40- ──ŁŌCKĒR──
三人は、力=つまり〝銃〟を手に入れたら、まず最初に町田刑務所に突入するという計画を立てた。調べた結果、日本最大の刑務所にして、凶悪犯の巣窟だと分かったからだ。
しかし、肝心の銃がいつまで経っても手に入らなかった。
アムに裏切られて以降、三人はどうやったら銃を手に入れることができるか、毎日ひたすらに調べ続けた。しかし、日本の強固な規制を突破して銃を手に入れることは、子供はもちろん大人でも容易なことではなく、三人は毎日のように落胆した。
* * *
ある夜、カイは銃の入手方法を調べているときにビットウイルスに感染した。
瞬く間にカイの視界には【Thank you for installing.】とメッセージが現れ、カイは頭を抱えた。
「ヤベ、なんか変なウイルスに感染した」カイは同じ部屋にいるリクとショウにぼそっと言った。
「海外のエロ動画でも見てたのか?」ショウが返す。
「カイはショウと違ってそんなの見ないよ」リクが諭すようにショウに言う。
「なんだこの画面?」カイは視界に浮かぶ【ŁŌCKĒR】と表示された画面に興味を示した。
画面には、〈Direction〉、〈Distance〉、〈Serial Number〉の三列があり、それぞれに矢印や数値、英数字が並んでいる。
カイが適当に一つを選んでタップすると、画面が切り替わった。
そして更に画面を適当にタップしていく。
「〝お気に入りエロ動画まとめ1〟?」カイがぼそっとそう言うと、──その瞬間、ショウはバッとカイに振り向き、目を見開いた。
「な、な、なんで知ってんだよ……それを」
「これ、ショウのフォルダ? なんか、見えてんだけど俺に」カイは首を傾げた。
「そ、それ、俺のビットの保存フォルダの名前。昨日保存したやつ」ショウは驚きと恥ずかしさが入り混じった表情でカイを見た。
「あ。そのエロ動画のフォルダにチェック入れてみたら【ŁŌCK】ってボタン出てきた」
「ロック? 何それ面白そうだね、押してみたら?」リクは興味津々に反応した。
「や、やめろって。多分俺のフォルダだ、それ」ショウはカイに飛びついて腕を引っ張った。
カイはショウを振り払い、点滅する【ŁŌCK】ボタン試しに押してみた。
するとすぐに、カイの視界に【All done】とメッセージがでかでかと表示された。
「何か起こった?」リクがカイに尋ねるも、「いや、何も」とカイは返す。
「はあ、よかった」ショウは安堵するとフォルダの中身を念のため確認しようとした。
──次の瞬間、カイは声を荒げた。
「なああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!開けねぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
「開けないのか?」リクとカイは何が起こったのか理解できず、たかだかエロ動画ごときで悲痛な叫び声をあげるショウを面白がった。
「そのエロ動画フォルダを、ボタンの意味通り〝ロック〟したのかな?」リクがつぶやいた。
「そうかも」カイはでかでかと表示されたメッセージを閉じた。
「【This record is locked】ってなんだよ、これ。……も、戻してくれ。多分、カイがその分けわからんボタンを押したせいだ。き、昨日頑張って集めたんだよ。し、しかも、冒頭は削って、いいとこだけに全部編集したんだよ」ショウはカイに嘆願した。
リクとカイは呆れた表情でショウに向けた。
「俺とリクが頑張って銃探してるときにお前……」カイは窘めたが、中学生が性に興味を示すのは当然のことで、そこはリクもカイもよく実感していたため、呆れたもののそれ以上は言わなかった。
「……しょうがないだろ。いつまで経ってもいつまで経っても銃は手に入らないし、俺は早く銃を悪人にぶっ放したいんだよ。でも、できねぇ。ストレスで死にそうなんだよ」
三人は僅かの間、沈黙した。
「でもよく考えたら、これって結構すごいことじゃないか? 他人のビットの保存データを強制的に見れないようにできるってさ」
カイは二人にぼそっとそう言った。
「確かに、うん」
「それなりにはな」
リクとショウは頷いた。
「この画面にさ、薄く〝BRAIN〟ってボタンもあるんだよ。これ押したらどうなるんだろうな?」
「脳? へー、試してみようよ。──いや待った。脳ってこの脳?」リクが指で自身の頭を指して言う。
「脳……をロック……」ショウが考え込む。
三人は途端に同様して目を合わせた。
「ないないないないないない! そんなことできるわけないよ」リクが苦笑いを浮かべる。
「試すだけ試さないか?」
「誰にだよ?」
三人は沈黙して各々考え込む。
「……あのさ。どうせなら、試してほしい奴がいるんだ」
そう提案したのはリクだった。リクは以前のカイのような柔和な表情を一変させ、獲物を狙う鷹のような目で二人を見据えた。




