、部屋のドアを開け放ち、壁とドアの間に身を隠した。


 すぐにリエリがいる部屋に床が軋む音が立った。


「す、すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー? リエリちゃんの特別写真会に来た者ですがー」

「――わ!!」


 リエリは驚かすような声を出して、隙間から飛び出た。


「うわっ!! リエリちゃん!! 本物だ!!」

「フフ、本物です。リエリとの二人きりの特別写真会にようこそ!」

「うわあ……本物だ。来てよかったあ。あれ、本当に他のスタッフさん達はいないんだね!」


 青いリュックを背負った高校生位の少年は、目を大きく見開いてリエリに言った。


「スタッフさん達は別部屋にいるけどね。この部屋に二人きりだからって変なことしないようにね! 監視カメラもちゃんとあるよ、フフ」

「ハハハハ、そりゃそうだよね」


「なんかよく分からないんだけど、あとで番組で使うらしいから、最初にこのソフトをインストールしてもらって、あと、この帳票に住所と名前を入力して、書いてあるメールアドレスに送ってくださーい」

「うん、すぐ書くよ!」


 リエリが首をかしげてリュックの少年に依頼すると、少年はにやけて答えた。リエリは宙で二度、少年に向かって手の平を胸元から押し出した。


「あ、きたよ! ソフトと帳票!」


 少年は忙しなく宙をタップしていく。


「…………。ヨシ! 書いた!」

「はーい。じゃあ送ってくださーい!」


少年は手の平をリエリに向けて、軽く押し出した。


「送ったよ! えっと、あ! インストールも終わってるよ!」

「ヨシ!! じゃ、さっそく始めましょ。制限時間一五分で~す!」


 リエリはいつもにも増して元気よく声を上げた。


* * *


 撮影会が終了すると、少年は満足気な表情を浮かべてスタジオから出て行った。


「……。シン、あとは、待つだけでいいのよね? 大丈夫かな、拘置所って寒くないのかな……。ご飯ってちゃんと食べれるのかな……」


 リエリは心配そうな表情で窓の外を見た。

 外はすっかり夕暮れで、雲が真っ赤に染まって流れていく。


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