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133『土地って高いね』

久留里の転移魔法で下層1階へ行き、上層への四角い穴を開けたときの逆の手順で穴を閉じてから中野Cダンジョンを脱出した。


中野Cダンジョンがある神社の境内は木がたくさん植えられている。その枝の隙間から夕方の一番星が見えた。



「こんな小さなボールに閉じ込めてしまってかわいそうなので、ハチ公をはやく出してあげられたら良いのですが」



西新宿ギルドへ向かう社用車の中で、ルーシェルは“魔獣の門”を両手で大事そうに持ちながらそう言った。


俺もそうしてあげたいが、さて……どうしようか。


探窟家シーカーと遭遇しないようなダンジョン……過疎ダンジョンとか……いや、過疎ダンジョンだって絶対に人が入ってこないわけじゃないしな。


人がこれないという意味では元々ハチ公がいた中野Cダンジョン上層1階がベストなのかもしれないけれど、俺がいないとあそこには行けないから不便でもある。



あっ……そうだ!



西新宿ギルドオフィスに戻った俺は「魔王様♡ファンクラブ」の代表である龍洞様(姫里由衣)に連絡をとった。


「魔王様♡ファンクラブ」が前身の「巡窟教団」だった頃に信者への怪しげな儀式に使っていた池袋Bダンジョンが現在どうなっているのか確認をするためだ。


龍洞様は、池袋Bダンジョンはそのまま「魔王様♡ファンクラブ」が管理をしているが、とくに使われることはなく放置状態だと教えてくれた。



翌日、元「巡窟教団」本部だった建物に訪問した。

「魔王様にでしたら無償でお譲りします」と龍洞様は言ってきたけれど、そういうわけにもいかない。

せめて「巡窟教団」がダンジョンの土地を手に入れたときの金額で買い取りたいと伝え、その金額を教えてもらった。



……お、おおう……高いな。


池袋駅から徒歩10分でそれなりな広さがあると……1億円なんて軽く超えてくるんだな。


これから頑張ればなんとか買えるかもしれないけど……しばらくは「魔王様♡ファンクラブ」に借地料を支払おうかな。

自分のファンクラブが大家さんってのもおかしな話ではあるが。



「お金のことは後日ゆっくり決めましょう」と龍洞様が鍵を渡してくれたので、池袋Bダンジョンへと向かった。


ダンジョンでボールを投げて呪文を唱え、ハチ公を外に出す。

ハチ公はすぐにルーシェルにのころに行って、喉を鳴らしながら顔をなすりつけた。



「ハチ公! ここがあなたのおうちですよ! いつでも会いにこれますね!」


「ガウ! ガウ! ガウ!」



突然現れたケルベロスに鯨山さんは腰を抜かしている。

池袋Bダンジョンには俺、ルーシェル、鯨山さんの三人で潜っていた。



「あんな恐ろしい魔獣が仲間に……驚きです。それよりもビックリしたのは奥野さんとルーシェルさんが異世界の魔王とお姫様だったことですけど。あっ! でもルーシェルさんがお姫様かもしれないって私の直感、当たってたんですね!」



鯨山さんはちょっと得意げだ。


鯨山さんには上層階の存在も教えた。どこかのタイミングで記録員として同行してもらって念写をお願いしたいからだ。

Bチームのメンバーにはもう少し先に伝えるつもりだ。

秘密を知る者が多すぎるのも良くないし、まだ彼らのレベルでは上層階への挑戦は無理だろうから。



「ルーシェルさんの魔素浴もここでケルベロスと遊びながらできますね」


「そうだな。いっそのこと西新宿ギルドのオフィスを移動させちゃうってのもありだよなぁ。敷地内にプレハブでもなんでもいいから建てちゃってさ」


「でも西新宿じゃなくなってしまいますね。私はアニメグッズが買えるので池袋でも嬉しいのですが」



西新宿にこだわる必要はあるのだろうか……と思いながらハチ公の背に乗るルーシェルを眺めた。



ギルドオフィスに戻ると真希が台車にダンボール箱を乗せていた。

いまから上層階で手に入れたアイテムの鑑定に出かけるらしい。



「今回は数が多いからひとりじゃ大変なの。勇人も手伝ってくれる?」


「ああ、いいよ。鑑定に立ち会ったことないから興味あるし」

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