第五章:愛の解剖学と切開の祝宴
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地下室の照明が点滅し、並べられたホルマリン瓶に光を反射させる。今夜、この手術台はもはや実験の場ではない。源一郎と結莉の禁忌を象徴する愛の「祭壇」へと変貌していた。
【視点:風間結莉 — 神の助手】
私はシルクのドレスの上に、透明なビニールのエプロンを纏っている。お父様が私の背後に立ち、その大きく冷たい手で私の手を導き、メスを握らせた。
「心音を感じなさい、結莉」
お父様が私の首筋に囁く。彼の唇が私の耳たぶに触れ、手に伝わる金属の冷たさとは対照的な熱を運んでくる。「衛土は素晴らしい検体だ。真皮の大部分を失っても、なお生命の火を灯している」
私は深く息を吸い込み、お父様の白檀の香りと、衛土の血の鉄錆びた臭いが混ざり合った空気を肺に満たした。「まだ私たちを睨んでいますわ、お父様。その瞳にはまだ……希望が宿っています」
「ならば、その希望を摘出しよう、愛しい子よ」
お父様は私の剥き出しの肩に口づけ、私の手に力を込めた。「ここを切り裂きなさい。私に最も美しい切開を見せておくれ。私の右腕となり、私の一部となるのだ」
私は陶酔した。接吻と称賛の支配下で、私はうつ伏せに固定された衛土の背中の皮膚に刃を押し当てた。
――スゥゥゥッ……。
皮膚が裂ける音は、まるで絹布を引き裂く音のようだった。刃の先で、黄色い皮下脂肪と赤く脈打つ筋肉組織が震えるのを感じる。衛土が押し殺した呻きを漏らす。今夜の「交響曲」が野蛮な悲鳴で汚されないよう、お父様が彼の口を細い針金で縫い合わせたからだ。
「賢いな」とお父様が呟く。彼は電気焼灼器を手に取り、私に渡した。「さあ、血管を閉じなさい。この生贄の香りと共に、お前に口づけたい」
私が衛土の神経の末端を焼き潰すと、肉の焦げる臭いが立ち昇った。お父様は台の上で痙攣する衛土を無視し、私を振り向かせると、荒々しく唇を奪った。私の手に付いた血の生臭さが、彼の顔へと移る。この瞬間、私たちの他にこの世界に人間は存在しないのだと、そう確信した。
【視点:風間衛土 — 苛む意識】
痛い。
俺の世界は、焼けるような熱さと突き刺すような寒さだけで埋め尽くされている。結莉の持つ刃が、一ミリごとに肉に食い込むのを感じる。だが、その刃よりも痛烈なのは、奴らを見ることだった。
視界が霞む。重い瞼の隙間から、震えながらそこに立つ哀れな妹、結莉が見えた。彼女はもう、庭で蝶を追いかけていた少女ではない。父と呼んでいた男の影の下で、悍ましい執着を形にするための道具に成り下がってしまった。
源一郎は結莉の肩を掴む力を緩めない。その声は低く、獲物を狙う猛獣の唸りのようだ。「もっと近くで見なさい、結莉。目を背けてはいけない。知識には犠牲が伴う。そして今夜、衛土はお前の最高の教師だ」
結莉が声もなく咽び泣く。手術器具を握る手は激しく震えているが、肩を押さえる父の圧力が彼女の逃亡を許さない。これこそが、奴が俺たちに与える「愛」の形。魂をじわじわと磨り潰していく、絶対的な支配だった。
【視点:風間詩織 — 戸棚の裏の影】
私は冷たい器具棚の裏で丸まっている。消毒液の臭いが鼻を突き、生臭い香りと混ざり合って胃がむかつく。隠れ場所から、壁に映る彼らの影が見えた。家族であるはずの三つの影が、今や狂った儀式に取り憑かれている。
金属の擦れる音と、父の冷酷な指示が地下室に響き渡る。結莉お姉様が、すべての狂った命令に従わされているのが見えた。父はお姉様を、まるで拾ってきたばかりの人形のように扱い、その動きを死の如き厳格さで導いている。
「いいぞ、結莉。集中しなさい」父が呟く。「完璧な家族に、皮膚の下の秘密など不要だ。すべてを見せてもらおう」
私は膝を強く抱きしめた。悍ましい標本が詰まったガラス瓶の中で、私は一つのことに気づいた。この家において、慈しみは「鎖」であり、忠誠は「メス」なのだ。もしこの狂気を止める方法を見つけられなければ、この地下室が私たちの最後の安息の地になるだろう。
「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」




