43- ──狂気乱舞──
2091.11.07 Wed. 11:44 JST
カイが運転するクルマは町田刑務所の正門を進み、ロータリー横の面会者駐車場に止まった。
三人は高揚を抑えられなかった。
抑えることなどできようはずもない。
やっと、やっと、この腐った世の中に自らの手で力で鉄槌を下せるのだから。
「行こう。これは健全な社会のための〝間引き〟だ」
一言カイが二人に告げると、リクとショウは静かに「うん」「ああ」と返した。
三人はクルマから降り、刑務所面会受付に向かう。
各々銃火器で武装した三人の目は、若干十四歳の子供達がしていい目では到底ない。
殺傷に一切の躊躇のない、まるでただ冷徹に任務をこなす歴戦の兵士のような、ある種の透明感がある。
そこから三人による、まさに〝粛清〟が始まった。
三人が受付建屋に入ると、悲鳴と共にすぐさまけたたましいサイレンが鳴り始める。
「ウゥゥゥウウウ」とどこまでもどこまでも高鳴っていく不気味なサイレンは、三人のシナプスを麻薬のように刺激し、高揚感を更に醸成していく。
悲鳴に動じることなくカイが静かな動作で《ŁŌCK》ボタンを押す。
すると三人を除く全ての人間が一瞬にして、支えを失った人形のごとくその場に倒れ込んだ。
世界のどんな特殊部隊でも抗えない、それほどの強大な力の行使。
それを見る価値もないとばかりに当然のごとく三人は奥に進んでいく。
窓のない渡り廊下を三人は静かに進む。
そして、その先にある建屋に足を踏み入れた。
ついに、ついに、到達したのだ。
やっと、やっと、辿り着いたのだ。
──そう受刑者がいる建屋に。
昼時の受刑者は皆、食堂で昼食をとっていることを事前にカイは調べていた。そして、その場所も。
三人は、すぐに右手に進む。
進むにつれ、次第に喧噪が大きくなっていく。
食欲を刺激する醤油の焦げた甘い香りは、三人の脳内でバグって変換され、破壊衝動をより一層強く刺激した。
そして、三人の瞳は、ついに〝受刑者〟を映した。
──瞬間、入り口側の受刑者の数人が三人にバッと振り返った。
戦争でもしにきたかという重武装で立つ三人を見て、振り返った受刑者は全員顎が弛緩し、口に含んだ半固形の昼食がどろりと下唇を伝わる。
ついに、ついに、彼らの十四年の生涯の中で、他の子供達とは異質の濃密に蓄積された感情は、出口を見つけたのだ。それを全て絞り出すようにリクとショウが吠える。
「やれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ! カイィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!」




