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144『言わないでー!』

たしかにあの裸婦像はルーシェルと似ている……というよりほぼ生き写しだ。

なにしろそれを一番わかっているのは、ルーシェル本人だったし。



「ななな……なんで、私の石像が? しかも一糸も纏わぬ……」


「すごーい! リアルすぎー! 顔もそっくりだけど、身体もこの前一緒に温泉行ったときのまんまだー!」


「ククッ……クルリ様! 言わないでー!」



いつの間にか一緒に温泉に行ってたのかよ。

「毛……」とさらに何かを言いかけていた久留里の口を、ルーシェルが手で塞ぐ。

……毛?

それはともかく、なんでルーシェル本人から型を取ったかのような、そっくりな像がダンジョンにあるんだ?


顎に手を当てたポーズの雪奈が俺に話しかけてきた。



「世界中にあるダンジョンってルーシェルさんが因果に介入した結果、バグって増殖したものなのよね?」


「ああ、うん。ベースは神様が作ってるらしいけど」


「介入者の身体データみたいなものが取り込まれていて、あの像になったとか?」


「……そうなのかもしれないな」



恥ずかしがっているルーシェルを理解できないっぽい真希は冷めた目で見ている。



「別に石像くらいどうでもいいのに、本当の裸を見られたって私なら平気だけど」


「いや、それは君の羞恥心が薄いだけだろ……」



そして俺と五郎はルーシェルに大広間から追い出された。

扉は少し開いているので、中の状況は音でわかる。


ルーシェルは絶対魔法防壁アブソリュートウォールを何度も出しているらしく、断続的に魔法を弾く音が響いていた。


ルーシェル像は武器も持っていないし防具も身につけていなかったが、どうやら魔法を使ってくるようだ。


扉の外で待機している俺と五郎のところに雪奈がハチ公を連れてきた。

ハチ公はルーシェルにそっくりな像を攻撃したくないようで、危ないだけだからここに避難していた方がいいと雪奈は言った。



「どうだ? 勝てそうか?」


「……厳しいかも。像の魔法攻撃が強すぎて近寄れないし、こっちが魔法で攻撃しても対魔法防御が強すぎるの。ルーシェルさんの高すぎる魔力もコピーされてる可能性がある……たぶん倒せるとしたら……」



雪奈は一拍おいてから言った。



「勇人くんの、あの最強闇魔法だけ」


「……そっか」



俺は全員に大広間から出てもらい、扉の外に集まってもらった。

これから裸婦像をどうするかの作戦会議だ。



「あの像は武器も防具も持ってないから倒しても回収するものがないし、無理に倒す必要はないと思うけど」


「私も雪奈さんと同じ意見でーす!」



雪奈と久留里は「倒さないで帰ろう」派だ。



「なにも報酬がないとは思えないわ。倒したらアイテムボックスが出てくるギミックとかあるかもしれないわよ」


「まあ、残したままってのも、なんか気持ち悪いよな」



真希と五郎は「倒してから帰ろう」派だった。



「ルーシェルはどうしたい? 俺がやってみてもいいんだけど、正直ルーシェルの姿をしたものを闇魔法で攻撃するってのは抵抗あるかも」


「ユウト様……」



ルーシェルは自分の胸に手を置いて、少し上目遣いで俺の目をじっと見つめてきた。



「そのお言葉とても嬉しいです。ですが……私のことは気にせず、ありったけの魔力で思いっきりお願いします!」


「え?」


「だって……いつか上層階の存在を公表するのですよね? そうしたら他のギルドの皆さんもあの像と出会うかもしれないのですよね? 見るわけですよね? そんな……そんなの……わーっ! 粉々に壊してくださーい!」



ルーシェルは俺のローブを両手をしっかり掴んで、必死に懇願してきた。


わかりました……やらせていただきます。

ついでにアイテムボックスが出てくることを祈ろう。



俺とルーシェルは一緒に大広間に入った。


ルーシェルが絶対魔法防壁アブソリュートウォールを発動させ、表面に魔法陣が描かれているドームがふたりを包んだ。


俺は広間の中央にいるルーシェル像に向けて両手を突き出した。



「あの……できるだけ……見ないでいただけますと……」


「それは無理だって、この魔法は視界にちゃんと収めないと発動しないから」


「そ……そうですか……では、じっくりご覧になってください」


「そこまで、じっくり見る必要もないけど……」



俺が突き出した両腕に魔力を集中すると、ルーシェル像はそれに反応して、まるで本当の人間のように動き出した。



ルーシェル像の右手からは巨大な炎、左手からは激しい電撃がほとばしっている。

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